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前の戯れ
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配偶者が二十一人もいると、様々な愛の形を間近で見かける。目の前に本人がいるのに、「どうやったら、落とせるのか?」と、妻に聞いてくる妻。
本人に聞こえているんだから、普通に言いに行けばいいではないか。と思う。それでも、旦那全員との間に子供がいる私に相談をしにきたりする。
見えているところでこうなのだから、知らないところでは、それぞれ相手の気を引くための策は繰り広げられているのだろう。
去年の夏休み。我が家のプールでの孔明の格好が、誰がどう見てもセックスアピールしているのが丸わかりだったように。
水着は着て、白いシャツを羽織っているのだが、裾が水着の丈と同じで、ボタンが真ん中の一つぐらいしか止めていない。しかも、子供を抱き抱えていて、上は動かないのに、歩くと裾がぴらぴらと揺れるものだから、どうやっても腰元へ視線が釘付けになるではないか! と叫びたくなった。天才軍師め、夫婦の間で戦略を練って。
と、まあ、こんな感じだ。そうして、旦那たちのノロケ話も多々ある。これはペアが決まっている。
光命と夕霧命――
仲良く話していると思っていると、突然始まるのだ。
「お前はあの時もそうだった」
「あなたもではありませんか」
「お前は昔から変わらん」
「あなたも変わらないではないですか」
永遠、言い合っているのだ。しかも、声を荒げることもなく、真剣な顔で。まるで子供の喧嘩だ。そうして、妻はいつも思うのだ。
いつのどの話なの?
ふたりだけの暗号だよね。
そのうち、気づくとふたりで、どこかに消えているのである。さっきのは、前戯だったのかもしれない。
孔明と張飛――
このふたりも結構ケンカしているらしい。
孔明は張飛のこととなると、子供みたいに喜怒哀楽が激しくなる。外モードと、別人かと思うほどだ。
大抵は、孔明だけが激怒していて、張飛はまったく気にしていない。そんなやり取りだ。
それなのに、気づくとふたりともいなくなっているのだ。だから思うのだ。さっきのは前戯だったのだろうと。
月命と明引呼――
女性的であるのは月命。野郎どもに慕われてやまない兄貴が明引呼。
対照的なふたり。
初めてのデートに出かける時、月命が言っていた。
「明引呼には男らしくいて欲しいんです~。冗談ばかり言っていないで」
ん? 月さんも男性なんだけど、どういう理屈?
というか、お兄さんと似ているような、憧れがあるのかな? 明引呼に。
そうして、ある日、職場の飲み会で明引呼の帰りが遅くなると決まっていて、歯でも磨こうとしたら、お化けみたいに突然、月命が現れた。
「僕のことを忘れてしまったんでしょうか~?」
「忘れるわけないじゃないですか。愛する夫なんですから」
「そうでしょうか~? 連絡すると約束したんです」
月命は完全に拗ねていた。三百億年も生きているから、大人なのかなと思ったが、結構子供っぽいところがある。
「社長だけ抜けて、電話するわけにはいかないんですよ。一般企業というものは。学校とは違うんです」
と話していると、当の本人が帰ってきた。
「明、月さんが忘れてしまったのかって、言ってたよ」
明引呼は月命を抱き寄せて、
「忘れるわけねぇだろ?」
「うふふふっ」
怪しく、月命が含み笑いをすると、ふたりで目の前から消え去った。
だ~か~ら~!
絶対にこれは、前戯に違いない!
なぜ、妻を置いて――いや見せつけて、去っていくのだ~!
2020年3月1日、日曜日
本人に聞こえているんだから、普通に言いに行けばいいではないか。と思う。それでも、旦那全員との間に子供がいる私に相談をしにきたりする。
見えているところでこうなのだから、知らないところでは、それぞれ相手の気を引くための策は繰り広げられているのだろう。
去年の夏休み。我が家のプールでの孔明の格好が、誰がどう見てもセックスアピールしているのが丸わかりだったように。
水着は着て、白いシャツを羽織っているのだが、裾が水着の丈と同じで、ボタンが真ん中の一つぐらいしか止めていない。しかも、子供を抱き抱えていて、上は動かないのに、歩くと裾がぴらぴらと揺れるものだから、どうやっても腰元へ視線が釘付けになるではないか! と叫びたくなった。天才軍師め、夫婦の間で戦略を練って。
と、まあ、こんな感じだ。そうして、旦那たちのノロケ話も多々ある。これはペアが決まっている。
光命と夕霧命――
仲良く話していると思っていると、突然始まるのだ。
「お前はあの時もそうだった」
「あなたもではありませんか」
「お前は昔から変わらん」
「あなたも変わらないではないですか」
永遠、言い合っているのだ。しかも、声を荒げることもなく、真剣な顔で。まるで子供の喧嘩だ。そうして、妻はいつも思うのだ。
いつのどの話なの?
ふたりだけの暗号だよね。
そのうち、気づくとふたりで、どこかに消えているのである。さっきのは、前戯だったのかもしれない。
孔明と張飛――
このふたりも結構ケンカしているらしい。
孔明は張飛のこととなると、子供みたいに喜怒哀楽が激しくなる。外モードと、別人かと思うほどだ。
大抵は、孔明だけが激怒していて、張飛はまったく気にしていない。そんなやり取りだ。
それなのに、気づくとふたりともいなくなっているのだ。だから思うのだ。さっきのは前戯だったのだろうと。
月命と明引呼――
女性的であるのは月命。野郎どもに慕われてやまない兄貴が明引呼。
対照的なふたり。
初めてのデートに出かける時、月命が言っていた。
「明引呼には男らしくいて欲しいんです~。冗談ばかり言っていないで」
ん? 月さんも男性なんだけど、どういう理屈?
というか、お兄さんと似ているような、憧れがあるのかな? 明引呼に。
そうして、ある日、職場の飲み会で明引呼の帰りが遅くなると決まっていて、歯でも磨こうとしたら、お化けみたいに突然、月命が現れた。
「僕のことを忘れてしまったんでしょうか~?」
「忘れるわけないじゃないですか。愛する夫なんですから」
「そうでしょうか~? 連絡すると約束したんです」
月命は完全に拗ねていた。三百億年も生きているから、大人なのかなと思ったが、結構子供っぽいところがある。
「社長だけ抜けて、電話するわけにはいかないんですよ。一般企業というものは。学校とは違うんです」
と話していると、当の本人が帰ってきた。
「明、月さんが忘れてしまったのかって、言ってたよ」
明引呼は月命を抱き寄せて、
「忘れるわけねぇだろ?」
「うふふふっ」
怪しく、月命が含み笑いをすると、ふたりで目の前から消え去った。
だ~か~ら~!
絶対にこれは、前戯に違いない!
なぜ、妻を置いて――いや見せつけて、去っていくのだ~!
2020年3月1日、日曜日
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