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(相変わらずパワハラは撲滅しないけどな。)
瀬戸に望月との関係を問われ、久しぶりに昔のことを思い出したようだった。
そして、今日は社員旅行。1泊2日の温泉旅行だ。バスに乗り観光地を巡りながら有名な温泉地へ行くとあり、みんなはしゃいでいる。
「佐々木さん、隣いいですか?」
「ん?いいよ。」
バスの席で隣に座ったのは、前髪を下ろしたワンコ倍増な瀬戸。
モテるのに、わざわざ律儀に俺の隣に来なくても、と思う佐々木。同じく、前髪を下ろしたら更にオモテになるであろう望月は、相変わらず女子社員にきゃぁきゃぁ言われていた。
(望月さんは誰と乗ったんだろう……)
動き出すバスの中で、望月はどこに座ったのかとキョロキョロする佐々木。
(あ、あの人……)
望月の隣には案の定、女子社員が座っており、笑顔で話す2人にヤキモキしてしまう。それもそのはず、隣に座っていたのは社内でも指折りの美人、森山と言う女性だ。
(でもまぁ……お似合い。)
ボーッとそんなことを思った。あの笑顔や優しさは自分だけに向けられているものでは無いと、改めて痛感する。
「さーさーきーさん!聞いてますか?」
何を話しても無反応で、全然瀬戸の話を聞いていなかった佐々木。
「え、ごめん、なんだっけ?」
「も~っ!」
プンスカと怒る瀬戸が可愛くて、思わず笑ってしまった。
高速道路のサービスエリアでトイレ休憩中。佐々木は瀬戸に悪い事をしたと思い、飲み物を買って行くことにした。瀬戸の大好きなあま~い飲み物を。
「ほら、これどうぞ。」
「え?ありがとうございます。あっ!俺の好きやなやつだ!やったー!」
自分の席に戻り瀬戸に飲み物を渡す佐々木は、自分が好きな飲み物でテンションがあがる瀬戸が微笑ましく、笑顔で見つめていた。
(前、俺がコレ好きだって言ってたの覚えててくれたんだ!)
瀬戸は、飲み物ひとつでこんなに嬉しくなるなんてと思い、佐々木のさり気ない優しさに更に好きになってしまう。
「佐々木さん大好き!」
「あはは、ありがとう。」
腕に抱きつきながらサラッと『好き』と言ってみたものの、軽くあしらわれた瀬戸。
(今のは伝わってないな……)
そんな微笑ましいやり取りをする様子を、遠くから見ている望月の表情にはいつもの笑顔はなく。
「望月係長、車酔いですか?」
「え?いや、違う違う。」
森山に車酔いと勘違いされていた。
旅館へついた一行。チェックインを済ませると自由行動となる。旅館の近くには観光名所やカフェなどがあり、旅館の外に遊びに出るもの、旅館のお風呂を楽しむものなどにわかれた。
(せっかくだし、望月さんと一緒にまわりたいな。)
でも、自分からは誘えないでいる佐々木。お似合いの2人を見てしまったから、邪魔をしてはいけないと余計に考えてしまう。誘うか誘わないかどうしようかと1人悩む佐々木に、望月が駆け寄る。
「佐々木は誰かと見てまわる約束してるか?」
「えっ、と……してません。」
邪魔をしてはダメだと思いつつも、でもやっぱり望月といたい。佐々木は一緒にまわりたい旨伝えると、それなら良かったと、望月は嬉しそうにニコッと笑った。
「早く行きましょう!」
嬉しくて、いつになく子供のようにはしゃぐ佐々木は、さりげなく望月の手を握った。
(手、握ってしまったっ!おっきいし、あったかいし……)
ドキドキしてしまうと内心悶える佐々木だが、必死にいつも通りを装う。手を振りほどくことはせず、優しく佐々木を見つめる望月。
「そんなに慌てなくても大丈夫だって。」
佐々木はそうですよね!と、慌ててパッと手を離した。
瀬戸は佐々木を誘うつもりでいたが、同期に捕まっていた。
(佐々木さんいないっっ!)
ソワソワする瀬戸に、葉山が声をかける。
「あれ~望月係長と佐々木さん、もういないねー。一緒に外見て回りたいよね、探しに行こうよ。」
事情を知ってるのか知らないのか、外へ誘ってくれた。
(葉山ちゃんナイス~!)
川沿いを歩いて滝を見に行ったり、小さな神社をお参りしたり、土産店でお土産をみたり楽しむ佐々木と望月。
「あ!甘味処だって。佐々木甘いの好きじゃん。よってく?」
「コーヒーに砂糖入れたからって甘党じゃないって言ってるじゃないですか。まぁ……食べますけど。」
スタスタと1人で先に行ってしまう佐々木に、やっぱり好きじゃん!と笑いながら言う望月。2人で甘いものを堪能しようと思ったら……
「「いた!」」
瀬戸と葉山に遭遇した。
「俺も甘いの大好きです!」
「ご一緒にいいですか?」
にこやかに混ざってきた空気を読まない若者2人。結局4人で楽しむことに。
佐々木と瀬戸はいちごパフェ、葉山はあんみつ、望月はコーヒーを注文した。
「はい、望月さん。」
「ん。」
スプーンにいちごとアイスをのせ、隣に座る望月にあーんと、食べさせる佐々木。当然の如く食べる望月。あまりに自然な流れに、一瞬止まる若者2人。
「……佐々木さん、俺もあーん。」
「いや、瀬戸は同じやつでしょ。あ、ほら、ほっぺにクリームついてるよ。」
え?どこ?と言っている瀬戸に、正面に座る佐々木はわざわざ腰を上げ、笑いながらクリームを指で掬ってとってあげた。一連の流れをみて、お母さんみたいだと内心思う葉山。
「佐々木……俺もほっぺ。」
「いや、何もついてないですよ。」
付いてるからとってと言う望月に冷静に突っ込む姿をみて葉山が呟く。
「なんか……佐々木さんって、私達には気を使ってくれますけど、望月係長といると素になりますよね。」
改めて指摘されると、そうかもしれない。ドキドキしてしまうのに、一緒に過ごしていると、いつの間にか落ち着いて安心してしまう。自然体でいられるのだ。
瀬戸に望月との関係を問われ、久しぶりに昔のことを思い出したようだった。
そして、今日は社員旅行。1泊2日の温泉旅行だ。バスに乗り観光地を巡りながら有名な温泉地へ行くとあり、みんなはしゃいでいる。
「佐々木さん、隣いいですか?」
「ん?いいよ。」
バスの席で隣に座ったのは、前髪を下ろしたワンコ倍増な瀬戸。
モテるのに、わざわざ律儀に俺の隣に来なくても、と思う佐々木。同じく、前髪を下ろしたら更にオモテになるであろう望月は、相変わらず女子社員にきゃぁきゃぁ言われていた。
(望月さんは誰と乗ったんだろう……)
動き出すバスの中で、望月はどこに座ったのかとキョロキョロする佐々木。
(あ、あの人……)
望月の隣には案の定、女子社員が座っており、笑顔で話す2人にヤキモキしてしまう。それもそのはず、隣に座っていたのは社内でも指折りの美人、森山と言う女性だ。
(でもまぁ……お似合い。)
ボーッとそんなことを思った。あの笑顔や優しさは自分だけに向けられているものでは無いと、改めて痛感する。
「さーさーきーさん!聞いてますか?」
何を話しても無反応で、全然瀬戸の話を聞いていなかった佐々木。
「え、ごめん、なんだっけ?」
「も~っ!」
プンスカと怒る瀬戸が可愛くて、思わず笑ってしまった。
高速道路のサービスエリアでトイレ休憩中。佐々木は瀬戸に悪い事をしたと思い、飲み物を買って行くことにした。瀬戸の大好きなあま~い飲み物を。
「ほら、これどうぞ。」
「え?ありがとうございます。あっ!俺の好きやなやつだ!やったー!」
自分の席に戻り瀬戸に飲み物を渡す佐々木は、自分が好きな飲み物でテンションがあがる瀬戸が微笑ましく、笑顔で見つめていた。
(前、俺がコレ好きだって言ってたの覚えててくれたんだ!)
瀬戸は、飲み物ひとつでこんなに嬉しくなるなんてと思い、佐々木のさり気ない優しさに更に好きになってしまう。
「佐々木さん大好き!」
「あはは、ありがとう。」
腕に抱きつきながらサラッと『好き』と言ってみたものの、軽くあしらわれた瀬戸。
(今のは伝わってないな……)
そんな微笑ましいやり取りをする様子を、遠くから見ている望月の表情にはいつもの笑顔はなく。
「望月係長、車酔いですか?」
「え?いや、違う違う。」
森山に車酔いと勘違いされていた。
旅館へついた一行。チェックインを済ませると自由行動となる。旅館の近くには観光名所やカフェなどがあり、旅館の外に遊びに出るもの、旅館のお風呂を楽しむものなどにわかれた。
(せっかくだし、望月さんと一緒にまわりたいな。)
でも、自分からは誘えないでいる佐々木。お似合いの2人を見てしまったから、邪魔をしてはいけないと余計に考えてしまう。誘うか誘わないかどうしようかと1人悩む佐々木に、望月が駆け寄る。
「佐々木は誰かと見てまわる約束してるか?」
「えっ、と……してません。」
邪魔をしてはダメだと思いつつも、でもやっぱり望月といたい。佐々木は一緒にまわりたい旨伝えると、それなら良かったと、望月は嬉しそうにニコッと笑った。
「早く行きましょう!」
嬉しくて、いつになく子供のようにはしゃぐ佐々木は、さりげなく望月の手を握った。
(手、握ってしまったっ!おっきいし、あったかいし……)
ドキドキしてしまうと内心悶える佐々木だが、必死にいつも通りを装う。手を振りほどくことはせず、優しく佐々木を見つめる望月。
「そんなに慌てなくても大丈夫だって。」
佐々木はそうですよね!と、慌ててパッと手を離した。
瀬戸は佐々木を誘うつもりでいたが、同期に捕まっていた。
(佐々木さんいないっっ!)
ソワソワする瀬戸に、葉山が声をかける。
「あれ~望月係長と佐々木さん、もういないねー。一緒に外見て回りたいよね、探しに行こうよ。」
事情を知ってるのか知らないのか、外へ誘ってくれた。
(葉山ちゃんナイス~!)
川沿いを歩いて滝を見に行ったり、小さな神社をお参りしたり、土産店でお土産をみたり楽しむ佐々木と望月。
「あ!甘味処だって。佐々木甘いの好きじゃん。よってく?」
「コーヒーに砂糖入れたからって甘党じゃないって言ってるじゃないですか。まぁ……食べますけど。」
スタスタと1人で先に行ってしまう佐々木に、やっぱり好きじゃん!と笑いながら言う望月。2人で甘いものを堪能しようと思ったら……
「「いた!」」
瀬戸と葉山に遭遇した。
「俺も甘いの大好きです!」
「ご一緒にいいですか?」
にこやかに混ざってきた空気を読まない若者2人。結局4人で楽しむことに。
佐々木と瀬戸はいちごパフェ、葉山はあんみつ、望月はコーヒーを注文した。
「はい、望月さん。」
「ん。」
スプーンにいちごとアイスをのせ、隣に座る望月にあーんと、食べさせる佐々木。当然の如く食べる望月。あまりに自然な流れに、一瞬止まる若者2人。
「……佐々木さん、俺もあーん。」
「いや、瀬戸は同じやつでしょ。あ、ほら、ほっぺにクリームついてるよ。」
え?どこ?と言っている瀬戸に、正面に座る佐々木はわざわざ腰を上げ、笑いながらクリームを指で掬ってとってあげた。一連の流れをみて、お母さんみたいだと内心思う葉山。
「佐々木……俺もほっぺ。」
「いや、何もついてないですよ。」
付いてるからとってと言う望月に冷静に突っ込む姿をみて葉山が呟く。
「なんか……佐々木さんって、私達には気を使ってくれますけど、望月係長といると素になりますよね。」
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