明智さんちの旦那さんは10人いるそうで……

明智 颯茄

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焉貴、いなくなる

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 焉貴これたかのこの話を書いておかないと、私は彼の300億年という人生経験と教師という面に、妻という立場を忘れて、甘えきってしまうだろう。
 だから、戒めとして書いておこう。

 焉貴といえば、スーパーハイテンション。純真無垢な心を持って、R17を話すミラクル風雲児である。本編では。
 
 実際もそう。
 R17は物語の中ほど言わないが……。
 本編にも出ていたが、焉貴が結婚してから、私にずっと、

「お前としたいんだけど……」

 と言っていたのは本当である。
 教師だから、話を聞こうとして、いろいろ質問を振って聞き上手。
 我が家の子供たちにも人気なパパ。

 そんな彼が夏休み前だ。様子がおかしくなったのは……。
 元気がなく、あまり話さなくなった。

 理由を聞いても何も答えない。
 そんな日々が過ぎてゆき、予感というのか、勘というのか。

 ――焉貴が自分の知らない遠くへ行ってしまうような気がしてならなくなった。

 あまり考えたくはないが、離婚をするのかなと思ったが、彼がそばにくることはなく、話す機会もなく、毎日は過ぎていった。

 ある日、久々見かけた彼は、ミニシガリロ(タバコサイズの葉巻)を吸っていた。そんなものなど、普段は吸わないのに……。

 まるで子供が限界を通り越して無理をし、高熱で倒れる前兆みたいだ。奇行が目立つようになるなど。

 焉貴は何も言わず、ため息をついて、黒のボブ髪を両手でかき上げる。
 
 結婚生活で何か我慢していることがあって、辛くなっているのでは……?

 そう思っても、私の心の声は、焉貴には筒抜けなのに返事もしない。
 
 最近、みんなと話したことを思い返す。

 プロポーズされた旦那さんなら知ってるかも。

「孔明さん、焉貴さんの様子がおかしい原因知りませんか?」
「ん~、聞いてないなぁ」

 同じ教師だったら知ってるかも。

るなすさん、焉貴さん何か言ってませんでしたか?」
「聞いていませんよ~」

 いつも私のそばにいる旦那さんに聞いてみよう。

ひかりさん、焉貴さん何かあったんですか?」
「何も言っていませんでしたよ」

 みんなにも言ってない。やっぱり……結婚生活で悩みがあるなのかな? 
 
 そうして、夜になり、孔明が瞬間移動してきた。

「倫ちゃん、焉貴、倒れた」

 何が原因で無理をしていたのだろう? 彼は。
 結局聞くこともできなく――

 看病に行っていて、誰もそばにはいない。1人でぼうっと考えていたが、人影がすぐ近くに立った。

独健どっけんさん……」
「陛下が最近新しく3つの世界を統治したんだ。そこが、高校生の人口が多くて、1クラス受け持ちだったのが、6つになったらしい。だから、忙しくて倒れたんだ」

 みんな知ってたけど、言わなかった。
 それは、本人が言っていないのに、伝えられないということだろう。
 たとえ複数婚でも、それがルールだ。
 私と焉貴でここを乗り越えないと、これ以上心の距離は縮まらないのである。

 高校教師になるには、生徒を上回る年数を生きていないと難しい。
 687年で1つ歳をとるのだから、高校生の年齢は、通常約6900~8200年になる。
(誕生から1年で5歳になり小学校入学。14歳で高校へ入学になる。式は、(14-4)×687=)
 我が家の夫たちのほとんどが、2000年前後だ。前統治の悪政のために、大人が圧倒的に少ないのである。

 ということで、人材をいくら募集しても集まらず、供給に需要がついていけなかった。

 翌々日。
 焉貴は孔明に付き添ってもらい、陛下に対策を願い出た。
 そうして結果は、教師の数がそろうまでは、生徒は交代で登校する。
 となった。

 焉貴としては心が痛む。
 学びたくでも学校に来れない生徒がいるのだから。
 そうこうしているうちに、夏休みに突入。
 ひとまず落ち着いたが、本当の解決とは言えない。

 謁見した夜にはふたりきりで話した。

「俺、家だとハイテンションでもなく、口数も極端に少ないんだよね」

 どうやら、教師モードで、私には対応していたらしい。
 それは、疲れるだろう。くつろぐはずの家が職場なのだから。

 遠くに行ってしまうイメージは、本来の焉貴ではなくなっているということだったのかもしれない。
 
「俺がお前に言わなかったからさ。……ごめん」

 この人はきちんと謝罪の言葉を口にする人なんだな。
 蓮や光命や月命や貴増参たかふみとは違って……(笑)

 と、この時初めて気づいた。

 心を読み取れる焉貴の前では、私は一度も不安な気持ちは考えなかった。辛そうなのに、心配をかけてはと思い、言いもしなかった。決して、彼のせいではないのだ。
 
 だが、私は記憶力が崩壊していて、バカなのである。

 今日、高等部で夏休みの登校日があった。
 いつも21時に眠くなる焉貴。それなのに、20時30分で姿が見えない。

 どこ行ったんだろう?
 
 探していると、孔明が、

「もう寝たよ」

 と言っていた。

 疲れたんだな。とのんきに思っていたが、疲れて当然なのだ。
 高校生が全員登校してきたのだから。
 登校日は交代制ではないのである。

 自分のバカさ加減にがっくりと肩を落とし、何ひとつねぎらいの言葉をかけなかったことに、反省するばかりである。
 その上、夜の早いうちには焉貴の新しい子供も生まれて、繊細な彼にとっては忙しい1日だっただろう。

 2019年7月26日、金曜日
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