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生い立ち
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最近、仲の良さが急上昇中なのは、孔明である。
きっかけは、彼との間に生まれた子供、尋だ。
私は基本、子供とは4歳近くにならないと、接しない。それまでは、他の配偶者に任せきりである。
尋も4歳を迎え、私のそばへやって来た。
物を投げる。
奇声を上げる。
会話をあまりしない。
そんな感じの子である。だから、こう思うのだ。
力加減を知らないのかな?
人とあまり話さないで、接してこなかったのかな?
時々、孔明が尋を連れて、私のところへ来ていたが、どんな時も抱きっぱなしだった。
「尋ちゃん、ボク、大好きなの」
と、孔明がよく言っていたのを思い出す。
他の兄弟と接する機会がなかったのかも、親バカすぎて……。
このまま5歳になって、小学校に行く……。
心配である。
幼稚園や保育園はない。託児所はある。だが、家は基本的に誰も行っていない。しかしである……。
尋は行ったほうがいいかもなぁ~。
ということで、孔明に提案してみた。彼も調べていたというか、月命が託児所を家でやりたいと前々から調べていたのを聞いていたらしく、
「いろんな時間帯で行けるみたいなんだよね」
と言って、説明してくれた。
たとえば、午前中だけとか、昼食だけ食べるとか、午後の学校が終了する時間までとか。
尋は昼食を食べるに興味を示した。食べ物が大好きなのである、特に麺類が。
しかも、明日行きたいと言う。
すると孔明は、
「明日、仕事を抜けて、お昼ご飯食べに行こう」
と言うのである。妻はがっくりと肩を落とす。
「そうやって、何でも叶えちゃうから、尋は前に進めないんだと思うんだよなぁ~」
孔明は大人だから、と言うか、大先生だから放っておこう。何か策でもあるのだろう。小首を傾げている尋を見つめて、
「パパが忙しくて倒れたら、尋はどう思うかな?」
「こまる……」
「じゃあ、明日じゃなくて、明後日だったら、パパはお休みだから、明後日に行ったらどうかな?」
「ん~~?」
尋の心は葛藤する。相手を思いやる気持ちか。自分の願いか。
「お昼ご飯を食べに行くのはなくなってないよ。明日が明後日になっただけだから……」
「……じゃあ、つぎのつぎにする」
尋が納得したが、妻は感覚なのである。
「あ、孔明さん、明後日仕事あるの?」
「お休みだよ」
と言うことで、明後日行くことになった。
何で、急に子供連れてくるようになったんだろう?
旦那さんには私の声は筒抜け。孔明が、
「ボク、倫ちゃんと子育てしたいの」
と言うのである。
普通ならば嬉しいことなのだろう。
だが、私は2つの世界を同時に生きている身だ。
面倒を見切れない時が出てくる。
それはどんなに努力しても避けられない。
結局うなずけなかった。
夜眠る時刻になって、寝室へやってくると、眠っている孔明の隣にいた、焉貴が話しかけてきた。
「お前、孔明のこと買い被りすぎ」
孔明は帝国一の頭脳を持つ大先生だ。
百戦錬磨で見事なまでに、物事を思う通りに動かす。
しかも、彼は私の守護神だ。
はっきり言って神である。
失敗などしないのだろうし、未来も見えているのだろう。
だが、孔明という素の存在は違うのだ。
神の上にも神はいる。
つまりは、彼らは人として常に生きている。
神が失敗しているところなど、何度も見たことがある。
予想もしていないことが起きて、驚いているのもだ。
結局のところ、彼らも人生という修行をしているのだ。
決して、完璧ではない。
ふと、思ったのだ。旦那さんたちの生い立ち――子供時代はどうだったのだろう、と。
両親がいて、普通に育ったのは、焉貴、月命、明引呼、貴増参、独健の5人。
時の流れが15倍の速さで流れる中で、両親とともに育ったのは、光命と夕霧命。
時の流れが15倍の速さで流れる中で、義理の両親とともに育ったのは、蓮。
そうして、戦ばかりの世の中で、あまり家族との絆もなく育ったのは、孔明と張飛。
資料を読んだり、人から話を聞けば、ある程度は想像がつくだろう。
しかし、体験していないものは、やはり身にしみてはわからないものだ。
親に育てられたことがない人には、子育ては未知の領域だ。
どうしたらいいのか、孔明は迷っているのだろう。
もっと、彼のことをきちんと見てくればよかったなと、反省するのだ。
そうして、他の旦那さんたちのことも、もう少し気遣っていこうと心を改めるのである。
そうして、今日。
孔明が仕事で、尋は私のそばへと来た。だが、旦那さんたちの連携はよく取れているもので、焉貴が面倒を見にきた。
尋が絵本を持っていた。楽しいらしく、集中して読んでいると、月命がわざとらしく、
「おや~? 絵本が1冊どこかへいってしまったんです~」
と言いながらやってきた。焉貴が尋に、
「お前、これ、言わないで持ってきたの?」
「?」
尋はぽかんとした顔をした。
尋は知らないのだ。
彼の中では物事は、こうなっているのだ。
――絵本が落ちていた。
そこに物があった。
明日、託児所に行くが、大丈夫だろうか?
心配になりながら、
「尋? 物はね、ほとんど誰かの持ち物なんだよ。外に綺麗に咲いてる花も誰かが一生懸命育てたものかもしれない。だから、誰の物かを聞いて、貸してって言うんだよ」
「うん、わかった」
こんな感じで、子育ては進んでゆくのだが、すぐに理解して直してしまう尋。
教師である焉貴が言った。
「あれ、頭いいね」
「私もそう思う」
教師ほど子供の数は見ていないが、それなりにいろんな子に会ってきた。人それぞれに成長のスピードはあり、他の子と比べるのはどうかと思うが、それを考慮しても理解力があることは否めない。
「この調子だったら、あっという間に巻き返すでしょ」
「孔明さんに似たんだな」
2019年8月2日、金曜日
きっかけは、彼との間に生まれた子供、尋だ。
私は基本、子供とは4歳近くにならないと、接しない。それまでは、他の配偶者に任せきりである。
尋も4歳を迎え、私のそばへやって来た。
物を投げる。
奇声を上げる。
会話をあまりしない。
そんな感じの子である。だから、こう思うのだ。
力加減を知らないのかな?
人とあまり話さないで、接してこなかったのかな?
時々、孔明が尋を連れて、私のところへ来ていたが、どんな時も抱きっぱなしだった。
「尋ちゃん、ボク、大好きなの」
と、孔明がよく言っていたのを思い出す。
他の兄弟と接する機会がなかったのかも、親バカすぎて……。
このまま5歳になって、小学校に行く……。
心配である。
幼稚園や保育園はない。託児所はある。だが、家は基本的に誰も行っていない。しかしである……。
尋は行ったほうがいいかもなぁ~。
ということで、孔明に提案してみた。彼も調べていたというか、月命が託児所を家でやりたいと前々から調べていたのを聞いていたらしく、
「いろんな時間帯で行けるみたいなんだよね」
と言って、説明してくれた。
たとえば、午前中だけとか、昼食だけ食べるとか、午後の学校が終了する時間までとか。
尋は昼食を食べるに興味を示した。食べ物が大好きなのである、特に麺類が。
しかも、明日行きたいと言う。
すると孔明は、
「明日、仕事を抜けて、お昼ご飯食べに行こう」
と言うのである。妻はがっくりと肩を落とす。
「そうやって、何でも叶えちゃうから、尋は前に進めないんだと思うんだよなぁ~」
孔明は大人だから、と言うか、大先生だから放っておこう。何か策でもあるのだろう。小首を傾げている尋を見つめて、
「パパが忙しくて倒れたら、尋はどう思うかな?」
「こまる……」
「じゃあ、明日じゃなくて、明後日だったら、パパはお休みだから、明後日に行ったらどうかな?」
「ん~~?」
尋の心は葛藤する。相手を思いやる気持ちか。自分の願いか。
「お昼ご飯を食べに行くのはなくなってないよ。明日が明後日になっただけだから……」
「……じゃあ、つぎのつぎにする」
尋が納得したが、妻は感覚なのである。
「あ、孔明さん、明後日仕事あるの?」
「お休みだよ」
と言うことで、明後日行くことになった。
何で、急に子供連れてくるようになったんだろう?
旦那さんには私の声は筒抜け。孔明が、
「ボク、倫ちゃんと子育てしたいの」
と言うのである。
普通ならば嬉しいことなのだろう。
だが、私は2つの世界を同時に生きている身だ。
面倒を見切れない時が出てくる。
それはどんなに努力しても避けられない。
結局うなずけなかった。
夜眠る時刻になって、寝室へやってくると、眠っている孔明の隣にいた、焉貴が話しかけてきた。
「お前、孔明のこと買い被りすぎ」
孔明は帝国一の頭脳を持つ大先生だ。
百戦錬磨で見事なまでに、物事を思う通りに動かす。
しかも、彼は私の守護神だ。
はっきり言って神である。
失敗などしないのだろうし、未来も見えているのだろう。
だが、孔明という素の存在は違うのだ。
神の上にも神はいる。
つまりは、彼らは人として常に生きている。
神が失敗しているところなど、何度も見たことがある。
予想もしていないことが起きて、驚いているのもだ。
結局のところ、彼らも人生という修行をしているのだ。
決して、完璧ではない。
ふと、思ったのだ。旦那さんたちの生い立ち――子供時代はどうだったのだろう、と。
両親がいて、普通に育ったのは、焉貴、月命、明引呼、貴増参、独健の5人。
時の流れが15倍の速さで流れる中で、両親とともに育ったのは、光命と夕霧命。
時の流れが15倍の速さで流れる中で、義理の両親とともに育ったのは、蓮。
そうして、戦ばかりの世の中で、あまり家族との絆もなく育ったのは、孔明と張飛。
資料を読んだり、人から話を聞けば、ある程度は想像がつくだろう。
しかし、体験していないものは、やはり身にしみてはわからないものだ。
親に育てられたことがない人には、子育ては未知の領域だ。
どうしたらいいのか、孔明は迷っているのだろう。
もっと、彼のことをきちんと見てくればよかったなと、反省するのだ。
そうして、他の旦那さんたちのことも、もう少し気遣っていこうと心を改めるのである。
そうして、今日。
孔明が仕事で、尋は私のそばへと来た。だが、旦那さんたちの連携はよく取れているもので、焉貴が面倒を見にきた。
尋が絵本を持っていた。楽しいらしく、集中して読んでいると、月命がわざとらしく、
「おや~? 絵本が1冊どこかへいってしまったんです~」
と言いながらやってきた。焉貴が尋に、
「お前、これ、言わないで持ってきたの?」
「?」
尋はぽかんとした顔をした。
尋は知らないのだ。
彼の中では物事は、こうなっているのだ。
――絵本が落ちていた。
そこに物があった。
明日、託児所に行くが、大丈夫だろうか?
心配になりながら、
「尋? 物はね、ほとんど誰かの持ち物なんだよ。外に綺麗に咲いてる花も誰かが一生懸命育てたものかもしれない。だから、誰の物かを聞いて、貸してって言うんだよ」
「うん、わかった」
こんな感じで、子育ては進んでゆくのだが、すぐに理解して直してしまう尋。
教師である焉貴が言った。
「あれ、頭いいね」
「私もそう思う」
教師ほど子供の数は見ていないが、それなりにいろんな子に会ってきた。人それぞれに成長のスピードはあり、他の子と比べるのはどうかと思うが、それを考慮しても理解力があることは否めない。
「この調子だったら、あっという間に巻き返すでしょ」
「孔明さんに似たんだな」
2019年8月2日、金曜日
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