明智さんちの旦那さんは10人いるそうで……

明智 颯茄

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恐竜展 その1

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 最近、妻は家の外へ出ることを積極的にしている。この間は、家の前の道を走っている路線バスに乗って、ご近所へ行った。

 そうして今日、電車に乗ってみようと思った。最寄駅は、帝国センター駅。各地へ向かう電車がたくさん出ている、首都の中でも中心的な駅だ。

 どこへ行くかと考えていると、子供たちが臨海地区で、恐竜展をやっていると言う。恐竜といえば、旦那さんたちがいる世界では、人と同じように話し、生活している。しかし、絶対的な数が少ないらしい。人気の人々だ。

 そこへ家族全員で行くこととなった。そうなると、車を何台も出すことになり、結局、観光バスをチャーターしたほうが何かと便利なのだ。

 ということで、いつもお願いしているバス運転手に来ていただいた。まずはベビーカーをバスへ乗せる。子供の荷物を乗せる。

 五歳未満の子供たちが先に座席に乗る。次に五歳以上の子供が乗る。そうしているうちに、隣に住む弟の#帝河__ひゅーが___#がやって来た。

「よう! 姉ちゃん!」
「あれ?」

 びっくりしたが、他の弟や妹もいて、父上と母上もいた。そこでわかった、何が起きているのか。

「誘われた?」
「おう」

 うちの子が、おじいちゃんたちも一緒にということで呼んだようだ。みんなの荷物を積んで、大人たちも乗り込む。

 そうして、いざ出発。どうやって行くのかと思っていたが、門を抜けて、横切っている道路も通り過ぎて、断崖絶壁へバスは進み、

「えぇっ!?」

 と驚いていると、隣に座っていた光命ひかりのみことが、

「空を飛んでゆくのです」
「あぁ~、そういうことですか」

 地面を走っているバスは、路線バスですぐに止まるから、地面を走っているそうだ。遠い距離を行く車は空中道路を通るらしい。

 景気が全て空。窓際ではないから、街並みはよく見えないが、重力もさほど感じることもなく、進んでいった。

 そうして、駅へついて、切符を買う。ここも便利で、どんなシステムになっているのかわからないが、

「この枠の中に入ってください」

 という、アナウンスが流れると、上から半透明の幕が降りて来て、それを浴びれば、改札を通ることができるらしい。一人ずつ買う必要もなければ、小さな切符をなくすこともない。

 そうして、改札を通ると自動的に、乗りたい電車のホームへゆく。いきなり景色が変わった。用がある人は違うのかもしれないが、すぐに電車に乗る人には、このシステムは便利だと思った。混んでいる構内を歩かなくて、スムーズに電車に乗れる。

 すぐに電車はやって来た。ベビーカー専用の車両があるらしく、奥さんたちは小さい子供とともにそっちへ乗り込む。

 混み過ぎてもおらず、人が少な過ぎもしない車両に乗って、妻もいざ出発。また驚く。電車が揺れない。駅に停車しても、全く揺れない。

 重力が十五分の一というのは、こんなにも快適に動けるのだなと思った。電車の中のテレビにも恐竜展の広告が入っていた。テレビでもCMをやっていたと言う。

 混んでいるのでは?

 駅へ着く前になると、体のうちから微かな音が聞こえてきた。

 ピ、ピ、ピ……。

 到着駅を知らせる切符の機能らしい。そうして、いざ会場へ。それなりに混んではいたが、スムーズに案内をされる。ひと家族に案内役の人が一人ついて、人数と昼食の予約をするかということを聞かれた。

 うちは人数が多い。全員来ているわけではないが、百人近いため、レストランはビュッフェ式ということになった。

 子供たちの昼寝のスペースもきちんと用意されていて、お昼寝の心配もなく、展覧会へ行くこととなった。パンフレットを見て進んでゆく。

 途中にショーのようなものがあり、質問コーナーなども設けられていた。しかも、同じ学校の恐竜の子が、今日きたお友達としてステージに上がっていた。子供たちは誰々だと大騒ぎだった。

 そうして、握手会などもあり、妻も並んでいたが、話に夢中ですっかり握手をするのを忘れ、サインだけを人数分もらって来た。

 しかし、その会が終わった恐竜の方がわざわざ、握手をしていないと言って、ベンチに座っていた私に声をかけてくださった。優しい方々だ。

 季節は冬へと向かうわりには、暖かな一日でソフトクリームを食べて、昼食の時間までぼんやりとベンチでみんなで風に吹かれていた。

 そうして、ビュッフェの会場へとやって来た。白いテーブルクロスを敷いた長細いテーブルの両脇にずらっと並ぶ、百人分の食卓。

 家と同じだなぁ~。

 当たり前のことを言いながら、荷物を椅子へ置くとそれぞれみんな取りに向かった。妻も料理の間をウロウロする。他の人たちにぶつからないように。

 そうして、見つけてしまった。太い骨に刺さった肉の塊を。これはぜひと思い、一つとって、瞬間移動でテーブルに置く。

 子供たちが食べたがった恐竜アイス。どんなものなのかという話をしたていたが、恐竜の形でいろいろな味があるもの。しかし、ここからが素晴らしい。フルーツソースが選べる。それは、恐竜が昔口にしていたものが原材料。

 うちは人数が多いし、子供たちが楽しみにしていたから、全ての組み合わせで持っていこう。

 次、次……。最後の皿を持って、体ごとテーブルへ瞬間移動。

 お肉を子供たちが食べやすいようにと、切り分けて、みんなが戻ってき始めた。しかし、いただきますをする前に、ママが取る前に、肉は見事に消え去った。

 みんな食べようと思っていたのに、みんなだけで・・・食べるになってしまった。食事が始まった直後、肉を再び取りに行く妻だった。

 そこで見てしまった。斜め向こうの壁がふすまみたいになっていて、子供が布団の上で遊んでいるのを見た。

 あれ? 眠る場所って、レストランの中にあるの?

 家族のいる食卓へ振り返ると、確かに左側が襖の並びだった。

「どうしたの? ママ」
「お昼寝する場所って、ここ?」
「そうだよ」
「家もすぐそばにお布団があったら便利なのにね」

 さすが小学生の人口が多いだけあって、子供に対するサービスがバッチリだ。しかし、

「いやいや、家が普通で、これがありがたいことなの」

 お昼を食べ終わり、昼寝まで時間を待っていると、夕霧命ゆうぎりのみことと夕霧がやって来た。ジョークではない、親子だ。

「ママ?」

 妻と光命で話を聞く。

「どうしたの?」
「僕たちが眠ってる間に、パパとママたちで大人のエリアに行って来たらどうかな?」
「あったっけ? 大人のエリアなんて……」

 パンフレットを取り出して、よく見ようとすると、半分に折れていた。下の部分に、大人のエリアがあった。ママが見ていたのは、ほんの一部にしか過ぎなかった。

 気を遣ってくれているのか。

 と思い、

「じゃあ、交代で誰かを置いて、見てくるね」

 ということで、夫婦の恐竜展へ突入。

 2019年10月25日、金曜日
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