明智さんちの旦那さんは10人いるそうで……

明智 颯茄

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奥さんたちからの質問

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 最近、様々な変化が環境にも心にもあって、ようやく、奥さんたち全員の名前を聞いた。

 改めて書いておこう。名前の最後につく姫は省略する。結婚した順。

 倫礼りんれいれんの元妻。ファンタジー小説家。
 知礼しるれ光命ひかりのみことの元彼女、ノンフィクション作家。
 覚師かくし夕霧命ゆうぎりのみことの元妻、小学校の歴史教師。
 莎理ざんり焉貴これたかの元妻、小学校の国語教師。
 楽主らくす月命るなすのみことの元妻、小学校の数学教師。
 紅朱凛あしゅりゃん孔明こうめいの元彼女、孔明の助手。
 皇閃すめひら明引呼あきひこの元妻、小学校の数学教師。
 花梨輪かりわん貴増参たかふみの元妻、小学校の理解教師。
 陽和師ひおし独健どっけんの元妻、小学校の数学教師。
 りあん張飛ちょうひの元妻、小学校の家庭科教師(裁縫)


 奥さんたちに最近よく聞かれる。

「どうして、あの人のこと好きになったの?」

 元々の旦那さんと他の奥さんたちの恋愛模様を、たぶん、他の奥さんたちはそれぞれ話したのだろう。お互いの元旦那をどうやって好きになったのかと。

 しかし、妻は困るのである。なぜなら、恋愛鈍感だからだ。かなりひどいのだ。

 最初は自覚症状はなかった。だが、ある時、人に指摘されて、言われてみればそうかもと納得した。しかも、タチがよくなく、

 自分が誰かを好きな気持ちに気づかないのではなく。
 誰かが自分に想いを寄せていることに、気づかないのだ。

 申し訳ないと思った。どれだけの気持ちを今まで傷つけてしまったのかと思って。

 さらには、恋愛に興味がない。女子力ゼロなのである。

 恋愛しなくても生きていける――。

 と、本気で思っているくらいだ。初恋も人より20年も遅い話で、蓮に会った時が最初である。

 それまでは、恋をしたと思っていても、あとで振り返ると、思い込み、もしくは恋に恋をしていたと気づくのだ。

 恋愛ものの物語を読んでもみても、さっぱりわからなかった。

 切なくなる?
 ドキドキする?
 一緒にいたい?

 そんなのないなぁ~。

 だから、恋愛をしたことがないのだと、ある時気づいたのだ。

 そんな妻の、最後の結婚は、自分の意思とは関係なく、まわりが勝手に結婚してゆくという珍事に見舞われ、今は夫婦としてやっている。

 ありがたいことに、旦那さんたち10人は、妻との子供を是非にと望んで、そばへやってくるのだが、私としては、

 好きにはなっていないのだ。
 好きになろうと無理に努力するものでもないだろう。
 じゃあ、子供だけ作ればいいじゃないか。

 最後のこれができない。旦那さんたちの生きている世界では。子供が生まれる条件の第一に、

 真実の愛――。

 がないと、行為をしても、絶対に生まれないのである。というか、真実の愛がないのに、関係を持つ人は誰もいない。

 しかし、ありがたいことに、妻は旦那さんたち10人との間に、それぞれ子供が一人以上はいる。

 そういうわけで、奥さんたちは聞きたいのだ。妻がどうやって、自分の元旦那さんたちを好きになったのかを。言い逃れはできない。子供が生まれている以上、妻にも気持ちがあるのだから。

 最初、月命の元妻、楽主に聞かれた。しかし、

 月さんを、どうやって好きになったのか?
 ……わからないなぁ。

 楽主は何も言わずに去ってゆく。そうして、焉貴の元妻、莎理も同じことを聞いてきた。

 焉貴さんを、どうやって好きになったのか?
 ……わからないなぁ。

 とぼけているわけでもなく、真面目に考えているのだ。そうして、今、焉貴に言われている。

「お前、そういうとこ、蓮とそっくりだよね」

 蓮も恋愛鈍感で、焉貴と月命にプロポーズをしに行ったのは、好きになってからずいぶん時が経ってからで、しかも、妻に言われてからだった。おそらく、蓮の心の中は、

 そうか。
 愛しているから、気になっていたんだな。

 2019年10月17日、木曜日
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