明智さんちの旦那さんは10人いるそうで……

明智 颯茄

文字の大きさ
上 下
34 / 80

ブラック企業

しおりを挟む
 旦那さんは10人いるが、いわゆる一般企業に勤めをしている人は、明引呼あきひこ、一人しかいない。これも以前は少々違った。彼は大農園の主だった。気ままな農家だったのだ。

 しかし、バイセクシャルの複数婚のお陰で、大繁盛になり、今では、孔明の知恵を借りて組織改革をし、大企業となった。明引呼は社長である。

 だが、その前は大変だったようだ。結婚してから、一日も休みがないほど、忙しく。兄貴と呼ばれ、慕われている明引呼。部下に休みを取らせるために、自分がカバーしていたらしい。

 ブラックだなと思う。

 農園があるのは、別の惑星らしい。瞬間移動で出勤するそうだ。

「お昼ご飯どうしてたの?」
「弁当だろ」
「そうなんだ」

 明引呼の元々の奥さんは、書物が納められている施設の番人だった。眠る暇もなく働きづくめの数千年間。当然、炊事などできないだろう。

「じゃあ、奥さん、一生懸命、覚えて作ってくれたんだね」

 そうしたら、

「オレに惚れてんだから、当たり前だろ」

 だって。仲がいいね。

「部下の人たちは、お弁当じゃないよね?」
「一緒だろ?」
「え? だって、料理が得意じゃない家庭もあるね? 外食だらけでも、仲良くやってる人もいるし。だいたい独身の人はどうするの?」
「店がねぇからな」
「どういうこと?」
「惑星丸々一個、農園なんだよ」
「社員食堂は?」
「そんなもん、前はあるわけねぇだろ」
「お昼ご飯の選択肢なし……。買い物は隣の惑星に行け!」

 ブラックだなぁ~。

「よくみんな辞めないね。感謝しないといけないよね?」
「だな」

 ある日、明引呼の瞬間移動で、書斎へ連れてこられた。妻はテーブルの上を見て、あきれて物が言えなかった。

「何ですか? この紙の山は。これじゃ、どこに何があるかわからないでしょ?」
「細けぇこと言うなよ」

 作業効率、落ちまくりである。

「秘書雇ったほうがいいんじゃないの?」
「てめぇがやれよ」

 いかにも慣れていない様子で、PCの前に座った明引呼の前で、妻は頭をぽりぽりとかいた。

「いや~、私は掃除が苦手で……」
「オフィスワークやったことあんだろ?」

 妻の過去は言わなくても、旦那さんたちにはバレバレなのである。

「あるよ。ファイリングとか、お茶出しとか……色々」
「できんじゃねぇか」
「でも、他にやることあるんだよね」

 秘書はやったことない。気がつくタイプじゃないからね。というか、気づいてもやりたくないのだ。次々に人に手を差し伸べることになり、忙しさで撃沈されてしまうのである。

「週に一回でいいだろ」
「忘れそうだ」

 記憶力崩壊している妻だから……。

「どっかに書いておけよ」
「じゃあ、リマインダーに登録しておこう。いつがいいの?」
「仕入れとか考えっと、空いてんのは水曜だな」
「水曜日ね。OK!」

 そうして、翌週。月命るなすのみことが私の部屋へやって来た。

「倫、明引呼とデートの日が決まりました~」

 プロポーズして、されてのふたり。晴れて、一緒に出かけられて、妻も大喜びだ。

「よかったですね。いつですか?」
「来週の水曜日・・・です」
「何っ!?」

 妻が働いている間に、デートに行くとはっ!

 ブラックである。

 でも、まぁ、仕方がないね。忙しくない日が水曜日だから、デートもその曜日になるよね。

 2019年8月24日、土曜日
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

シチュボ(女性向け)

身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。 アドリブ、改変、なんでもOKです。 他人を害することだけはお止め下さい。 使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。 Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

処理中です...