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神と少女と魔術師と
燃えて萌えて華開くep6
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家から出て裏手に回ると倉庫というか蔵と言えるものがあった。大きくはなく、家の陰にあることもあり正面からは見えない大きさであった。
それでも歴史を感じられる佇まいをしており、この家やこの土地に付いての華上家が持つ記憶が収まっていることを感じられる。
扉は鉄で出来ており、3メートルくらいある。小さな鍵でこの大きな扉が開くというのは不思議に感じてしまう。小さな力で大きなものを動かす。当たり前のように行っていることでも不思議というものは感じるのだ。
「開けるわよ」
ガチャガチャと鍵を鍵穴に入れる。古い扉と言うこともあり、スムーズにはいかず鍵穴に苦戦していたがうまく噛み合ったのか鍵の開く音がする。重そうな扉であり、開けた時何があるかわからないため僕が代わりに扉を開けることになった。
扉を開けると当然のように中は暗く、陽の光も入り込んでは来ない。それに古い場所独特の黴臭さが鼻をくすぐる。不快というほどではないが埃などもあるため、口をハンカチか何かで押さえていたほうがいいだろう。
「暗いわね。ちょっと懐中電灯取ってくる」
舞さんはそう言って家の方まで走って行ってしまった。家のものが居ない時に入るのはどうかと思ったが、倉庫の入り口に気になるものを見つけてしまったため中に入る。奥の方は暗くて見えないが、入り口の方は昼間ということもあり辛うじて見えた。
「これは、看板かな?」
そこにあったのは鉄製の看板のようなもの。ただの板のように見えるが縁には装飾がされており、何かに使われていたことが分かる。裏側が此方を向いていたため表側を此方に向ける。想像よりもかなり重く、一人でやるのは重労働だった。
裏返した看板に書かれていた文字は「花守神社」。
「これ神額だったのか」
建物の入り口や門の高いところに付ける看板を扁額という。神社やお寺の場合はそれぞれ神額、寺額とも呼ばれる。神社の場合はその名を表す表札のようなものだ。
花守神社の物がここにあるということは誰かが取り外してここに置いたということだ。倉庫の中をみるに物を押し込むだけで整理などはされておらず、この神額もいつの間にかは分からなかった。ただ、花守神社という神社が何処かに存在していた証拠にはなる。
「懐中電灯持ってきたわよ。あとこれ」
舞さんは家から2本の懐中電を持って倉庫に戻ってきた。先ほどまでつけていなかったマスクもつけている。僕にも使い捨てのマスクを1つ渡してくれた。埃っぽいところの作業を片手で口を押さえた状態でやるのは厳しいため大変助かる。
「これ見てよ」
「なにこれ」
「神社の鳥居とかに置かれる看板。神額っていうんだけどここの文字」
「えっと、花守神社って書いてあるわね。どうしてここに?」
「いや、それはわからないって」
華上家の敷地内から出てきたものを僕が知る由もない。
「じゃあやっぱりあの神社は花守神社ってこと?」
「それも含めてちゃんと調べようか」
僕たちは2人で倉庫を漁る。手分けして探すこともできたが、古い倉庫のため何が起こるかわからない。それに重要なものがあるかもしれない。破損やアクシデントに備えて2人で同じところを探すことにした。
置かれているものは基本的に調度品や骨董品が多く、古いタンスや何処かの焼き物が置かれていた。調べたい内容が載っている文献は入り口近くにはなかったため、奥の方へ進む。
入り口からの光が全く届かなくなったため、懐中電灯で奥を照らす。
一番奥に着くと、隅の方に少し大きめの箱を見つけた。箱には鍵がかかっているということもなく、無造作に置かれていたと言っても過言ではない。重要な資料を無造作に置くことなどしないため、本来なら重要視しないであろうその箱だが、箱には花守神社と書かれていた。
「舞さん」
「うん。多分アレっぽいわね」
「分かり易すぎるけど家で保管するものってあんな感じのやつ多いよね」
「あんな感じって?」
「衣替えの時とか冬物とか書いた紙を貼り付けて押し入れに入れるやつ」
「ちょっと分かるのが嫌だわ」
僕らは箱に近付く。やはり花守神社の文字が書かれている。その箱は木で出来ているため、少し膨張して開けにくくなっていたが力ずくで開けることにした。少しメキメキ音がなっていたが仕方のないことだろう。何かあったら謝ればいいのだ。
箱の蓋を開けて中を確認すると、紙を紐でまとめただけの本が出てきた。本というよりはパンフレットだ。
豆知識だが本とパンフレットの違いはページ数と定期刊行されているかである。パンフレットはページ数が少なく定期刊行されていないものを指す。就職情報誌などの定期刊行されるものは本という扱いになるわけだ。
出てきたの書物はナンバリングがされているわけでもなく、無造作に数冊入れられていただけだった。
「ん?花守神社ってタイトルは分かるけど横に書いてある人の名前って舞さん祖先?」
「華上咲?おばあちゃんの名前だよこれ!」
「読んでみようか」
書物を慎重に取り出す。紙の材質によっては風化してしまいボロボロになる危険性がある。割としっかりした紙であったため、書物に害が及ぶことはなかった。
書物のページを捲る。花守神社という神社を代々守っていること、自分も祖先から守るように言われたこと、そして神様の声が聞こえることが最初の数ページから見て取れる。
「私と大体一緒ね」
最初の数ページに書かれていることは今の舞さんの状況とあまり変わらない。唯一変わる事は神様の声が聞こえるということだが、舞さんは夢の中で声を聞いただけらしい。これも神の力が弱まっている弊害だろうか。
「『神社の神額が落ちた。前触れもなく。何か災いがあってはまずいと思い家に保管することにする。落ちた物を再び付けることで神を穢れさせてしまう可能性を危惧した』って、入り口の神額か」
「この日付、お父さんが産まれる年だ」
神道における穢の1つとして出産がある。直接言うことはしないが、舞さんも月経のタイミングでは神社に行っていないはずだ。
この書物が書かれた時、神社に行けるのが咲さんだけだった場合、妊娠中ということもあり神社には誰も行けていないのだろう。なぜ神額が落ちたことに気付いたのかなど書かれてはいないため真実は分からない。
「『花守神社は縁結びのご利益がある。あそこに祭られているのは……であり、それを守ることが華上家との縁を結ぶときに繋がる。あの神社に命を絶やしてはならない。それが無くなった時、縁を切られるだろう』。祭られてる物が何かっていうところだけ文字が潰れていて全く読めないね」
「そこだけが不自然に潰れてる。なんか書いたらまずかったのかしら」
「いや、偶然って考えよう。そこは大事じゃない。それよりも命を絶やしてはならないってどういうことか分かる?」
「毎日行くってこと?私生きてるわけだし」
違うはずだ。穢の件から毎日行っている訳では無いし、病気などで行けない日もある。絶えた時に縁が切られると書かれているが、今はまだ華上家との縁が切られていないということになる。
「おばあさんがこれを書いている時はまだ縁結びの神様なんだね」
「逆の意味になったのはいつからなんだろう」
咲さんの時代ではまだ縁結びの神社である。この後何かが起こって縁切りの神様になるか、舞さんの時代になって変化するか。
「『息子の家に孫ができた。女の子であったため、私の後を継ぐのはこの子に成るだろう。私は足腰が悪くなり、毎日花守神社に行けていない』。おばあさん足腰悪かったの?」
「そういえばおじいちゃんと色々行った時に神社の管理があるって言って家に残ってたのってそういうことかも」
ページを進める。ページの枚数は残り数枚になり、終わりが近づいてきた。
「『孫が私に言ってきた。夢の中で誰かに、離れた君と縁を切り新たなる者に縁を結ぶと言われたらしい。孫は『はなきみ』と言ってはしゃいでいるが私にはひどく恐ろしく感じた。私の代であの神社との縁が切れることを考えてしまったのだ。私があの神社に行かないせいであの神社の命が絶たれていく。』」
「もしかして誰から聞いたわけじゃなくて私が勝手に作った言葉だった可能性ある?」
この本をみる限り、一言も離君神社という名前は出てこない。幼い頃に見た夢の話をずっと覚えていてそれを真実かのように信じ続けて今に至るのだ。
舞さんもその考えを否定しきれないようで分かりやすく落ち込んでいた。それに関してはちゃんとしたことを伝えなかった散さんにも問題があると思うが。
「『孫には毎日神社に行くように散に伝えてもらう。孫が神社から花を持ってきたのだ。社に毎日1輪ずつ置かれているらしい。それが本当に本当に怖かった。私の絶やした命を見せつけられるようだった。少しでも命を繋ぐために毎日家に飾るようにした。縁を切らせないように。命を絶やさないように。孫には、神様から縁切られるかもしれないから何かがない限り毎日行くようにと私からも伝えた』。これが最後のページだね」
「多分その縁切られるっていうのを小さかった私は神様が縁を切るっていうふうに解釈して縁切りの神様って勘違いしたんだと思う」
離君神社のことも縁切りの神様のことも全ては舞さんの勘違い、そしてそれに気付かなかった華上家の落ち度だ。神は信仰によって存在を守っている。名前の忘れられた神社が、自分の御利益を間違って解釈されたまま信仰をされたことで変質してしまった可能性がある。元々縁を結ぶ神であるため凶暴性は低いだろう。
「思い返せば誰かの口から離君神社のことも縁切りの事も聞いたことはなかったわね」
「僕は最初、花守神社が時代とともに訛ったり、伝聞のミスとかで離君神社に変わったものだと思ったんだけどね」
「私だって今の今まで自分の作り上げたものを真実だって思ってたなんて恥ずかしいやら後悔があるやらで、もう寝たい気分よ」
ご愁傷様である。
しかし今大切なのはそんなことではない。
「それよりも、今後どうするかを考えないと」
この場所には花守神社が何を祀っているかが分かる資料は今のところはない。他の資料を確認するまでは分からないが、現状出来ることは少ない。
あの神社へ信仰を集めることは現代ではほぼ不可能だろう。催しや祭りなどができないほど荒んでいる。
華上家との縁が舞さんと繋がっているこの状況を好機と捉え、あの神様を元の縁結びの神様に戻すことができれば華上家として助かるだろう。
忘れていたが、今回の依頼は舞さんの成長の手助け。花守神社の件を進めることで舞さんには一花咲いてもらうことにする。神守として、裏世界に関わるものとしての芽は出ている。
「そんなの決まってるじゃない。あの神社を縁結びの神社に戻してちゃんとした花守神社に戻すの。神額もつけてね。それが私の神守としての最初の大仕事よ!」
舞さんは胸に手を当てそう宣言した。
想いは燃えて、信念は萌えて、そして使命は華開く。
それでも歴史を感じられる佇まいをしており、この家やこの土地に付いての華上家が持つ記憶が収まっていることを感じられる。
扉は鉄で出来ており、3メートルくらいある。小さな鍵でこの大きな扉が開くというのは不思議に感じてしまう。小さな力で大きなものを動かす。当たり前のように行っていることでも不思議というものは感じるのだ。
「開けるわよ」
ガチャガチャと鍵を鍵穴に入れる。古い扉と言うこともあり、スムーズにはいかず鍵穴に苦戦していたがうまく噛み合ったのか鍵の開く音がする。重そうな扉であり、開けた時何があるかわからないため僕が代わりに扉を開けることになった。
扉を開けると当然のように中は暗く、陽の光も入り込んでは来ない。それに古い場所独特の黴臭さが鼻をくすぐる。不快というほどではないが埃などもあるため、口をハンカチか何かで押さえていたほうがいいだろう。
「暗いわね。ちょっと懐中電灯取ってくる」
舞さんはそう言って家の方まで走って行ってしまった。家のものが居ない時に入るのはどうかと思ったが、倉庫の入り口に気になるものを見つけてしまったため中に入る。奥の方は暗くて見えないが、入り口の方は昼間ということもあり辛うじて見えた。
「これは、看板かな?」
そこにあったのは鉄製の看板のようなもの。ただの板のように見えるが縁には装飾がされており、何かに使われていたことが分かる。裏側が此方を向いていたため表側を此方に向ける。想像よりもかなり重く、一人でやるのは重労働だった。
裏返した看板に書かれていた文字は「花守神社」。
「これ神額だったのか」
建物の入り口や門の高いところに付ける看板を扁額という。神社やお寺の場合はそれぞれ神額、寺額とも呼ばれる。神社の場合はその名を表す表札のようなものだ。
花守神社の物がここにあるということは誰かが取り外してここに置いたということだ。倉庫の中をみるに物を押し込むだけで整理などはされておらず、この神額もいつの間にかは分からなかった。ただ、花守神社という神社が何処かに存在していた証拠にはなる。
「懐中電灯持ってきたわよ。あとこれ」
舞さんは家から2本の懐中電を持って倉庫に戻ってきた。先ほどまでつけていなかったマスクもつけている。僕にも使い捨てのマスクを1つ渡してくれた。埃っぽいところの作業を片手で口を押さえた状態でやるのは厳しいため大変助かる。
「これ見てよ」
「なにこれ」
「神社の鳥居とかに置かれる看板。神額っていうんだけどここの文字」
「えっと、花守神社って書いてあるわね。どうしてここに?」
「いや、それはわからないって」
華上家の敷地内から出てきたものを僕が知る由もない。
「じゃあやっぱりあの神社は花守神社ってこと?」
「それも含めてちゃんと調べようか」
僕たちは2人で倉庫を漁る。手分けして探すこともできたが、古い倉庫のため何が起こるかわからない。それに重要なものがあるかもしれない。破損やアクシデントに備えて2人で同じところを探すことにした。
置かれているものは基本的に調度品や骨董品が多く、古いタンスや何処かの焼き物が置かれていた。調べたい内容が載っている文献は入り口近くにはなかったため、奥の方へ進む。
入り口からの光が全く届かなくなったため、懐中電灯で奥を照らす。
一番奥に着くと、隅の方に少し大きめの箱を見つけた。箱には鍵がかかっているということもなく、無造作に置かれていたと言っても過言ではない。重要な資料を無造作に置くことなどしないため、本来なら重要視しないであろうその箱だが、箱には花守神社と書かれていた。
「舞さん」
「うん。多分アレっぽいわね」
「分かり易すぎるけど家で保管するものってあんな感じのやつ多いよね」
「あんな感じって?」
「衣替えの時とか冬物とか書いた紙を貼り付けて押し入れに入れるやつ」
「ちょっと分かるのが嫌だわ」
僕らは箱に近付く。やはり花守神社の文字が書かれている。その箱は木で出来ているため、少し膨張して開けにくくなっていたが力ずくで開けることにした。少しメキメキ音がなっていたが仕方のないことだろう。何かあったら謝ればいいのだ。
箱の蓋を開けて中を確認すると、紙を紐でまとめただけの本が出てきた。本というよりはパンフレットだ。
豆知識だが本とパンフレットの違いはページ数と定期刊行されているかである。パンフレットはページ数が少なく定期刊行されていないものを指す。就職情報誌などの定期刊行されるものは本という扱いになるわけだ。
出てきたの書物はナンバリングがされているわけでもなく、無造作に数冊入れられていただけだった。
「ん?花守神社ってタイトルは分かるけど横に書いてある人の名前って舞さん祖先?」
「華上咲?おばあちゃんの名前だよこれ!」
「読んでみようか」
書物を慎重に取り出す。紙の材質によっては風化してしまいボロボロになる危険性がある。割としっかりした紙であったため、書物に害が及ぶことはなかった。
書物のページを捲る。花守神社という神社を代々守っていること、自分も祖先から守るように言われたこと、そして神様の声が聞こえることが最初の数ページから見て取れる。
「私と大体一緒ね」
最初の数ページに書かれていることは今の舞さんの状況とあまり変わらない。唯一変わる事は神様の声が聞こえるということだが、舞さんは夢の中で声を聞いただけらしい。これも神の力が弱まっている弊害だろうか。
「『神社の神額が落ちた。前触れもなく。何か災いがあってはまずいと思い家に保管することにする。落ちた物を再び付けることで神を穢れさせてしまう可能性を危惧した』って、入り口の神額か」
「この日付、お父さんが産まれる年だ」
神道における穢の1つとして出産がある。直接言うことはしないが、舞さんも月経のタイミングでは神社に行っていないはずだ。
この書物が書かれた時、神社に行けるのが咲さんだけだった場合、妊娠中ということもあり神社には誰も行けていないのだろう。なぜ神額が落ちたことに気付いたのかなど書かれてはいないため真実は分からない。
「『花守神社は縁結びのご利益がある。あそこに祭られているのは……であり、それを守ることが華上家との縁を結ぶときに繋がる。あの神社に命を絶やしてはならない。それが無くなった時、縁を切られるだろう』。祭られてる物が何かっていうところだけ文字が潰れていて全く読めないね」
「そこだけが不自然に潰れてる。なんか書いたらまずかったのかしら」
「いや、偶然って考えよう。そこは大事じゃない。それよりも命を絶やしてはならないってどういうことか分かる?」
「毎日行くってこと?私生きてるわけだし」
違うはずだ。穢の件から毎日行っている訳では無いし、病気などで行けない日もある。絶えた時に縁が切られると書かれているが、今はまだ華上家との縁が切られていないということになる。
「おばあさんがこれを書いている時はまだ縁結びの神様なんだね」
「逆の意味になったのはいつからなんだろう」
咲さんの時代ではまだ縁結びの神社である。この後何かが起こって縁切りの神様になるか、舞さんの時代になって変化するか。
「『息子の家に孫ができた。女の子であったため、私の後を継ぐのはこの子に成るだろう。私は足腰が悪くなり、毎日花守神社に行けていない』。おばあさん足腰悪かったの?」
「そういえばおじいちゃんと色々行った時に神社の管理があるって言って家に残ってたのってそういうことかも」
ページを進める。ページの枚数は残り数枚になり、終わりが近づいてきた。
「『孫が私に言ってきた。夢の中で誰かに、離れた君と縁を切り新たなる者に縁を結ぶと言われたらしい。孫は『はなきみ』と言ってはしゃいでいるが私にはひどく恐ろしく感じた。私の代であの神社との縁が切れることを考えてしまったのだ。私があの神社に行かないせいであの神社の命が絶たれていく。』」
「もしかして誰から聞いたわけじゃなくて私が勝手に作った言葉だった可能性ある?」
この本をみる限り、一言も離君神社という名前は出てこない。幼い頃に見た夢の話をずっと覚えていてそれを真実かのように信じ続けて今に至るのだ。
舞さんもその考えを否定しきれないようで分かりやすく落ち込んでいた。それに関してはちゃんとしたことを伝えなかった散さんにも問題があると思うが。
「『孫には毎日神社に行くように散に伝えてもらう。孫が神社から花を持ってきたのだ。社に毎日1輪ずつ置かれているらしい。それが本当に本当に怖かった。私の絶やした命を見せつけられるようだった。少しでも命を繋ぐために毎日家に飾るようにした。縁を切らせないように。命を絶やさないように。孫には、神様から縁切られるかもしれないから何かがない限り毎日行くようにと私からも伝えた』。これが最後のページだね」
「多分その縁切られるっていうのを小さかった私は神様が縁を切るっていうふうに解釈して縁切りの神様って勘違いしたんだと思う」
離君神社のことも縁切りの神様のことも全ては舞さんの勘違い、そしてそれに気付かなかった華上家の落ち度だ。神は信仰によって存在を守っている。名前の忘れられた神社が、自分の御利益を間違って解釈されたまま信仰をされたことで変質してしまった可能性がある。元々縁を結ぶ神であるため凶暴性は低いだろう。
「思い返せば誰かの口から離君神社のことも縁切りの事も聞いたことはなかったわね」
「僕は最初、花守神社が時代とともに訛ったり、伝聞のミスとかで離君神社に変わったものだと思ったんだけどね」
「私だって今の今まで自分の作り上げたものを真実だって思ってたなんて恥ずかしいやら後悔があるやらで、もう寝たい気分よ」
ご愁傷様である。
しかし今大切なのはそんなことではない。
「それよりも、今後どうするかを考えないと」
この場所には花守神社が何を祀っているかが分かる資料は今のところはない。他の資料を確認するまでは分からないが、現状出来ることは少ない。
あの神社へ信仰を集めることは現代ではほぼ不可能だろう。催しや祭りなどができないほど荒んでいる。
華上家との縁が舞さんと繋がっているこの状況を好機と捉え、あの神様を元の縁結びの神様に戻すことができれば華上家として助かるだろう。
忘れていたが、今回の依頼は舞さんの成長の手助け。花守神社の件を進めることで舞さんには一花咲いてもらうことにする。神守として、裏世界に関わるものとしての芽は出ている。
「そんなの決まってるじゃない。あの神社を縁結びの神社に戻してちゃんとした花守神社に戻すの。神額もつけてね。それが私の神守としての最初の大仕事よ!」
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