32 / 80
朝帰り
しおりを挟む
旦那さんたちは10人いる。バイセクシャル複数婚をする前は、8人は奧さんと子供がいて、2人は生涯のパートナーがいて、というそれぞれの生活を送っていた。
飽きたから、他の男性を好きになったわけではなく、愛する人が増えたという気持ちで、密かに想ってきたわけだ。
そのため、
好きなそぶりは見せられない。
気持ちを伝えることもできない。
相手の気持ちを聞くこともできない。
というわけで、結婚するまで、友達や同僚として出かけることはあっても、デートに行ったことはない。
ということで、結婚してから、旦那さんたちは、プロポーズした人、された人のふたりで、初デートに行くのだ。
妻は留守番で、見送った旦那さんのペア。
蓮と光命。
光命と夕霧命。
焉貴と孔明。
などなど……。
しかし、このペアが行ったのを見たことがなかった。
月命と明引呼。
今は違うが、明引呼は結婚してから、半年以上、毎日仕事に行っていて、そんな暇はなかったのだろう。
そうして、気付いた時には、夏休みになっていて、子供たち第一の月命が、彼らをおいて出かけることは気が引けるのだろう。
だが、夫婦はいっぱいいるのだから、家のことは気にせず、男ふたりでデートに行ってきたら、という提案があったが、1ヶ月も時が流れて、ようやく明日、行く日を迎える。
しかし、ふたりきりで部屋で話しているのが、聞こえてきた。月命が、
「君は僕のことを、どのように思っているんですか~?」
妻は驚いた。
結婚したのに、いまさらそれを聞いている?
夕食を食べる手も止まり、
「え……? もめてる? 聞き間違い?」
「聞き間違いじゃないでしょ」
焉貴が言葉を続ける。
「お前が思ってる意味じゃなくて、もっと細かいことでしょ?」
直感して、妻はさらに驚いた。
「えっ!? 明日行くのに、行き先決めてなかった?」
「そうじゃないの?」
そんな話をしていると、月命が明引呼を連れてやって来た。
「どうしたんですか?」
「聞いていただきたいんです~。明日の行き先なんですが、海に行きたいんです~」
月さんが水着姿? 想像つかないなぁ~。
腰までの長い髪をリボンで束ねて、ニコニコしている女性みたいに見える、色白の男が、運動する? 体育会系じゃないのに……。
「泳ぐんですか?」
「違います~。景色を眺めたいんです~。それから、牧場にも行きたいんです~」
場所が全然違う。というか、妻は別のところで引っかかった。
「はぁ? 牧場はこの間、家族旅行で行ってきたじゃない――!」
そこで思い出した。子供たちの感想で、何度か聞いたことを。
「馬に乗りたいんですね?」
牧場で乗馬が楽しめて、光命が綺麗に乗りこなしていたと、子供が大喜びしていた。
「えぇ」
にっこり微笑んだ月命に提案。
「それだったら、乗馬クラブに行けばいいんじゃないんですか? 大人ふたりなんだし。それから、ダーツとかビリヤードとかもやれて、お酒も飲めて……。大人がいくような場所に行く」
この遊び場が似合う夫は、隣で冷やし中華を食べていた。
「この手のスポットに詳しいのが光さんです。どこかいいとこありますか?」
「えぇ、ありますよ」
大人の世界を満喫してきた光命なら、たくさん知っているだろう。しかし、これは、海の近くという条件付きである。
「光さん、デートにぴったりのところですよ。夜景が綺麗とかそう言うのもプラスしたところです」
「えぇ」
店の名前を書いたメモを渡されて、月命と明引呼は満足して出ていった。またのんびり麺を箸でつかんだところで、妻はあらぬ想像をしてしまった。
「お酒飲みながら、夜景を眺める……だと、泊まりになる? それはいけません! 初デートで朝帰りなんて!」
というか、そこがポイントではなく、ふたりともパパなので、夫夫なので、帰ってきてから、お楽しみはしてください。
かくいう、妻も旦那さんとデートは、最初の頃、蓮と光命の3人で、映画を見ただけで、その後行っていない。というわけで、来月デートに行こうと、みんなから誘われている。
普段の旦那さんたちしか見たことがない。基本的に、みんなおしゃれだ。蓮はピアスしているし、光命は香水つけているし、明引呼はシルバーのアクセサリーをつけている。
しかし、デートともなれば、違うのだろう。しかも、旦那さんたちだと、また違うだろう。異性と同性にウケるポイントは違うのだから。そうなると、妻はとても気になるのだ。
月命と明引呼は、どんな服装で行くのだろう?
月さんに内緒にしていて欲しいと言われたので、小さな声で、妻の独り言。
女装しないって言ってたけど、どんなおしゃれをして行くのだろう?
2019年8月20日、火曜日
おまけ――
月命が翌日の朝、
「倫、ネックレス止めてください~」
と言ってやって来た。
服を見せに来たんだな。
振り返ってびっくりである。
そっちにいった!
彼の仕事着は、乗馬を楽しむ貴族みたいな出で立ちだ。膝までのロングブーツを履いて、細身のパンツで、上品なシャツに、カーキ色の長い髪を水色のリボンで結わく。
最近は、女装。
妻の前に現れた月命は、細身のジーパンに、チェック柄のシャツを腰に巻いて、おしゃれなカットソーを着ていた。カジュアルにいった。キャップをかぶっていてもおかしくない。
話を聞くと、明引呼とは玄関で待ち合わせで、家の中では会わないようにしているらしい。
そうして、ふたりで出かけたが、17時にはシュークリームをお土産に帰ってきた。どんなデートだったのか聞いてみよう。
しかし、子供たちに囲まれてしまった、月命が。泣いている子もいる。大好きな月パパが1日いなかったのは堪えたようだ。
帰ってきてから、2時間も経過するが、月命は子供たちに今も離してもらえないのである。
飽きたから、他の男性を好きになったわけではなく、愛する人が増えたという気持ちで、密かに想ってきたわけだ。
そのため、
好きなそぶりは見せられない。
気持ちを伝えることもできない。
相手の気持ちを聞くこともできない。
というわけで、結婚するまで、友達や同僚として出かけることはあっても、デートに行ったことはない。
ということで、結婚してから、旦那さんたちは、プロポーズした人、された人のふたりで、初デートに行くのだ。
妻は留守番で、見送った旦那さんのペア。
蓮と光命。
光命と夕霧命。
焉貴と孔明。
などなど……。
しかし、このペアが行ったのを見たことがなかった。
月命と明引呼。
今は違うが、明引呼は結婚してから、半年以上、毎日仕事に行っていて、そんな暇はなかったのだろう。
そうして、気付いた時には、夏休みになっていて、子供たち第一の月命が、彼らをおいて出かけることは気が引けるのだろう。
だが、夫婦はいっぱいいるのだから、家のことは気にせず、男ふたりでデートに行ってきたら、という提案があったが、1ヶ月も時が流れて、ようやく明日、行く日を迎える。
しかし、ふたりきりで部屋で話しているのが、聞こえてきた。月命が、
「君は僕のことを、どのように思っているんですか~?」
妻は驚いた。
結婚したのに、いまさらそれを聞いている?
夕食を食べる手も止まり、
「え……? もめてる? 聞き間違い?」
「聞き間違いじゃないでしょ」
焉貴が言葉を続ける。
「お前が思ってる意味じゃなくて、もっと細かいことでしょ?」
直感して、妻はさらに驚いた。
「えっ!? 明日行くのに、行き先決めてなかった?」
「そうじゃないの?」
そんな話をしていると、月命が明引呼を連れてやって来た。
「どうしたんですか?」
「聞いていただきたいんです~。明日の行き先なんですが、海に行きたいんです~」
月さんが水着姿? 想像つかないなぁ~。
腰までの長い髪をリボンで束ねて、ニコニコしている女性みたいに見える、色白の男が、運動する? 体育会系じゃないのに……。
「泳ぐんですか?」
「違います~。景色を眺めたいんです~。それから、牧場にも行きたいんです~」
場所が全然違う。というか、妻は別のところで引っかかった。
「はぁ? 牧場はこの間、家族旅行で行ってきたじゃない――!」
そこで思い出した。子供たちの感想で、何度か聞いたことを。
「馬に乗りたいんですね?」
牧場で乗馬が楽しめて、光命が綺麗に乗りこなしていたと、子供が大喜びしていた。
「えぇ」
にっこり微笑んだ月命に提案。
「それだったら、乗馬クラブに行けばいいんじゃないんですか? 大人ふたりなんだし。それから、ダーツとかビリヤードとかもやれて、お酒も飲めて……。大人がいくような場所に行く」
この遊び場が似合う夫は、隣で冷やし中華を食べていた。
「この手のスポットに詳しいのが光さんです。どこかいいとこありますか?」
「えぇ、ありますよ」
大人の世界を満喫してきた光命なら、たくさん知っているだろう。しかし、これは、海の近くという条件付きである。
「光さん、デートにぴったりのところですよ。夜景が綺麗とかそう言うのもプラスしたところです」
「えぇ」
店の名前を書いたメモを渡されて、月命と明引呼は満足して出ていった。またのんびり麺を箸でつかんだところで、妻はあらぬ想像をしてしまった。
「お酒飲みながら、夜景を眺める……だと、泊まりになる? それはいけません! 初デートで朝帰りなんて!」
というか、そこがポイントではなく、ふたりともパパなので、夫夫なので、帰ってきてから、お楽しみはしてください。
かくいう、妻も旦那さんとデートは、最初の頃、蓮と光命の3人で、映画を見ただけで、その後行っていない。というわけで、来月デートに行こうと、みんなから誘われている。
普段の旦那さんたちしか見たことがない。基本的に、みんなおしゃれだ。蓮はピアスしているし、光命は香水つけているし、明引呼はシルバーのアクセサリーをつけている。
しかし、デートともなれば、違うのだろう。しかも、旦那さんたちだと、また違うだろう。異性と同性にウケるポイントは違うのだから。そうなると、妻はとても気になるのだ。
月命と明引呼は、どんな服装で行くのだろう?
月さんに内緒にしていて欲しいと言われたので、小さな声で、妻の独り言。
女装しないって言ってたけど、どんなおしゃれをして行くのだろう?
2019年8月20日、火曜日
おまけ――
月命が翌日の朝、
「倫、ネックレス止めてください~」
と言ってやって来た。
服を見せに来たんだな。
振り返ってびっくりである。
そっちにいった!
彼の仕事着は、乗馬を楽しむ貴族みたいな出で立ちだ。膝までのロングブーツを履いて、細身のパンツで、上品なシャツに、カーキ色の長い髪を水色のリボンで結わく。
最近は、女装。
妻の前に現れた月命は、細身のジーパンに、チェック柄のシャツを腰に巻いて、おしゃれなカットソーを着ていた。カジュアルにいった。キャップをかぶっていてもおかしくない。
話を聞くと、明引呼とは玄関で待ち合わせで、家の中では会わないようにしているらしい。
そうして、ふたりで出かけたが、17時にはシュークリームをお土産に帰ってきた。どんなデートだったのか聞いてみよう。
しかし、子供たちに囲まれてしまった、月命が。泣いている子もいる。大好きな月パパが1日いなかったのは堪えたようだ。
帰ってきてから、2時間も経過するが、月命は子供たちに今も離してもらえないのである。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

シチュボ(女性向け)
身喰らう白蛇
恋愛
自発さえしなければ好きに使用してください。
アドリブ、改変、なんでもOKです。
他人を害することだけはお止め下さい。
使用報告は無しで商用でも練習でもなんでもOKです。
Twitterやコメント欄等にリアクションあるとむせながら喜びます✌︎︎(´ °∀︎°`)✌︎︎ゲホゴホ
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる