化け物バックパッカー

オロボ46

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化け物バックパッカーと変異体ハンター、それと化け物ぬいぐるみ店の店主に化け物運び屋、あと商人、それぞれ初詣に行く。【5】

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「ええっ、立ち入り禁止なの!?」

 神社の鳥居に建てられた看板を見て、女性はそのショックを声で表した。



「おおみそかの日に火事が起きて神社が半壊……これじゃあ、入れないのも無理はないか」
 女性の隣には、冷静に看板を読む青年の姿があった。茶色いコートを身に包み、ズボンはジーズンに、ポニーテールの髪形。その背中には青いバックパックが背負われている。
「そんなあ……せっかくお兄ちゃんと一緒に隣町から初詣に来たのに……」
 うなだれるこの女性、青年と同じ茶色いコートとチノパンという服装に、三つ編が1本だけというおさげのヘアスタイルをしている。
「仕方ないよ、“真理まり”。とりあえず、お昼を食べに行こう」

 真理と呼ばれた女性はうなずくと、お兄ちゃんと呼んだ青年とともに歩き始めた。



「ん、ちょっと待ってストップ」

 街中の歩道を歩く中で、兄は足を止めた
 その横にある掲示板に貼られているチラシ。そのひとつに、兄は目を向けていた。
「へえ……この辺りにある教会でも初詣ができるんだ」
 横から真理もチラシに写る教会を見ると、「よく見てよ」とチラシの文字を指差す。
「初詣ってどこにも書いていないわ。これはお正月の礼拝を行うって意味よ」
「そうか。せっかくだから、見に行ってみる?」

 兄が真理の顔を見て尋ねると、真理は首をひねり、もう一度チラシに目を向けた。



「でも、お正月に教会に行くのって不思議な気分ね」

 門をくくり、目の前で教会を見上げて、真理はつぶやいた。
「今までずっと神社でお参りしていたからね……いや、よく考えたら、僕たちは教会に来るのは初めてだった」
 兄は頭をかくと、背中のバックパックが一瞬だけ揺れる。



 祭壇が置かれた部屋の席に、ふたりは座っていた。

 祭壇の前にはまだ神父は現れてはいない。

 兄は辺りを見渡したのち、真理の顔を見る。



「そういえば、僕たちのお父さんが言っていたよね。この星は地球に似せて開発されたって」

「その開発に1番最初に手を出したのが、日本っていう場所の会社だったんでしょ? それがどうしたの?」

「そのあと他の国の会社が開発に着手し始めたから、地球のさまざまな地域を再現できた。それでも日本の景色が比較的多いんだよね。真理が教会の初詣が珍しいって言っていたのも、それが理由かなんじゃない?」

「……別に理由はなんでもいいわ。ここで初詣をするって、決めたから」



 その時、ちょうど神父が祭壇の前で立ち始めたころだった。
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