オメガ王子はごろつきアルファに密やかに愛される

須宮りんこ

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4.発情期

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 覚えているのは、暗闇の中でドアがバタンッと乱暴に閉まる音と男の荒い息遣いだ。自分のものか、相手のものかなんて知らない。たぶんどっちもだ。

「ンふぁ……っあ」
 目が闇に慣れてくる前に、顎を掴まれてキスされた。歯がガチッとあたるほどの荒々しい口づけを交わしながら、靴も脱がずにベッドの上に背中から転がされた。
 続けて相手の体重が乗ってくる。硬いマットレスが沈み、ギシリとスプリングが軋む。
   飢えた獣が餌を貪るように互いの唇を濡らしながら、フォルカとガイは舌を絡ませ合った。男の唾液が甘く感じた。服を脱ぐことさえ煩わしかった。
「は、やく……っ!」
 きて、と言おうとした瞬間、下着ごと膝まで下ろされた。下半身を腹につくほどに折られ、大事な部分が男の前に晒される。触ってもいないのに、フォルカの芯も後ろの窄みも先走りと愛液でぐちゃぐちゃに濡れている。
 アルファのそこがほしい。今すぐ腹に突き立てて、奥をこねくり回してほしい。淫らな穴がヒクヒクと痙攣し、待ち遠しくてたまらなかった。
 ガイは潤んだ窄まりに舌を入れ、音を立てて舐めた。押し入ってくる舌に蕾を舐められただけで、背筋に電流が走る。
「や、ぁン……っ。は、あァ……っ!」
 気持ちいいけど、足りない。もっとほしい。突き破るほどの衝撃を内壁から感じたい。
 フォルカは泣きながら「きて」と訴えた。
「ここに、入れて……っ。僕の、ここ……っ早く、ズボズボしてぇ……っ」
 窄まりを男に見せつけるよう、二本の指で広げた。羞恥心なんて、少しも胸になかった。

 ガイは苛立ったように舌打ちすると、太ももの付け根まで自身の下着とパンツを下ろした。目が慣れてきたのか、ガイの顔が薄暗い部屋の中で浮かび上がる。
 ガイの目は焦点が合っていなかった。獣のように低く息継ぎを繰り返し、暴力的なほどに勃ち上がった肉棒をフォルカの窄まりに突き立てた。血管の浮いた陰茎が、自身の肉を割って押し入ってくる。
 バチンッと熱い杭が打たれた瞬間、フォルカは息の仕方を忘れた。
「あ……っ!」
 目を見開いたまま、挿入された男の熱を感じる。軽く果ててしまったらしい。フォルカの天を仰いだ小ぶりの陰茎からは、少量の精液がたらたらとにじみ出ていた。
 オメガの男にとって、陰茎はお飾りみたいなものだ。それでも触れば感じるし、果てれば敏感になる。
 ガイはフォルカのそこを手で包み込んだあと、腰を激しく突き動かした。揺さぶられる反動と一緒に、敏感になったそこをガイの手が上下に扱いてくる。
「ンあっ、だめっ、それ……っは、ァんっ」
 強い刺激に目の裏がチカチカと光った。だらしなく開いた口からは、色情にまみれた喘ぎ声と涎がこぼれ続けた。
 男はそのあとも、前後に腰を打ち付けてはフォルカを揺さぶった。汗で濡れた肌がぶつかるたび、奥に与えられる衝撃がたまらなかった。子宮に届くほどの長さを抜き挿しされると、腹の奥がきゅんと疼いた。
 そうしているうちにフォルカは裏返され、うつ伏せにさせられた。動物の交尾のように、後ろからガツガツと体内を掘られた。
 それまで黙っていた男の口から「……ックソ」と漏れるのを聞いたのは、それからすぐのこと。自身の窄まりを押し広げる熱杭が、体内でより一層硬くなる。それが死ぬほど気持ちよくて、怖くなった。
「やっ、ああッ……っはあ、あン……ッイク、イっちゃう……っ!」
 イヤイヤ首を振ると、男の手がフォルカの頭を枕に沈めた。鼻や口が枕に埋もれて苦しい。逃げられない状態に興奮する。もっと自分をえぐってほしいと願わずにはいられない。

 男の激しい抽挿に酔っていると、男の荒い息が落ちてきた。タートルネックの上から、がぶりとうなじを噛まれる。本能に支配された頭に一瞬ドキッと理性が戻ってきたものの、幸いにもタートルネックの下には番防止用の首輪があるのだ。
 フォルカはすぐに理性を取っ払い、男の嚙み込みを欲の材料に変換した。男はタートルネックと首輪を引きちぎるように歯で噛みながら、フォルカの後孔を犯し続けた。
「はぁっ、あっ、ンッ、もう、イク……っイク……っ!」
 同時に内壁を擦る抽挿のスピードが、より激しくなった。耳元に聞こえる男の荒んだ呼吸音も、間隔が短くなっていく。
「……イケよ」
 耳元で低い声に囁かれた瞬間、無意識のうちに男を締め上げてしまった。
 激しい絶頂が全身を駆け巡る。下半身の緊張が一気にほどける。
「あっ……ンああぁあっ!」
 声を抑えられない。男の熱と形が痛いくらいに愛おしい――。
 男は首輪に覆われたフォルカのうなじにかぶりついたまま、後ろから口を覆った。声を抑えるためだろう。苦しいけど、今の自分にはそれさえも興奮を煽るものにしかならなかった。
 波のように断続的に襲ってくる絶頂に、ビクビクと全身を震わせる。フォルカは自分の口を覆う男の手をぺろりと舐めた。汗のしょっぱさが舌に乗る。
 舌の誘いに、男の中指と薬指が口内へと入ってくる。熱く熟れた舌を男の指に弄ばれているうちに、再び淫らな衝動が下半身に集まっていくのを感じた。
「キス、したい……っ」
 指が口腔から引き抜かれたあと、フォルカは自然と口を衝いていた。
 応えるように、男の指がフォルカの顎を掴んだ。くいっと後ろを振り向かされる。楽な体勢とはいえなかった。
 落とされたのは唇。さっきまでの行為の延長とは思えないほどの、優しいキスだった。

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