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化け物バックパッカーと変異体ハンター、それと化け物ぬいぐるみ店の店主に化け物運び屋、あと商人、それぞれ初詣に行く。【2】
しおりを挟む太陽が最初に目を向けたのは、大きな神社だ。
階段の先にある神社。その階段の麓では、さまざまな屋台が置かれている。
その側にある駐車場に、バイクを止める高校性ぐらいと思われる少年の姿があった。
「屋台カア……」
その少年の腰から、奇妙な声が聞こえてきた。
「ん? 屋台行きてえのか?」
フルフェイスのヘルメットを外しながら、少年はズボンのポケットに話しかける。
この少年、オオカミの頭蓋骨が描かれた白色のTシャツの上に学ラン、一見すると不良学生に見える。しかし、その学ランにはボタンが付いておらず、校門らしきものはどこにもなかった。ズボンは動きやすいバイク用パンツ。その太ももには、レッグバッグが付けられている。
「ウウン。タダ、実家ノコトヲ思イ出シタダケ」
そのズボンのポケットには、よく見ると何かが入っている。声を出していることやモゾモゾと動いていることから、何かの小動物なのだろうか。
「実家って……ああ、確かあんたの家って、お寺だったよな」
「寺ジャナクテ、神社ヨ。ソレニシテモ、小サイコロカラ思ッテイタケド……」
ポケットの中から、声の主が顔を出した。
ティッシュに包まれた姿は、てるてるぼうずのようだ。頭にはキツネのような耳の形が見られ、顔にはのぞき穴と思われるふたつの穴が空いている。
「夏ナラ分カルケド、ドウシテ正月ニスルノカシラ?」
顔を見上げるキツネの生き物に、少年は立ち並ぶ屋台に目を向ける。
「なんかよくわかんねえけどよお、俺は好きだったよなあ」
「来タコトアルノ?」
「ああ、よくオヤジに連れられてよお、何書いているかよくわかんねえおみくじなんかより、お面とかのほうがよかったんだよなあ」
その時、少年のバイクの荷台に乗せてあるリアバッグから、爪を引っかく音が聞こえてきた。
「ん? ちょっと待っててくれよ」
少年はリアバッグのふたを開けると、1冊の本を取り出した。
その本は新聞紙に包まれているが、片方の面には8つの穴が空いていた。まるで、クモの足が生えていたような位置に。
「あんた、屋台に興味があるのか?」
少年はその本に語りかけると、本はそれに応えるように針のような足を、穴から1本だけを、一瞬だけ出し入れした。
「やっぱりそうだよな! よし! お面を買って帰るか!」
「コラ! チャントオ参リシテカラヨ! アト依頼主ニ届ケルモノガアッタデショ!?」
本を脇に挟んだ少年は、神社へと続く階段を見つめた。
「こういう神社に続く階段ってよお、意外ときついんだよなあ」
「ソレガイイノヨ。ワザワザ神様ニ会イニ行クンダカラ。ソレニ、上ッテイル内ニ願イ事ヲ考エルコトガ出来ルデショ?」
「願い事かあ……」
少年はしばらく考えるように空を見上げていたが、「ここで突っ立ってても意味はないよな」とつぶやき、階段の一段目に足を乗せた。
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