トライアングル△ オフィスラブ

sora

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「くぅ~染みる~!」

ガヤガヤと騒がしい店内。よく行く会社の近くの居酒屋だ。
ドンっ!とビールをおく望月の顔は、スッキリしているようだった。明日は休みだもんなと思いながら、佐々木もにこやかになる。
「お疲れ様です。」
「佐々木もな!」
適当に食べ物を頼み、食べながら談笑する2人。今まで一人残業していたのに、誰のせいだとか、やりたくないとか文句を言わずニコニコしている。望月を見ていると、こちらまで幸せな気分になる。佐々木も自分自身そうありたいと思った。
「そういえば……今日、応接室で加藤課長と何話してたんですか?」
少し酔いが回ってきたからか、シラフでは聞けないようなことを聞いた。
「ん?あ~……まぁ、ざっくり。パワハラやめてくれって話。」
「えっ。」
肩書きや勤務年数とかもあるし、下っぱから言われるよりはと思い、上から言ってくれと頼んでいたらしい。だけどなかなか言って貰えず、今回はさすがに我慢できないで自分から言ってしまったとのことだった。生意気だよなぁなんて笑いながら言っていた。
「本当はもっと早く言えればよかったんだけど……ごめんな?」
今まで誰一人加藤に言えなかったことを望月は言ってくれたのである。しかし、パワハラをされているのは佐々木だけで、自分のせいで今まで残業していたのかと、一気に顔面蒼白となった。
(俺のせいで……なんでこの人は俺に文句1つ言わないんだ?)
佐々木が自分を責めていることを悟った望月は、佐々木の為だけじゃないと言う。
「いや、ほらパワハラってさ、百害あって一利なし、だろ。職場の雰囲気も悪くなるし、事務効率が下がると思うんだよね。パフォーマンスあげるには雰囲気も大事だと思うんだ。」
だからやめてって言ったんだと、ニカッと安心する笑顔で言われ、胸がキュンとする佐々木。自分一人で背負い込むなと言われたみたいで嬉しくなった。

「でもさ、加藤さんって取引先の社長の息子なんだよ?なんでウチなんかで働いてんだろうなぁ……」
「そうなんですか?知らなかった。」
だから上も注意出来なかったのかと納得した。
「2世って仕事出来なかったり性格悪かったり、ろくなやついないよな。」
ははっと笑う望月に佐々木は反論した。
「2世だからとか関係ないと思います。確かにそうゆう人多いかもしれないですけど……性格いい人も仕事ができる人もいると思います。でももし自分の親が偉かったら相当なプレッシャーなんじゃないですかね。」
だから色眼鏡で人を判断したくないと意見する姿を見て、芯があるやつなんだと感じる望月。
「先入観なしでその人と向き合いたい?」
「そうですね、向き合った上で自分で判断したいです。」
でも加藤は無理だと苦笑いする佐々木に、だよな、と望月も苦笑いした。
「佐々木はさ、頑張ってるよ。今のままで大丈夫。俺だけじゃなくて、俺の上も、まわりも、みんなお前のこと評価してるよ。俺だけじゃない。みんな見てるから安心しな。」
嘘でもなんでも嬉しい。望月の言葉にはどこか説得力があるから。
「俺は逃げません。会社も辞める気はないです。俺が辞めたら、俺みたいに他の誰かが標的になるだろうし、他の人にこんな思いして欲しくない。」
意外と気が強いのかな、なんて思う望月だが、でも辛いですと言う佐々木に、強さと弱さを見た。望月は佐々木の横に移動し、佐々木の肩を抱き寄せた。
「辛いなら逃げてもいいんだよ。」
抱き寄せた手でポンポンと頭を撫でると、佐々木はくすぐったそうにふふっと笑った。これ好きですと上目遣いで言われ、一瞬止まる望月。
(え、今俺佐々木のこと可愛いとか思った?いや、可愛いとは前から思ってたけど……いつもと違くて……)
こんなことみんなにするんですか?とジト目で言われ、望月はパッと佐々木から離れる。
「しないよ。女の子にしたら勘違いさせちゃうからね。」
男にはもちろんしないしと、慌てて否定する望月。
男のお前なら俺に惚れないだろ?
俺がお前のこと好きになるわけないだろ?
そう言われているようで、改めて自分は恋愛対象外だと理解する。
(俺だって勘違いしちゃうよ……)
「でも、佐々木は特別。甘やかしたいって思っちゃうんだよな。」
キュンとしながらも、そう言うところだよ、と思う佐々木。

「ラストオーダーお願いしまーす。」
「あ、もうこんな時間だ……」
「え?もうラスト?」
「帰りますか。」
時間が経つのは早いねぇなんて言いながら荷物をまとめていると、飲み足りないから別の店へ行くと言う望月。
「あ、」
俺も行きたいですと言う言葉を飲み込む佐々木。もっと一緒にいたいが、望月は違うかもしれない。1人で飲みたいのかもしれないし、他の誰かに会うのかもしれない。
しかし望月は察したのか、行く?と声をかけてくれた。
「是非行きたいですっ!」
即答する佐々木だが、内心この人は読心術でも使えるのではと思ってしまった。

そして、連れてこられたのはオシャレなバー。
(マジか……こんな所来たことない……)
場違いな所へ来てしまったと入口で固まる佐々木とは反対に、躊躇なくカウンターへ座り、マスターらしき人と会話をする望月。
(慣れすぎ。)
手招きをされ、そそくさと望月の隣に座る。
「今日はまた随分かわいいおツレ様ですね。」
「俺のオキニですから!」
な?と肩をバシバシはたかれる。
「あの、いつもこんなオシャレなところへ?」
「若い時から通ってる。酒が美味いんだよね。」
(こんな所女性口説く以外に使うやついるか!!)
心の中で突っ込み、少しモヤモヤしてしまう佐々木。
「佐々木は何がいい?」
「…………メニューみてもさっぱりなんですが。」
慣れてないんだなと笑う望月。
「じゃぁいつものと、このかわいいツレにはオススメお願い。」
(全てがスマートすぎる。モテないはずがない。)
以前聞いた時には彼女はいないと言っていたが、実はいるのではないかと疑う佐々木。
(はっ!きっと取っかえ引っ変えだから、たまたま彼女いますか?の質問のときにいないって回答なのかも!そうだ、そうに違いない!!)
一人モヤモヤと考えていたら、お酒がきた。1口飲むと……
「あ、美味しい……」
飲んでみるとそれはそれはおいしく、さっきまで曇っていた佐々木の顔がパァっと晴れる。そんな姿を、連れてきてよかったと、肘をつきながら微笑み見ている望月。

「佐々木、酔ってる?」
「だいじょぉぶれすよぉ。おれ、ふくすましゅっしんですからぁ。」
福島出身だからなんだ?と思いつつも呂律が回っていない、ふわふわしてる佐々木を心配そうにみる望月。後でわかったことなのだが、福島県は全国新酒鑑評会で金賞受賞蔵数日本一9連覇とかなりの酒処だった。だからといって酒が強い理由にはならないが。
「かじゅやしゃん……」
不意に名前を呼ばれ驚く望月。こてんっと肩によりかかる佐々木に、珍しく動揺している。
「さ、悟……」
「ふふ……なぁに?」
顔が近く、破壊力抜群の佐々木の笑顔に、望月の中で何かが爆発しそうになった。
「かじゅやしゃん……おれ、つらい。ぎゅぅってしてくらはい。」
頭を肩にスリスリとし、甘えてくる佐々木だが、そのまま動かなくなり寝てしまったようだ。
「……悟?寝ちゃったか。マスターお会計お願い。」

起こしても起きない佐々木を担ぎながら帰路へ着いた望月。
「起きろ~食っちまうぞ~。」
冗談を言っても健やかにスヤスヤ眠る佐々木。
「鍵どこだよ!」
佐々木の家の前でガサゴソとカバンを漁っても出てこない鍵。望月は仕方なく自分の家へ連れていくことにした。
「おっも……」
真っ先に寝室へ行くと、佐々木をベッドへ転がした。苦しくないように、ワイシャツの胸元のボタンをはずす。
(俺、ドキドキしてる?飲みすぎたか?)
自分のベッドで眠る佐々木をみてか、お酒を飲んだからか、ムラムラを落ち着かせるため、部下だ男だと言い聞かせ、望月はシャワーへと向かった。

シャーとシャワーの音が響く浴室では、望月の呻き声が聞こえる。頭からシャワーを浴び、自慰をしているようだ。結局ムラムラを抑えきれず、したくなったのだ。
(なんだっ、これ……)
頭には佐々木ばかりがでてくる。あっという間に出た白濁は、直ぐにシャワーの水に流れていった。

次の日起きると、ソファで眠る望月に土下座して謝った佐々木。記憶が全くないらしい。次からは飲ませすぎないように注意しようと苦笑いの望月。
佐々木は、貴重な望月宅を堪能することなく、慌てて帰っていった。
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