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孔明、配偶者全員から反対される
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仕事人間な孔明大先生。
陛下から直々のご命令ということもあり、先週1週間家を空けて、遠くの宇宙まで講演に行って帰ってきた。
そうして、今日の昼食時。
「今度、いつ仕事に行くの?」
「来週かなぁ~?」
「パパ、またいないの?」
孔明の子供である尋が聞き返しているのを見て、妻は表情を曇らせた。
1週間しか置いてなくて、また行くの早くない?
1年が1年の長さで、いつか死ぬのなら、急ぐのもわかるけど、1年が687年もあって、永遠に続く世界に旦那さんたちは生きているわけで、少々仕事を詰めすぎなのでは? と思った。
すると、孔明が、
「ボクが1年間仕事でいなくなったらどう思う?」
1年間セミナーで遠くの宇宙へ行くから、結婚しようと思って、したわけだ。しかし、調子が良くなくなって、中止して戻ってきた。それは、孔明の心が寂しいからやめたのかと思っていたが、違ったみたいだ。命令に忠実に従いたく、やはり仕事が好きなようだった。
問われている。答えなくてはいけない。
「家族だから、誰がいなくなっても寂しいと思うよ。だけど、孔明さんが仕事が好きなのはわかってるから、行くと言えば、誰も止めないと思う」
夕霧と親子セミナーに出かけている光命の代わりに、妻の隣にいた夫に孔明の聡明な瑠璃紺色の瞳が向いた。
「夕霧はどう思う?」
「独り身と家族がいるのは違う」
夕霧命は日本刀で藁人形を斬るようにばっさり切り捨てた。孔明はただただ、冷静な頭脳の中に意見をしまう。そうして、次に、リビングにいた月命に声をかけていた。彼は、妻よりも旦那よりも、子供が一番の人である。
「幼い子供には両親の存在が必要不可欠です。僕は断固として反対です」
はっきりと意見されていた。次に、育児休暇を取っている貴増参のところへ行った。
「僕はうなずけません」
やはり反対にあっていた。そのあと、高校教師の焉貴のところに行って、
「そう。お前どう思ってんの? それ」
ビリビリと畏敬を感じるような雰囲気が漂い、先を聞かなくても、教師モードで説教されるのが容易に想像できた。
しばらく放っておいた。時間は過ぎて、夕方四時。帰宅した光命がそばに来た。そこへ、孔明が現れて、同じことを聞いた。すると、光命は、
「両親が同じ過ちをしてはいけないとよく言っていましたよ」
何の話をしているのか、私はすぐにわかった。しかし、孔明にはまだ話していないようで、
「どういうこと?」
「…………」
光命は少し言いづらそうで、代わりに私が話し出した。
「光さんにはお姉さんがいたんだよ」
「ん……」
旦那の孔明なら、もうここで話がおかしいと思ったはずだ。なぜなら、光命には姉はいないのだから。
「あの悪政の中で生まれて、18歳まで一気に成長した。でも、お父さんとお母さんは寝ることも許されず働きづくめだった。お姉さんは親の愛情を知らないまま、大人として働いてた。でも、陛下に統治が変わって、心が欠けていて、一人前の大人として生きていけないから、親が今までの記憶を預かって、5歳からやり直してるんだよ。だから、今は光さんの妹の一人。それを、光さんは言ってるんだよ」
「ん~」
感情を冷静でデジタルな頭脳で完全にコントロールしている孔明はただただ相づち。ただいま情報収集中。孔明が間違っているとかそういうことではなく、反対が多いというだけの認識だ。
そこへ、明引呼がやってきた。
「明~? 聞いて」
孔明から話を聞くと、兄貴はしゃがれた声で思いっきり突っ込んだ。
「てめぇ、まだ諦めてなかったのかよ? そういう働き方はもう古ぃんだよ。家族ほったらかして仕事するなんてよ。一体いつの時代の話だよ」
「ん~」
可愛く首を傾げている孔明に、妻は聞いた。
「あと誰に聞いてないの?」
「独健」
「張飛さんは?」
「張飛も考えた方がいいって」
「小学校の先生だからね、張飛さん」
子供の味方だ。孔明が留守にした先週1週間で、子供たちの言動にも色々と影響が出ているのを見ているはずだ。うなずかないだろう。
「独健さんも賛成しないと思うよ?」
「どうして?」
「独健さんも18歳まで一気に成長して、両親は働きづくめで、親の愛情を知らないまま大きくなってるから、よくわかってると思うよ。子供の気持ちがどんなに寂しいか。しかも、独健さん、感情の人だから、余計止めるよ」
戦争ばかりの時代に生まれた孔明は、両親の愛をよく知らない。同じ親バカの光命は両親が自分にしてくれたことを、子供にも応用しているが、孔明にはその情報が圧倒的に足りない。それを今から学ぶのも、孔明の心の成長になるのだろう。
一人漏れている夫がいる。それは蓮。しかし、妻は簡単に予測がつく。こう言ったはずだ。
「俺に聞くな。お前で考えろ」
蓮は本当の両親がいない。しかも、べったりな関係には決してならないし、厳しい性格だ。大人の孔明なら、自分で判断して責任を取れるだろうと、信頼しての言葉である。
そうして、眠る前に、
「颯ちゃん?」
孔明は戻ってきた。
「ん?」
「ボク、行かない。尋ちゃんとみんなのそばにいる」
春風みたいに微笑んでいたが、妻はきちんと見抜いていた。
「試したでしょ? みんなのこと。最初から行かない可能性が高かったのに、わざと聞いた。みんなから情報を得ようとしてね。ところで、奥さんたちは何て言ったの?」
「みんな反対」
孔明はすでに成長していたのだ。
「先週行ってきた宇宙では、みんなどんな感じだったの?」
「家族のこととても大切にしてたよ。それが素敵だと思った」
大先生の仕事は、1、2ヶ月に一度行うというスタンスになるようだ。
2019年9月4日、水曜日
陛下から直々のご命令ということもあり、先週1週間家を空けて、遠くの宇宙まで講演に行って帰ってきた。
そうして、今日の昼食時。
「今度、いつ仕事に行くの?」
「来週かなぁ~?」
「パパ、またいないの?」
孔明の子供である尋が聞き返しているのを見て、妻は表情を曇らせた。
1週間しか置いてなくて、また行くの早くない?
1年が1年の長さで、いつか死ぬのなら、急ぐのもわかるけど、1年が687年もあって、永遠に続く世界に旦那さんたちは生きているわけで、少々仕事を詰めすぎなのでは? と思った。
すると、孔明が、
「ボクが1年間仕事でいなくなったらどう思う?」
1年間セミナーで遠くの宇宙へ行くから、結婚しようと思って、したわけだ。しかし、調子が良くなくなって、中止して戻ってきた。それは、孔明の心が寂しいからやめたのかと思っていたが、違ったみたいだ。命令に忠実に従いたく、やはり仕事が好きなようだった。
問われている。答えなくてはいけない。
「家族だから、誰がいなくなっても寂しいと思うよ。だけど、孔明さんが仕事が好きなのはわかってるから、行くと言えば、誰も止めないと思う」
夕霧と親子セミナーに出かけている光命の代わりに、妻の隣にいた夫に孔明の聡明な瑠璃紺色の瞳が向いた。
「夕霧はどう思う?」
「独り身と家族がいるのは違う」
夕霧命は日本刀で藁人形を斬るようにばっさり切り捨てた。孔明はただただ、冷静な頭脳の中に意見をしまう。そうして、次に、リビングにいた月命に声をかけていた。彼は、妻よりも旦那よりも、子供が一番の人である。
「幼い子供には両親の存在が必要不可欠です。僕は断固として反対です」
はっきりと意見されていた。次に、育児休暇を取っている貴増参のところへ行った。
「僕はうなずけません」
やはり反対にあっていた。そのあと、高校教師の焉貴のところに行って、
「そう。お前どう思ってんの? それ」
ビリビリと畏敬を感じるような雰囲気が漂い、先を聞かなくても、教師モードで説教されるのが容易に想像できた。
しばらく放っておいた。時間は過ぎて、夕方四時。帰宅した光命がそばに来た。そこへ、孔明が現れて、同じことを聞いた。すると、光命は、
「両親が同じ過ちをしてはいけないとよく言っていましたよ」
何の話をしているのか、私はすぐにわかった。しかし、孔明にはまだ話していないようで、
「どういうこと?」
「…………」
光命は少し言いづらそうで、代わりに私が話し出した。
「光さんにはお姉さんがいたんだよ」
「ん……」
旦那の孔明なら、もうここで話がおかしいと思ったはずだ。なぜなら、光命には姉はいないのだから。
「あの悪政の中で生まれて、18歳まで一気に成長した。でも、お父さんとお母さんは寝ることも許されず働きづくめだった。お姉さんは親の愛情を知らないまま、大人として働いてた。でも、陛下に統治が変わって、心が欠けていて、一人前の大人として生きていけないから、親が今までの記憶を預かって、5歳からやり直してるんだよ。だから、今は光さんの妹の一人。それを、光さんは言ってるんだよ」
「ん~」
感情を冷静でデジタルな頭脳で完全にコントロールしている孔明はただただ相づち。ただいま情報収集中。孔明が間違っているとかそういうことではなく、反対が多いというだけの認識だ。
そこへ、明引呼がやってきた。
「明~? 聞いて」
孔明から話を聞くと、兄貴はしゃがれた声で思いっきり突っ込んだ。
「てめぇ、まだ諦めてなかったのかよ? そういう働き方はもう古ぃんだよ。家族ほったらかして仕事するなんてよ。一体いつの時代の話だよ」
「ん~」
可愛く首を傾げている孔明に、妻は聞いた。
「あと誰に聞いてないの?」
「独健」
「張飛さんは?」
「張飛も考えた方がいいって」
「小学校の先生だからね、張飛さん」
子供の味方だ。孔明が留守にした先週1週間で、子供たちの言動にも色々と影響が出ているのを見ているはずだ。うなずかないだろう。
「独健さんも賛成しないと思うよ?」
「どうして?」
「独健さんも18歳まで一気に成長して、両親は働きづくめで、親の愛情を知らないまま大きくなってるから、よくわかってると思うよ。子供の気持ちがどんなに寂しいか。しかも、独健さん、感情の人だから、余計止めるよ」
戦争ばかりの時代に生まれた孔明は、両親の愛をよく知らない。同じ親バカの光命は両親が自分にしてくれたことを、子供にも応用しているが、孔明にはその情報が圧倒的に足りない。それを今から学ぶのも、孔明の心の成長になるのだろう。
一人漏れている夫がいる。それは蓮。しかし、妻は簡単に予測がつく。こう言ったはずだ。
「俺に聞くな。お前で考えろ」
蓮は本当の両親がいない。しかも、べったりな関係には決してならないし、厳しい性格だ。大人の孔明なら、自分で判断して責任を取れるだろうと、信頼しての言葉である。
そうして、眠る前に、
「颯ちゃん?」
孔明は戻ってきた。
「ん?」
「ボク、行かない。尋ちゃんとみんなのそばにいる」
春風みたいに微笑んでいたが、妻はきちんと見抜いていた。
「試したでしょ? みんなのこと。最初から行かない可能性が高かったのに、わざと聞いた。みんなから情報を得ようとしてね。ところで、奥さんたちは何て言ったの?」
「みんな反対」
孔明はすでに成長していたのだ。
「先週行ってきた宇宙では、みんなどんな感じだったの?」
「家族のこととても大切にしてたよ。それが素敵だと思った」
大先生の仕事は、1、2ヶ月に一度行うというスタンスになるようだ。
2019年9月4日、水曜日
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