監視?付きの異世界チート旅

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はじめての旅

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ヴェルの村を出て2時間ほど歩いた。

もちろん疲れも空腹もない。

遠く左右に広がる森と、まっすぐ続く平野。

時折、鹿のような動物や、狸のような動物を見かける。

暑くもなく、寒くもない快適な気温。

空は青く澄み渡り、どこまでも続いている。

「平和だ。」

そんなことを考えて歩いていると、小さな川を見つける。

「お、飲めるかな?」

両手を伸ばすが届かず、片手なら何とかなりそうだ。

「むぅ、ここは!」

(コップ召喚!!!)

すると、少し大きめの持ち手が付いた、マグカップが出現する。

(ふふふ、我ながら、チートの無駄遣いだと思うぜ。)

自覚はあるらしい。

そして川の水をコップいっぱいにすくい、見てみる。

「うーん、見ただけじゃ飲んで大丈夫か分からんな。」

(殺菌消毒!!)

水が綺麗になったような気がする。

対象のイメージが曖昧だったからか、コップと右手まで殺菌消毒された。

「よし、飲むか。」

一気に飲んだら冷たくて美味しかったため、つい5杯ほど飲んでしまった。

「ううー、体が冷えた。。。」

自業自得だった。






またしばらく歩くと、平原が終わり森が現れる。

(ここからは森の中か。この大きな森を抜けると、やっと山の麓に到着できるな。)

そして森に足を踏み入れた瞬間、

「シャァァァ!!!」

左の草の中から、大きな蛇が飛び出してきた。

「うわー!!」

何とか避けれたが、尻餅をついてしまいすぐには動けない。

大蛇はこちらを向き直すと、様子を伺っている。
ちゃんと見ると、人の胴体くらいの太さはある。それに長さも数メートルあるようだ。

(うぅ、毒とかあるのかな。)

「シャァァァ!!!」

また大蛇が向かってくる。

「くそ!」

(止まれ!!!)

そう念じると、大蛇は止まった。

「あれ?」

前にうさ耳マッチョが動きを止めたときと、様子が違う。

大蛇は飛びかかった状態で、止まっているのだ。

そう、空中で。

(そうか、前は動くなって念じたのか。)

それはそうと、今にも動き出しそうな感じで怖い。

「剥製を見ている気分だ。。。これ、どうしようか。」

そんなとき、ふとマンガを思い出す。

(そうだ。・・・俺の仲間になれ!!)

自分なりにテイムしてみた。

そして、恐る恐る動きを戻す。

「シャァ!」

ドサッと言う音とともに、地面に落ちる大蛇。

そしてこちらを向くと、足元に擦り寄ってきた。

(こ、怖いけど、成功したようだ。)

「よ、よしよし、もう俺を襲うなよ。」

頭をポンポンしてみる。

「シャァ」

言葉が通じているかは分からないが、敵じゃなくなって良かった。

体は全く疲れてないが、精神的に疲れたので少し引き返した平原で休むことに。

もちろん大蛇も一緒だ。





「旅は良いなぁって思うけど、やっぱ危険は嫌だな。」

そう呟くと、いろいろ考え始める。

(安全にとなると、かなりの戦闘力がいるのか?・・・いや、動きを止められるなら不要か。なら、自分の身の安全を、、、)

数分考え込み、思い付く。

(そうだ!・・・絶対に傷付かない体を!!!)

そう強く念じると、皮膚の感覚が鈍くなった感じがする。

「どうなんだろう。。。」

試しに自分の腕を殴ってみる。

「お、殴った感覚と、当たった感覚はあるが、全く痛くない。」

思いっきり地面を殴る。

ドスッ!

地面に拳がめり込んだが、痛くない。

「おお!しかも擦り傷一つない!!」

感動した。

魔王を倒す勇者のような、絶対的な強さが欲しいわけでもない。

だが、弱くて不自由なのも、死にそうになるのも嫌だ。

その点、これなら痛くもないし、死ぬこともない。

「さすがチートだ!!!」

そう言ってガッツポーズを取る。

大蛇が不思議そうに見てくるが、とりあえず頭をポンポンしておく。

「お前の主人は不死身だぞ!」

そうして、安全な旅がスタートできるようになった。

「よし、森に行くか!」

「シャァ!」

少し日が傾きかけているが、無敵の体を手に入れたハヤトは気にすることもなかった。







少し進むと、鹿らしき動物がいたが、危険を感じないのでスルーして進む。が、

「シャァァァ!!!」

大蛇が鹿を襲い、あっけなく食べられる。

「あ・・・」

ハヤトは弱肉強食の自然界の怖さを感じた。

大蛇は満足そうだが、体が重いようで動かない。

「うーん、まぁ、自然のことは口を出す問題じゃないからな。」

しばらくすると、大蛇が動けるようになったので先を進む。

その後も、大きなリスや、サルみたいな動物と出会ったが、基本的に害がないのでスルーした。

大蛇もまだお腹が空いていないのか、同じくスルーしていた。

そして森に入って2時間ほど経過し、辺りはすっかり暗くなっていた。

「さすがにこれだけ暗いと、動きにくいな。」

「シャァ?」

歩くのをやめたため、大蛇がこちらへ寄ってくる。

「ああ、お前は夜でも見えるから関係ないのか。って、そうか!」

ハヤトは念じることにした。

(夜でもはっきり見える目を!!!)

すると、さっきまで暗かった視界がクリアになった。

明るくはないため、少し見え方が違う。

(昼間より色が薄いな。だが十分動ける。)

「よし、行くか!」

「シャァ!」







そしてまた1時間ほど歩くと、こちらを見ている動物がいるのに気付く。

「ん?あれは何だ?」

もう少し近付いてみると、

「お、これはヤマアラシか!」

見るからに危なそうな大きなトゲがあるが、背は向けずにこちらを睨むように警戒している。

「うーん、背中のトゲで攻撃してくるんじゃなかったか??まぁ異世界だし、同じはずもないか。なんかデカイし。」

そう、遠くからでは分からなかったが、2メートルくらいあるのだ。

そんな生態について考えていると、

「シャゥ?!」

大蛇が変な声を上げたので振り返る。

「!!!!」

そこには、無数のトゲが刺さった大蛇がいた。

「なに!?大丈夫か!?」

そして周りを見ると、先ほどの大きなヤマアラシに、完全に包囲されている。

「こいつら、猛獣か!!!」

この世界での、普通の動物と猛獣の違い。
それは、攻撃性の高さだ。

ハヤトのテイムした大蛇も、猛獣にあたる。

そして強い猛獣は、知能も高い。

(大蛇のトゲよ、抜けろ!!!)

大蛇からトゲが落ちていく。

(再生!!!)

トゲの跡が消えていき、大蛇が動き出す。

「シャァァァ!!!」

かなり怒っているようだ。

ヤマアラシ達は気にせず、またトゲを飛ばそうと攻撃体制に移る。

「させるか!」

(結界!!!)

大蛇の周りに膜ができる。

シュンシュンシュン!!!

無数のトゲが、大蛇とハヤトに飛んでくる。

トゲは膜に当たると、そのまま落ちた。

ハヤトには当たっているように見えるが、刺さらずに落ちている。

「なかなか厄介なヤマアラシだな!大人しかったら可愛いのに!」

そんな感情を抱きつつ、反撃する。

(この周囲のヤマアラシ達のトゲよ、無くなれ!!!)

そう念じると、急にヤマアラシ達が動かなくなった。

戸惑っているようだ。

そう、トレードマークのトゲがなくなり、なんだか可愛い動物になってしまったのだ。

「キュウゥゥゥ・・・」

そんな鳴き声を出すと、一気に逃げて行った。

「はっはっは!武器がなくなれば戦えまい!」

「シャァ!」

勝利だ。

可愛かったから、傷付けることは避けたかったのだ。

「あれ?」

キョロキョロと辺りを見回す。

「あ、トゲがないと思ったら、さっきので落ちてたトゲも消えたのか。」

売れるかと思っていたので、残念だ。

そうしてまたしばらく進むと、山の麓が見えた。

「よし!森を抜けたぞ!」

「シャァ!」

だが、

「これ、どうやって越えるんだ???」

ハヤトの視線の先には、どこまでも続きそうな断崖絶壁がそびえ立っていた。
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