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ブラック企業
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旦那さんは10人いるが、いわゆる一般企業に勤めをしている人は、明引呼、一人しかいない。これも以前は少々違った。彼は大農園の主だった。気ままな農家だったのだ。
しかし、バイセクシャルの複数婚のお陰で、大繁盛になり、今では、孔明の知恵を借りて組織改革をし、大企業となった。明引呼は社長である。
だが、その前は大変だったようだ。結婚してから、一日も休みがないほど、忙しく。兄貴と呼ばれ、慕われている明引呼。部下に休みを取らせるために、自分がカバーしていたらしい。
ブラックだなと思う。
農園があるのは、別の惑星らしい。瞬間移動で出勤するそうだ。
「お昼ご飯どうしてたの?」
「弁当だろ」
「そうなんだ」
明引呼の元々の奥さんは、書物が納められている施設の番人だった。眠る暇もなく働きづくめの数千年間。当然、炊事などできないだろう。
「じゃあ、奥さん、一生懸命、覚えて作ってくれたんだね」
そうしたら、
「オレに惚れてんだから、当たり前だろ」
だって。仲がいいね。
「部下の人たちは、お弁当じゃないよね?」
「一緒だろ?」
「え? だって、料理が得意じゃない家庭もあるね? 外食だらけでも、仲良くやってる人もいるし。だいたい独身の人はどうするの?」
「店がねぇからな」
「どういうこと?」
「惑星丸々一個、農園なんだよ」
「社員食堂は?」
「そんなもん、前はあるわけねぇだろ」
「お昼ご飯の選択肢なし……。買い物は隣の惑星に行け!」
ブラックだなぁ~。
「よくみんな辞めないね。感謝しないといけないよね?」
「だな」
ある日、明引呼の瞬間移動で、書斎へ連れてこられた。妻はテーブルの上を見て、あきれて物が言えなかった。
「何ですか? この紙の山は。これじゃ、どこに何があるかわからないでしょ?」
「細けぇこと言うなよ」
作業効率、落ちまくりである。
「秘書雇ったほうがいいんじゃないの?」
「てめぇがやれよ」
いかにも慣れていない様子で、PCの前に座った明引呼の前で、妻は頭をぽりぽりとかいた。
「いや~、私は掃除が苦手で……」
「オフィスワークやったことあんだろ?」
妻の過去は言わなくても、旦那さんたちにはバレバレなのである。
「あるよ。ファイリングとか、お茶出しとか……色々」
「できんじゃねぇか」
「でも、他にやることあるんだよね」
秘書はやったことない。気がつくタイプじゃないからね。というか、気づいてもやりたくないのだ。次々に人に手を差し伸べることになり、忙しさで撃沈されてしまうのである。
「週に一回でいいだろ」
「忘れそうだ」
記憶力崩壊している妻だから……。
「どっかに書いておけよ」
「じゃあ、リマインダーに登録しておこう。いつがいいの?」
「仕入れとか考えっと、空いてんのは水曜だな」
「水曜日ね。OK!」
そうして、翌週。月命が私の部屋へやって来た。
「倫、明引呼とデートの日が決まりました~」
プロポーズして、されてのふたり。晴れて、一緒に出かけられて、妻も大喜びだ。
「よかったですね。いつですか?」
「来週の水曜日です」
「何っ!?」
妻が働いている間に、デートに行くとはっ!
ブラックである。
でも、まぁ、仕方がないね。忙しくない日が水曜日だから、デートもその曜日になるよね。
2019年8月24日、土曜日
しかし、バイセクシャルの複数婚のお陰で、大繁盛になり、今では、孔明の知恵を借りて組織改革をし、大企業となった。明引呼は社長である。
だが、その前は大変だったようだ。結婚してから、一日も休みがないほど、忙しく。兄貴と呼ばれ、慕われている明引呼。部下に休みを取らせるために、自分がカバーしていたらしい。
ブラックだなと思う。
農園があるのは、別の惑星らしい。瞬間移動で出勤するそうだ。
「お昼ご飯どうしてたの?」
「弁当だろ」
「そうなんだ」
明引呼の元々の奥さんは、書物が納められている施設の番人だった。眠る暇もなく働きづくめの数千年間。当然、炊事などできないだろう。
「じゃあ、奥さん、一生懸命、覚えて作ってくれたんだね」
そうしたら、
「オレに惚れてんだから、当たり前だろ」
だって。仲がいいね。
「部下の人たちは、お弁当じゃないよね?」
「一緒だろ?」
「え? だって、料理が得意じゃない家庭もあるね? 外食だらけでも、仲良くやってる人もいるし。だいたい独身の人はどうするの?」
「店がねぇからな」
「どういうこと?」
「惑星丸々一個、農園なんだよ」
「社員食堂は?」
「そんなもん、前はあるわけねぇだろ」
「お昼ご飯の選択肢なし……。買い物は隣の惑星に行け!」
ブラックだなぁ~。
「よくみんな辞めないね。感謝しないといけないよね?」
「だな」
ある日、明引呼の瞬間移動で、書斎へ連れてこられた。妻はテーブルの上を見て、あきれて物が言えなかった。
「何ですか? この紙の山は。これじゃ、どこに何があるかわからないでしょ?」
「細けぇこと言うなよ」
作業効率、落ちまくりである。
「秘書雇ったほうがいいんじゃないの?」
「てめぇがやれよ」
いかにも慣れていない様子で、PCの前に座った明引呼の前で、妻は頭をぽりぽりとかいた。
「いや~、私は掃除が苦手で……」
「オフィスワークやったことあんだろ?」
妻の過去は言わなくても、旦那さんたちにはバレバレなのである。
「あるよ。ファイリングとか、お茶出しとか……色々」
「できんじゃねぇか」
「でも、他にやることあるんだよね」
秘書はやったことない。気がつくタイプじゃないからね。というか、気づいてもやりたくないのだ。次々に人に手を差し伸べることになり、忙しさで撃沈されてしまうのである。
「週に一回でいいだろ」
「忘れそうだ」
記憶力崩壊している妻だから……。
「どっかに書いておけよ」
「じゃあ、リマインダーに登録しておこう。いつがいいの?」
「仕入れとか考えっと、空いてんのは水曜だな」
「水曜日ね。OK!」
そうして、翌週。月命が私の部屋へやって来た。
「倫、明引呼とデートの日が決まりました~」
プロポーズして、されてのふたり。晴れて、一緒に出かけられて、妻も大喜びだ。
「よかったですね。いつですか?」
「来週の水曜日です」
「何っ!?」
妻が働いている間に、デートに行くとはっ!
ブラックである。
でも、まぁ、仕方がないね。忙しくない日が水曜日だから、デートもその曜日になるよね。
2019年8月24日、土曜日
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