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【フェリクス編】
06.告白される*
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ソファが二人分の重みに沈み、メリッサが身じろぎするたびに小さく軋む音と衣擦れの音がする。
隣に移動したフェリクスに腰を抱き寄せられ、頬に添えられた手で逃げる動きを止められ、半ば強引にメリッサは唇を奪われていた。
初めは触れるだけの口づけが、今は深く重ねられ、湿った音が聞こえている。唇を割って挿入されたフェリクスの舌が、メリッサの口内を蹂躙しているからだ。
「ん……ぁ」
決して荒々しくはないのに、拒む隙を与えまいとフェリクスの熱く湿った舌が、メリッサの舌に執拗に絡みついてくる。
次第に息が上がり、キスの合間に吐息がこぼれ、喘ぐような小さな声が意図せず漏れてしまう。
メリッサの頬が赤く染まり、限界を越えそうになった頃になって、ようやくフェリクスが唇を離した。しかもメリッサの濡れて色づいた唇を食みながら、羞恥と欲情を掻き立てつつ離れて行く。
メリッサは吐息さえも震わせながら、初めて触れるフェリクスの熱に戸惑いを隠せなかった。彼の胸に置いた手で、やんわりと制止を試みる。だが――
「メリッサ、僕を見て」
「あ……」
顎に添えられたフェリクスの手によって、強引に上向かせられると欲情滾る彼の視線に捉えられてしまった。いつもは柔和な印象しかない優しい雰囲気をまとうフェリクスが、まるで捕食者のようにメリッサを見つめ放さない。
腰を抱く腕に力がこもり、さらに体を密着させてフェリクスが囁く。
「メリッサ、愛している――」
ところが、その言葉を聞いてメリッサは震えが走った。このような状況になってすっかり忘れていたはずなのに、『愛している』という言葉で先日の父親とのことが脳裏に蘇ったのだ。
思わず、ぎゅっと目をつむり身を強張らせてしまった。
「メリッサ……」
先ほどよりも優しい声音が頭上から降ってくる。背中を撫でられ、再度「僕を見て」と声をかけられて、メリッサは恐る恐る彼を見上げた。
(大丈夫、お父様じゃない……目の前に居るのはフェリクス様だから……)
必死に『大丈夫』だと自分に言い聞かせるメリッサ。もう一度フェリクスを見上げれば、気遣う視線と目が合う。
「メリッサ、僕が怖い?」
「いいえ! いいえ、フェリクス様。つい、お父様のことを思い出してしまって……」
「……なんて言われたのか、聞いてもいい? 嫌なら答えなくていい」
「……わたしを誰のものにもしたくない、と……自分だけのものにしたい、わたしも同じ気持ちだろう、と」
父親が、自分の娘に家族以上の好意を持たれていると、本気で信じているような言葉に、メリッサは改めて怖気を感じた。
小さく震えていると、フェリクスに優しく抱き寄せられる。
「答えてくれてありがとう。実の父親に、それは辛かったね……だけどもう大丈夫だから。ルーベンス侯爵には、もう指一本きみに触れさせない、近づかせない」
フェリクスの宣言にメリッサは心が軽くなっていく。気持ちに余裕ができたからか、先ほどから香水の匂いが鼻をくすぐっているのに気づいた。
フェリクスが付けている香水の香りだろう。
その香りにメリッサは既視感があった。公爵邸に匿われた日、あの寝室で匂ったものとそっくりだったのだ。
(お母様の匂いではなかったのかしら……)
もしそうであれば、実はあの寝室でフェリクスはずっと、メリッサに付き添ってくれていたのかも知れない。
そう思うとメリッサは胸が温かくなった。それと同時に、心臓が早鐘を打つ。フェリクスの腕の中で安堵していたはずなのに、今度はとても緊張している。だが、決して嫌なものではなく――。
「メリッサ?」
再び優しく名前を呼ばれて、メリッサは彼を見上げた。いつもと同じ、柔らかな彼の眼差しにメリッサは胸が高鳴る。
「フェリクス様、わたし……」
胸がいっぱいになって、そこから先の言葉が出てこなかった。だが、フェリクスにはそれだけで伝わったのかも知れない。
彼は目を細め、つい見入ってしまうくらいの艶やかな笑みを浮かべて見せた。
「メリッサ、大丈夫だよ。僕だけを見ていて、僕のことだけ考えて……」
「フェリクス様、んっ――」
再び唇を塞がれる。啄むようなキス、深く重ね合うキス、互いの舌を絡め合う濃厚なキスを繰り返し、フェリクスは存分にメリッサとの口づけを堪能していく。
「僕を見ない、意識しようともしないきみを、僕は十年間ずっと想い続けてきた。ようやくだ、ようやく――」
口づけの合間にメリッサへの想いをこぼしながら、フェリクスは感情を昂らせていく。そしてメリッサをソファの上へ押し倒すと、離れまいと体を密着させながら覆いかぶさってくる。
「フェリ、んんっ、さま――あっ」
フェリクスの頭が首元に寄せられ、首筋に彼の舌が這うのを感じた。メリッサは驚きと羞恥に体を小さく震わせるが、次いで歯を立てられ甘噛みされると、鼻に抜ける甘い喘ぎを漏らしてしまう。
少し痛いくらいに噛まれた痕を、また湿った熱い舌で舐られる感触に、甘美な痺れが全身に広がって堪らず身悶えてしまう。
「僕はきみと結婚する。メリッサを妻にする。たとえどんな障害があったとしても――」
力強く宣言するフェリクスは両手をワンピースの襟元にかけると、強く下へ引っ張った。
モレナール邸に匿われてから与えられたワンピースは、体をあまり締め付けない緩いものだった。そのため、あっけなくメリッサの胸が露わになる。豊かな白い胸がフェリクスの前に曝け出されてしまった。
彼に珍しくやや乱暴な行為にほんの一瞬頭が真っ白になったメリッサだが、異性に――フェリクスに裸の胸を見られている状況に羞恥が湧く。
顔を真っ赤にさせて、両腕で胸を隠そうとしたが、それよりも先にフェリクスの手が柔らかな乳房を覆う。
「やっ!……ん」
目の前で自分の胸が、フェリクスの指の形に歪められ、さらに揉まれながら無尽に形を変えられていく。
「柔らかい……それに、気持ち良さそうだね」
どこか陶然としたような表情でフェリクスが指摘するのは、指の間や掌の下でメリッサの胸の尖りが硬く色づき始めたのを見たからだろう。
躊躇なくそれを指で摘まむと優しく抓られる。
「ああっ、やっ――」
思わず身を捩って逃れようとするが、フェリクスの身体が覆いかぶさっている状況で逃げられるはずもなく、そして彼の手は乳房に吸い付いているかのように離れない。
メリッサが感じているのだと見て取って、フェリクスはすっかり硬くなった乳首を弄んだ。抓られ、押し込まれると強い刺激に肩が跳ね、指先で弾かれると鋭い刺激に艶めかしく身を捩ってしまう。
「やっ、フェリクス様っ、んんっ!」
「ああ、きみはこんな風に感じるんだね、喘いでいるきみも可愛いよ」
すっかり夢中になっているらしいフェリクスは、まるで吸い寄せられるように顔を寄せると、ぷくりと尖る乳首を口に含んだ。
「っ!? だめっ……んっ、あ……ぁ」
フェリクスが胸に吸い付いている、そんな光景に一瞬理解が追いつかなかったが、愛撫で敏感になったそれを今度は舌で弄ばれる刺激に我に返り、淫靡な光景にどっと羞恥と熱がせり上がってきた。
唾液で滑った舌が硬い尖りを撫でまわし、器用にも弾くように擦り上げ、あげく甘噛みしながら強く吸い付かれる。
わざとなのか、湿った音を立てて唇が離れて行くと、赤く膨らんだ乳首が涎にてかっていやらしい光景を作っていた。
「メリッサの反応が嬉しくて、つい夢中になってしまうな」
「……フェリクス様」
思わず物言いたげにフェリクスを見上げれば、彼は楽しそうに喉を鳴らして笑った。
「そう睨まないでくれ。僕がどれだけこの時を待ち望んでいたか、きみは知らないだろう?」
「……」
「大丈夫だよ。今から存分に教えてあげる。僕がどんなにメリッサを心から深く求めていたか――」
いつもとは違う、どこか愉悦のこもった目で見つめられる。
ゲームで見たフェリクスルートの彼とは違う気がした。
なのに、溺愛ハッピーエンドで見たフェリクスの、ヒロインを愛しむ“あの眼差し”を思い起こさせた。
(溺愛……わたしがフェリクス様に……?)
それに思い至るとメリッサは、肌が粟立つほどの昂ぶりを覚えた。発汗するほどの熱が体の奥に溜まっていく。
そんなメリッサの震える唇に軽く唇を重ね――
「メリッサの体に、隅々に、僕の想いを刻み込んであげる」
間近で囁くように言葉を紡ぎながら、フェリクスの手が下へと降りていく。腰のくびれをなぞり、太ももを撫で、ワンピースの裾を捲り上げると、今度は直に太ももの内側を撫でながら上がっていく。
「フェリ、クス、さま――ぁ、んっ……!」
ついにフェリクスの指先が下着にかかった。指の腹で陰唇のふくらみを辿り、下着の上から割れ目を確かめるように撫でられる。
誰にも触れられたことのない部分に触れられる恐怖もあったが、それよりも触れられたことで、すでに秘部が濡れている事実をつきつけられて、圧倒的な羞恥に意識が塗り替えられてしまう。
「もう濡れてる……メリッサも興奮してる?」
フェリクスがこちらを見下ろしながら、割れ目を撫でる指に力を込めた。それだけでメリッサは腰を震わせて喘いでしまう。
「あっ、ん――や、フェリクス様……」
自分でもどうして欲しいのか分からないまま彼を見上げると、欲情をまとう視線に囚われた。
「それは誘ってるの? メリッサ、そんな顔で名前を呼ばれたら、手加減できなくなってしまうよ?」
そんなことを言われても――と、メリッサはせめて声を我慢しようと口元に手を当てるが、それもまた逆効果だったらしい。
「可愛いメリッサ。どこまで我慢できるか見てあげる」
そう言ってフェリクスは、先ほどよりも滑り気の増した割れ目に、下着の上からやや力を込めて指を押し込む。
「っ!!」
そのまま指が入ってしまいそうなほど沈み、メリッサは咄嗟に腰を引くように身悶えた。
「逃げてはダメだよ、メリッサ」
空いた方の手で腰を抑えられ、同時にフェリクスの指先が滑るように、割れ目の先にある突起に触れた。途端――
「ああっ!? んんっ!」
そこから電流のような快感が全身を駆け巡り、メリッサはあっけなく喘ぎ声を漏らすと、大きく腰を震わせた。
「ここが良い? すぐに声我慢できなくなるくらい?」
訊ねながら、その答えをメリッサの反応で確かめようというように、フェリクスは突起を撫でまわす。まだ下着の上からだというのに、敏感にメリッサは反応を示し、下着から滴るほど愛液を溢れさせビクビクと腰を小さく跳ね上げる。
「腰が揺れてるね、メリッサ。いやらしくて、淫靡で、すごくそそる……」
メリッサはフェリクスの愛撫で、言葉で、興奮を煽られていき、さらに唐突に指先で突起を摘ままれたことで限界を越えた。
「やぁっ! いっ――っ!!」
はしたなく腰を浮かせ、強い刺激に頭が真っ白になり、何も考えられないまま下半身からせり上がる快感に飲み込まれ、気がつくと絶頂に達していた。
途端に体から力が抜けて腰を落とし、絶頂の痙攣に小さく身悶えながら、とっさに何が起こったのか分からず困惑する。
「達したの? メリッサ……イッてるきみも可愛いね」
フェリクスのその言葉で、メリッサはようやく自分が絶頂したのだと知る。ただ、それは自分が知る絶頂とは違った。
(こんなに、気持ちいいの、初めて……フェリクス様だから?)
それは心の中で呟いたはずだったが、もしかしたら口に出ていたのかも知れない。
「メリッサ――」
名前を呼ばれて見上げれば、熱に浮かされたようなフェリクスの視線が絡みつき、すぐにまた唇を奪われる。そして触れる太ももの辺りに、硬い何かが当たるのを感じてゾクリとする。
だが決して、それは恐れからではなかった。それが分かっているのか、フェリクスは自分の熱い塊をメリッサに押し付けたまま唇を離すと囁く。
「メリッサの初めては全部、僕がもらう――」
隣に移動したフェリクスに腰を抱き寄せられ、頬に添えられた手で逃げる動きを止められ、半ば強引にメリッサは唇を奪われていた。
初めは触れるだけの口づけが、今は深く重ねられ、湿った音が聞こえている。唇を割って挿入されたフェリクスの舌が、メリッサの口内を蹂躙しているからだ。
「ん……ぁ」
決して荒々しくはないのに、拒む隙を与えまいとフェリクスの熱く湿った舌が、メリッサの舌に執拗に絡みついてくる。
次第に息が上がり、キスの合間に吐息がこぼれ、喘ぐような小さな声が意図せず漏れてしまう。
メリッサの頬が赤く染まり、限界を越えそうになった頃になって、ようやくフェリクスが唇を離した。しかもメリッサの濡れて色づいた唇を食みながら、羞恥と欲情を掻き立てつつ離れて行く。
メリッサは吐息さえも震わせながら、初めて触れるフェリクスの熱に戸惑いを隠せなかった。彼の胸に置いた手で、やんわりと制止を試みる。だが――
「メリッサ、僕を見て」
「あ……」
顎に添えられたフェリクスの手によって、強引に上向かせられると欲情滾る彼の視線に捉えられてしまった。いつもは柔和な印象しかない優しい雰囲気をまとうフェリクスが、まるで捕食者のようにメリッサを見つめ放さない。
腰を抱く腕に力がこもり、さらに体を密着させてフェリクスが囁く。
「メリッサ、愛している――」
ところが、その言葉を聞いてメリッサは震えが走った。このような状況になってすっかり忘れていたはずなのに、『愛している』という言葉で先日の父親とのことが脳裏に蘇ったのだ。
思わず、ぎゅっと目をつむり身を強張らせてしまった。
「メリッサ……」
先ほどよりも優しい声音が頭上から降ってくる。背中を撫でられ、再度「僕を見て」と声をかけられて、メリッサは恐る恐る彼を見上げた。
(大丈夫、お父様じゃない……目の前に居るのはフェリクス様だから……)
必死に『大丈夫』だと自分に言い聞かせるメリッサ。もう一度フェリクスを見上げれば、気遣う視線と目が合う。
「メリッサ、僕が怖い?」
「いいえ! いいえ、フェリクス様。つい、お父様のことを思い出してしまって……」
「……なんて言われたのか、聞いてもいい? 嫌なら答えなくていい」
「……わたしを誰のものにもしたくない、と……自分だけのものにしたい、わたしも同じ気持ちだろう、と」
父親が、自分の娘に家族以上の好意を持たれていると、本気で信じているような言葉に、メリッサは改めて怖気を感じた。
小さく震えていると、フェリクスに優しく抱き寄せられる。
「答えてくれてありがとう。実の父親に、それは辛かったね……だけどもう大丈夫だから。ルーベンス侯爵には、もう指一本きみに触れさせない、近づかせない」
フェリクスの宣言にメリッサは心が軽くなっていく。気持ちに余裕ができたからか、先ほどから香水の匂いが鼻をくすぐっているのに気づいた。
フェリクスが付けている香水の香りだろう。
その香りにメリッサは既視感があった。公爵邸に匿われた日、あの寝室で匂ったものとそっくりだったのだ。
(お母様の匂いではなかったのかしら……)
もしそうであれば、実はあの寝室でフェリクスはずっと、メリッサに付き添ってくれていたのかも知れない。
そう思うとメリッサは胸が温かくなった。それと同時に、心臓が早鐘を打つ。フェリクスの腕の中で安堵していたはずなのに、今度はとても緊張している。だが、決して嫌なものではなく――。
「メリッサ?」
再び優しく名前を呼ばれて、メリッサは彼を見上げた。いつもと同じ、柔らかな彼の眼差しにメリッサは胸が高鳴る。
「フェリクス様、わたし……」
胸がいっぱいになって、そこから先の言葉が出てこなかった。だが、フェリクスにはそれだけで伝わったのかも知れない。
彼は目を細め、つい見入ってしまうくらいの艶やかな笑みを浮かべて見せた。
「メリッサ、大丈夫だよ。僕だけを見ていて、僕のことだけ考えて……」
「フェリクス様、んっ――」
再び唇を塞がれる。啄むようなキス、深く重ね合うキス、互いの舌を絡め合う濃厚なキスを繰り返し、フェリクスは存分にメリッサとの口づけを堪能していく。
「僕を見ない、意識しようともしないきみを、僕は十年間ずっと想い続けてきた。ようやくだ、ようやく――」
口づけの合間にメリッサへの想いをこぼしながら、フェリクスは感情を昂らせていく。そしてメリッサをソファの上へ押し倒すと、離れまいと体を密着させながら覆いかぶさってくる。
「フェリ、んんっ、さま――あっ」
フェリクスの頭が首元に寄せられ、首筋に彼の舌が這うのを感じた。メリッサは驚きと羞恥に体を小さく震わせるが、次いで歯を立てられ甘噛みされると、鼻に抜ける甘い喘ぎを漏らしてしまう。
少し痛いくらいに噛まれた痕を、また湿った熱い舌で舐られる感触に、甘美な痺れが全身に広がって堪らず身悶えてしまう。
「僕はきみと結婚する。メリッサを妻にする。たとえどんな障害があったとしても――」
力強く宣言するフェリクスは両手をワンピースの襟元にかけると、強く下へ引っ張った。
モレナール邸に匿われてから与えられたワンピースは、体をあまり締め付けない緩いものだった。そのため、あっけなくメリッサの胸が露わになる。豊かな白い胸がフェリクスの前に曝け出されてしまった。
彼に珍しくやや乱暴な行為にほんの一瞬頭が真っ白になったメリッサだが、異性に――フェリクスに裸の胸を見られている状況に羞恥が湧く。
顔を真っ赤にさせて、両腕で胸を隠そうとしたが、それよりも先にフェリクスの手が柔らかな乳房を覆う。
「やっ!……ん」
目の前で自分の胸が、フェリクスの指の形に歪められ、さらに揉まれながら無尽に形を変えられていく。
「柔らかい……それに、気持ち良さそうだね」
どこか陶然としたような表情でフェリクスが指摘するのは、指の間や掌の下でメリッサの胸の尖りが硬く色づき始めたのを見たからだろう。
躊躇なくそれを指で摘まむと優しく抓られる。
「ああっ、やっ――」
思わず身を捩って逃れようとするが、フェリクスの身体が覆いかぶさっている状況で逃げられるはずもなく、そして彼の手は乳房に吸い付いているかのように離れない。
メリッサが感じているのだと見て取って、フェリクスはすっかり硬くなった乳首を弄んだ。抓られ、押し込まれると強い刺激に肩が跳ね、指先で弾かれると鋭い刺激に艶めかしく身を捩ってしまう。
「やっ、フェリクス様っ、んんっ!」
「ああ、きみはこんな風に感じるんだね、喘いでいるきみも可愛いよ」
すっかり夢中になっているらしいフェリクスは、まるで吸い寄せられるように顔を寄せると、ぷくりと尖る乳首を口に含んだ。
「っ!? だめっ……んっ、あ……ぁ」
フェリクスが胸に吸い付いている、そんな光景に一瞬理解が追いつかなかったが、愛撫で敏感になったそれを今度は舌で弄ばれる刺激に我に返り、淫靡な光景にどっと羞恥と熱がせり上がってきた。
唾液で滑った舌が硬い尖りを撫でまわし、器用にも弾くように擦り上げ、あげく甘噛みしながら強く吸い付かれる。
わざとなのか、湿った音を立てて唇が離れて行くと、赤く膨らんだ乳首が涎にてかっていやらしい光景を作っていた。
「メリッサの反応が嬉しくて、つい夢中になってしまうな」
「……フェリクス様」
思わず物言いたげにフェリクスを見上げれば、彼は楽しそうに喉を鳴らして笑った。
「そう睨まないでくれ。僕がどれだけこの時を待ち望んでいたか、きみは知らないだろう?」
「……」
「大丈夫だよ。今から存分に教えてあげる。僕がどんなにメリッサを心から深く求めていたか――」
いつもとは違う、どこか愉悦のこもった目で見つめられる。
ゲームで見たフェリクスルートの彼とは違う気がした。
なのに、溺愛ハッピーエンドで見たフェリクスの、ヒロインを愛しむ“あの眼差し”を思い起こさせた。
(溺愛……わたしがフェリクス様に……?)
それに思い至るとメリッサは、肌が粟立つほどの昂ぶりを覚えた。発汗するほどの熱が体の奥に溜まっていく。
そんなメリッサの震える唇に軽く唇を重ね――
「メリッサの体に、隅々に、僕の想いを刻み込んであげる」
間近で囁くように言葉を紡ぎながら、フェリクスの手が下へと降りていく。腰のくびれをなぞり、太ももを撫で、ワンピースの裾を捲り上げると、今度は直に太ももの内側を撫でながら上がっていく。
「フェリ、クス、さま――ぁ、んっ……!」
ついにフェリクスの指先が下着にかかった。指の腹で陰唇のふくらみを辿り、下着の上から割れ目を確かめるように撫でられる。
誰にも触れられたことのない部分に触れられる恐怖もあったが、それよりも触れられたことで、すでに秘部が濡れている事実をつきつけられて、圧倒的な羞恥に意識が塗り替えられてしまう。
「もう濡れてる……メリッサも興奮してる?」
フェリクスがこちらを見下ろしながら、割れ目を撫でる指に力を込めた。それだけでメリッサは腰を震わせて喘いでしまう。
「あっ、ん――や、フェリクス様……」
自分でもどうして欲しいのか分からないまま彼を見上げると、欲情をまとう視線に囚われた。
「それは誘ってるの? メリッサ、そんな顔で名前を呼ばれたら、手加減できなくなってしまうよ?」
そんなことを言われても――と、メリッサはせめて声を我慢しようと口元に手を当てるが、それもまた逆効果だったらしい。
「可愛いメリッサ。どこまで我慢できるか見てあげる」
そう言ってフェリクスは、先ほどよりも滑り気の増した割れ目に、下着の上からやや力を込めて指を押し込む。
「っ!!」
そのまま指が入ってしまいそうなほど沈み、メリッサは咄嗟に腰を引くように身悶えた。
「逃げてはダメだよ、メリッサ」
空いた方の手で腰を抑えられ、同時にフェリクスの指先が滑るように、割れ目の先にある突起に触れた。途端――
「ああっ!? んんっ!」
そこから電流のような快感が全身を駆け巡り、メリッサはあっけなく喘ぎ声を漏らすと、大きく腰を震わせた。
「ここが良い? すぐに声我慢できなくなるくらい?」
訊ねながら、その答えをメリッサの反応で確かめようというように、フェリクスは突起を撫でまわす。まだ下着の上からだというのに、敏感にメリッサは反応を示し、下着から滴るほど愛液を溢れさせビクビクと腰を小さく跳ね上げる。
「腰が揺れてるね、メリッサ。いやらしくて、淫靡で、すごくそそる……」
メリッサはフェリクスの愛撫で、言葉で、興奮を煽られていき、さらに唐突に指先で突起を摘ままれたことで限界を越えた。
「やぁっ! いっ――っ!!」
はしたなく腰を浮かせ、強い刺激に頭が真っ白になり、何も考えられないまま下半身からせり上がる快感に飲み込まれ、気がつくと絶頂に達していた。
途端に体から力が抜けて腰を落とし、絶頂の痙攣に小さく身悶えながら、とっさに何が起こったのか分からず困惑する。
「達したの? メリッサ……イッてるきみも可愛いね」
フェリクスのその言葉で、メリッサはようやく自分が絶頂したのだと知る。ただ、それは自分が知る絶頂とは違った。
(こんなに、気持ちいいの、初めて……フェリクス様だから?)
それは心の中で呟いたはずだったが、もしかしたら口に出ていたのかも知れない。
「メリッサ――」
名前を呼ばれて見上げれば、熱に浮かされたようなフェリクスの視線が絡みつき、すぐにまた唇を奪われる。そして触れる太ももの辺りに、硬い何かが当たるのを感じてゾクリとする。
だが決して、それは恐れからではなかった。それが分かっているのか、フェリクスは自分の熱い塊をメリッサに押し付けたまま唇を離すと囁く。
「メリッサの初めては全部、僕がもらう――」
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どこにでもいる普通のOLの里奈は、山の中でスケッチをしていたら異世界に迷い込んだ。魔力のない里奈は『非人』として国に保護されて、洗濯の下女の仕事をしている。将来のためにお金を貯めようと、こっそりエロ画を描いて売っていた。どうも里奈の描いたエロ画はこの国では刺激が強かったらしい。「これを描いたのはおまえか?」と、俺様王子に食べられた。恋い焦がれていた人の兄と関係を持った。
里奈が王子の子どもを妊娠したことによって、長い歴史の中でねじ曲げられた非人と王族との真実が明かされようとした。そして命を狙われはじめた。二人の王子の間で揺れ動く恋心。生き残るために日本で育った常識を捨てた。
R18 *性的描写や残酷描写を想像させる描写あります。誤字脱字多で不快感を覚える方はお控えください。執筆に集中したいので感想欄を閉じさせていただきます。お読みくださり、ありがとうございます。
すみません、クライマックスですが、更新ペース下がります。
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