トライアングル△ オフィスラブ

sora

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泣いているところを見られてしまってから、望月と佐々木が会社内で会うことはなかった。あの日の出来事は夢だったのでは無いかと思ってしまう程、連絡も全くこない。
(俺が連絡先教えるの間違ったんだ、きっと……)
でも、もしかしたら今日こそは連絡が来るかもしれないと、携帯を握りしめベッドに入り横になる。きっと買い物なんて冗談で、真に受けた自分が恥ずかしい。あの時の状況から考えるに、場を和ますために言っただけなんだろう。それもそうだ。課も違う、話したことなんてあの1度きりなのだから。
なのになぜ、こんなにドキドキしながら連絡を待ってしまうのか。
(望月さん……)
目を閉じ寝ようとするが、お腹の当たりがムズムズして寝られない。最近ずっとこうだ。望月のことを想えば想う程……
佐々木は携帯で写真をひらくと同時に、ズボンとパンツを脱いだ。自分のモノに手を触れると、既に少し反応している。写真をみながら、手をゆっくりと上下に動かしはじめる。その写真には、ビシッとスーツを着て微笑む望月が写っていた。会社の広報に載っていたのを、たまたま見つけたのだ。
(望月さん……望月さん……かっこいい……)
ハァハァと息が荒くなると同時に、手の動きも段々と早くなる。あのとき抱きしめられた感触が蘇ってくるようだ。優しく背中を撫でる温かい手。耳元で囁かれる低く落ち着いた声。

『佐々木くん……』

「んぅっ、あ、望月さんっ!」
好きなのかはわからない。けど、あの人に触れたい、触れられたいと思ってしまっている自分がいる。佐々木は1人、快感に落ちていく……

シてしまった後は、また望月をオカズにしてしまったと自己嫌悪に陥る。いそいそ片付けていると携帯メッセージの着信音がなった。誰だろうと携帯を覗き込むと、そこには『望月』の文字が。
「え?」
携帯に飛びつき急いでメッセージを確認する。思わずにやける佐々木。携帯には買い物の件で連絡がきており、日付や集合場所などが記されていた。あの日の出来事は夢ではなかっと嬉しくなる。そして、律儀に約束を守る望月に、心臓が早くなり始めた。

その日以降、よくよく考えたら何も知らないと、望月についてリサーチをした佐々木。加藤とは全くの正反対で、いい話しか出てこない。成績も優秀で、毎期表彰を受けているスーパーサラリーマンだと知った。
(そんな人と買い物……なんで俺なんかと……)
自分とは天と地ほど差があると思いつつも、あの望月ともう一度会えると思うだけでワクワクしてしまう。約束の日まではあっという間だった。

約束の日の当日。
待ち合わせ場所に集合時間よりも早くついた佐々木。
(同じ会社とはいえ、よく知らない人と買い物って……会話続くかな……ノコノコ来てとか思われるのかな……)
来てみたものの少し不安になりはじめ、無意識に胸をギュッと掴んでしまう。しかしそんな心配は杞憂に終わる。

「わっ!」
「わぁっ!」

急に大きな声をかけられ驚いた佐々木だが、声の主は望月だった。会社にいる時とは違う髪型、オシャレな格好。そして子供っぽく笑う望月に思わずドキッとしてしまった。驚かされたからなのかはわからないが。
「おつかれ!早いね、まだ集合時間前ですけど?」
「ちょっと!ビックリしたじゃないですかっ!」
驚かされたと思ったら、そのままいわゆる壁ドンをされ、身長差からか、佐々木は上目遣いで望月を睨むかたちとなった。そんな佐々木を見て、ごめんごめんと、軽く笑いながら謝る望月。完全にからかわれている。
「佐々木ってイタズラしたくなるんだよなぁ。よく言われない?」
「言われません!」
「あ、そう?ま、いいや。今日は、服見に行くの付き合ってくれる?」
(ま、いいやってコノヤロウ……)
想像していた望月像とはかなりかけ離れた望月にペースが崩される。もっと大人な男性だと思っていたのに……。

2人はまず、服を買いたいという望月の希望から、洋服店にはいり服をみることに。
「これどう?」
「かっこいいと思います。」
「色は?」
「うーん、こっちの方が似合うと思いますけど……」
ハンガーにかかった服を胸の前に持っていき、どれが似合うか見ている2人。これが1番似合うと言われた服を胸の前に持っていき、鏡を見る望月。俺もそう思ったと、ニッコリ笑う。
「佐々木は……こっちの色が似合うよ!」
「え、同じやつですか?」
色違いの服を渡され合わせてみなよと言われたが、流石に望月と同じやつは着れないと商品を棚に戻す。
「戻しちゃうの?ペアルックいいじゃん。」
「いやいやいや……」
(カップルじゃあるまいし……)
なんてことない、ただの買い物。望月があまりにフランクなので、佐々木も当初の緊張はどこへやら。望月から買い物に付き合ってと言われた通り、色んなお店を見てまわった。

しばらく買い物を楽しんだ2人。佐々木が、歩きっぱなしで疲れたなぁと思っていたところに、望月から休憩しようと提案された。ベストなタイミングに驚きつつも、近くのカフェに入ることになった。
「俺、ホットコーヒー。」
「じゃぁ俺も同じのを……」
カウンターで注文し、受け取り待ちをする2人。その際、望月にブラック?と聞かれ、ミルクと砂糖を入れたい旨伝えると軽く笑われた。ムッとする佐々木に「ごめんごめん、可愛いなぁと思って。」と、サラッと言う望月に、一瞬思考が停止した。
(いやいやいや、思ってもないくせにっ。どうせガキって思ってんだろうな……)
カフェでは仕事の悩みでも聞かれるのかと思っていたが、仕事の話なんて1ミリもでなかった。話題が豊富な望月と話していると、単純に楽しく、素の自分でいられることに気がつく。
「今日は付き合ってくれてありがとな。」
(あれ?そう言えば、今日ってお詫びも兼ねてだったよな……あれ、何もしてないぞ俺!普通に買い物楽しんだだけだ!さっきのコーヒーの会計だってサラッと望月さん持ちだったよな!?うわ、やべっ!)
本来の目的を思い出し、アワアワする佐々木。
「あ~楽しかった!名残惜しいけど、初デートはまだ遊びたいところで帰れって言うもんな。帰るか~」
冗談を言うも、焦っている佐々木には届かず。
「あの、望月さん俺、今日はお詫びしなきゃだったのに……」
何もしてないと、下を向く佐々木。お詫びってなんだっけ?と、忘れている様子の望月に、スーツを汚してしまったことを伝える。
「え、結構前のことだけど、ずっと気にしてくれてたの?」
俺も忙しくて、中々連絡取れなくてごめんと言われ、少しホッとする佐々木。
「佐々木は今日、楽しかった?」
「……はい。楽しかったです。」
またどこかへ遊びに行きたいと思ったが、会社の直属の上司でもなく、1回出かけただけの仲。言えるわけがなかった。
「良かった。じゃぁ今度はお詫びとか気にしないで遊びに行こうな!」
もう会えないと思っていたが、望月からの思ってもいなかった提案に、佐々木は嬉しくなった。

帰り道、どこまでも着いてくる望月。流石に解散でいいと思った佐々木は、家まで送ってくれなくても大丈夫だと伝えた。
(てか、なんで俺の家の方向わかるんだこの人……)
凄いとかそう言う問題ではなく、単純に怖い。
「え?あれ?俺ん家もこっちだけど。」
と、着いたのは佐々木の住んでいる独身寮。会社で管理しているアパートを独身寮として住んでいるわけだが、独身寮はここだけではない。まさか、同じ独身寮とは。
「望月さん独身だったんですね。」
「そうだよ、見えない?」
佐々木は、こんな素敵な人も独身なのかと思うと同時に、少しホッとした。
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