明智さんちの旦那さんは10人いるそうで……

明智 颯茄

文字の大きさ
上 下
54 / 80

ここにいない夫の話

しおりを挟む
 月命るなすのみことの盆栽と庭園の問題は、今日庭を工事して、彼専用の庭園を作ったと言うことで終結を迎えた。

 母屋から庭先へと続く縁側を作ることとなったが、途中に立派な木や花が植っていて、それを避けるという方法で、最新の技術が作られた。

 家の中からは廊下が縁側までつながっているが、外からはその部分は何もなく、庭の景観を壊すこともなく、縁側だけがぽかりと庭園に浮かぶようにできているというものだ。空間を歪めてあるらしい。

 月命は以前、月に住んでいたが、結婚を機に首都にあるこの家へと引っ越して来た。前の家は売りに出していたが、もうすでに他の人の手に渡っていた。

 庭園の話を聞いたが、それも一緒に売ってしまったと言っていた。盆栽は友人などにほとんど渡していまい、残りが前に書いた3つの鉢だった。

 それでも、家に庭園を作るとは言わない月命。他の配偶者や子供たちの好きな洋風の庭を壊してまで作りたくなかったのだろう。

 月命と一緒に昼食をとっていると、明引呼あきひこがやって来て、

「てめぇ、またごちゃごちゃ余計なこと考えやがって。オレが注文してやるから、庭園作れや」

 そうやって、夕方15時に、業者が来てあっという間に庭園を作り、盆栽の鉢もぎ木も庭へ持っていかれた。

 夕食を終えて、月命は一人縁側に座って、緑茶を飲みながら、ライトアップされた庭を眺め、今までの日々を脳裏でなぞっているようだった。

 妻が部屋へそっと戻ると、明引呼がやって来た。

「縁側に行かないの?」
「一人で考えたいことあんだろ?」
「そうかもね」

 300億年生きている人の人生とはどんなものなのだろうか。放浪の旅をしていた時もあったと、前話していた。

 ここにいない夫のことを、夫婦で考える。明引呼は黄昏た感じで、

「女の夢叶えてりゃよ、男はいいって思ったけどよ」
「うん」

 妻の夢を叶えてくれた、熱い夫である。

「男の夢も叶えねぇといけねぇなって思ったぜ」
「そりゃそうだ。うちはバイセクシャルで性別は関係ないんだから。それに気づけたいい日だった。そういうことだね」
「あれの世界は広いんだよ。オレが思ってるよりもよ」

 結婚して同じ家に住んでいても、好きな夫のことを見過ごすことがある。明引呼は思う。自分とは違って、表情にも出さず、言葉にもせず、ただただ耐えてゆく、月命が本当は何を思い、考えているのかと。

「でも、まぁ。それはこれからゆっくりでいいんじゃないかな?」
「だな」

 しばらくすると、明引呼は月命のそばへ瞬間移動していった。

「おや~? 来たんですか~?」
「来たんですかじゃねぇよ。寂しい顔してたくせによ」

 そうして、縁側にあぐらをかいた明引呼の肩に、月命はもたれかかった。

 2019年10月22日、火曜日
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

シチュボ(女性向け)

身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。 アドリブ、改変、なんでもOKです。 他人を害することだけはお止め下さい。 使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。 Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

処理中です...