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お題に答えて/9
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パッとケーキが瞬間移動して、ひまわり色の短髪の前に現れた。
「俺は、数字だな」
平和に戻り、みんなが一斉に、納得の声を上げた。
「あぁ~、だから、いつも罠にはまるのか……」
「どういうことだ?」
わかっていないのだ、最後から二番目に結婚した独健は。明智家の恐ろしさを。さっき同意した張飛は自動的に飛ばして、とにかく情報は得た。颯茄はケーキを引き寄せ、もう一周やってやろうと愚かにもトライ。
「はい、四周目。特技をお願いします」
はやる気持ちが、妻の脳裏の電球に明かりをピカンとつけた。
「霊視!」
変わった回答だったが、夫たちは軽くスルーしてゆく。
「そうね」
「確かにそうだ」
爆破が近いケーキはそして、潔癖症の夫の前にやってきた。
逃げたいのだ。それなのに、離婚するとか言われてしまい、逃げるわけにもいかず。だからと言って、爆発はして欲しくないのである。自分の美的センスを総動員した服は汚したくないのだ。だが、出てこないのである。
「俺は……?」
しかし、そこは以心伝心我が夫――焉貴が先に進ませた。
「お前、ひねくれでしょ?」
どんな特技だ。それなのに、蓮はすっと左へケーキを横滑りさせる。
「それでいい。光」
そうして、スーパーエロの座を勝ち取っている夫から、遊線が螺旋を描く優雅で芯のある声で、こんな特技が出てきた。
「私はセ◯キの開発です」
ずいぶんと濃厚な特技が登場。それなのに、焦っている妻は、スルーしようとする。
「はい、じゃあ、次お願いします」
夫全員から、待ったの声が上がった。
「そこ、突っ込まないのか!」
「急いでます!」
妻のどこかずれているクルミ色の瞳は、もういつ爆発してもおかしくないケーキから外されることはなく、大声で押し切った。そして、夕霧命の前に時限爆弾は到着。だったが、彼はどこまでも落ち着いており、
「俺は武術だ」
難なくクリアーし、焉貴の前にケーキがやってきた。
「はい!」
ハイテンションのまだら模様の声が響くと同時に、
ドカン!
とケーキははじけ飛び、華を添えるように、イチゴが飛び上がった。高校の数学教師のはだけた服や山吹色の髪は生クリームだらけ。ひどくエロティックでサディスティックだった。
「うほ~っ! 俺のとこできちゃったね~」
惑星一つを吹き飛ばすケーキのはずである。それなのに、両隣の夕霧命と月命は被害がまったくなかった。
「あれ、焉貴さんだけ? 汚れたの?」
ここで気づけばよかったのだ。おかしいと。まだ救いようがあった。髪についた生クリームを指先で取って、焉貴は口の中に入れる。その仕草は、灼熱の銃身が花壺に入り込むようだった。
「俺か光って、計算してたんだけど……。セ◯キの開発で、颯が拾わなかったからね。拾ったら、光だったんだけど……」
なんだか策略的な匂いがしていたが、妻にとっては寝耳に水の話で、颯茄は生クリームだらけの高校教師をまじまじ見つめた。
「え……計算?」
そうこうしているうちに、歴史の小学校教諭が残念そうな声を上げた。
「僕がやりたかったんです~」
マゼンダ色の長い髪とニコニコの笑顔。女性的な月命の真正面に座っていた、独健がさわやかに微笑んだ。
「お前、本当に失敗するの好きだな」
すると、その隣にいた漆黒の長い髪を持つ塾講師が、
「ボクもなんだけどなぁ~」
生クリームだらけをご所望の夫たち。焉貴が指先についた白いものを差し出すと、
「お前も?」
孔明が慣れた感じで、パクッと口にくわえた。そしてまた、優雅な王子さま夫が便乗していたことを表明した。
「私もなのですが……」
「光は似合わん」
夕霧命から日本刀で藁人形を切るようにバッサリ切り捨てられた。
紺の肩よりも長い髪で、冷静な水色の瞳。光命が立てば、どんな空間でも、高貴で気品高い城のようになる。
独健は少しだけ笑って、鼻声を響かせた。
「俺もそう思うな。生クリームだらけになるとか……。ファンが泣くだろう」
「意外にいけっかもしれねえぜ」
明引呼はそう言って、カラのショットグラスを、これで終わりというようにテーブルの上にカツンと置いた。
「ちょっとケーキはもったいなかったっすね。でも、しょうがないっす」
張飛は皿の上にスプーンを置いて片付け始めた。無事ケーキから回避できた蓮は、銀の長い前髪の乱れを、神経質に直しながら、
「生クリームだらけでも、光は光だ。俺はいい」
妻は妄想世界へと飛ばされた――
どこかの城の大広間で、俺さま王子と優雅な王子が手を取り、鋭利なスミレ色と冷静な水色の瞳は一直線に絡み合い、光り輝くシャンデリアの下で、宮廷楽団の奏でるワルツに乗りクルクルと華麗に踊る。
その間に、貴増参がこうやってしめくくった。
「おてんば姫を追いかけていて、ケーキをかぶってしまった王子でしょうか。続きはまた来週です」
時限爆弾ケーキはもうない。それなのに予告する。
ボケで現実へ引き戻された颯茄は、夫たちだけで話が成立している理由を知ろうとして、キョロキョロと見渡した。
「どういうこと?」
「俺は、数字だな」
平和に戻り、みんなが一斉に、納得の声を上げた。
「あぁ~、だから、いつも罠にはまるのか……」
「どういうことだ?」
わかっていないのだ、最後から二番目に結婚した独健は。明智家の恐ろしさを。さっき同意した張飛は自動的に飛ばして、とにかく情報は得た。颯茄はケーキを引き寄せ、もう一周やってやろうと愚かにもトライ。
「はい、四周目。特技をお願いします」
はやる気持ちが、妻の脳裏の電球に明かりをピカンとつけた。
「霊視!」
変わった回答だったが、夫たちは軽くスルーしてゆく。
「そうね」
「確かにそうだ」
爆破が近いケーキはそして、潔癖症の夫の前にやってきた。
逃げたいのだ。それなのに、離婚するとか言われてしまい、逃げるわけにもいかず。だからと言って、爆発はして欲しくないのである。自分の美的センスを総動員した服は汚したくないのだ。だが、出てこないのである。
「俺は……?」
しかし、そこは以心伝心我が夫――焉貴が先に進ませた。
「お前、ひねくれでしょ?」
どんな特技だ。それなのに、蓮はすっと左へケーキを横滑りさせる。
「それでいい。光」
そうして、スーパーエロの座を勝ち取っている夫から、遊線が螺旋を描く優雅で芯のある声で、こんな特技が出てきた。
「私はセ◯キの開発です」
ずいぶんと濃厚な特技が登場。それなのに、焦っている妻は、スルーしようとする。
「はい、じゃあ、次お願いします」
夫全員から、待ったの声が上がった。
「そこ、突っ込まないのか!」
「急いでます!」
妻のどこかずれているクルミ色の瞳は、もういつ爆発してもおかしくないケーキから外されることはなく、大声で押し切った。そして、夕霧命の前に時限爆弾は到着。だったが、彼はどこまでも落ち着いており、
「俺は武術だ」
難なくクリアーし、焉貴の前にケーキがやってきた。
「はい!」
ハイテンションのまだら模様の声が響くと同時に、
ドカン!
とケーキははじけ飛び、華を添えるように、イチゴが飛び上がった。高校の数学教師のはだけた服や山吹色の髪は生クリームだらけ。ひどくエロティックでサディスティックだった。
「うほ~っ! 俺のとこできちゃったね~」
惑星一つを吹き飛ばすケーキのはずである。それなのに、両隣の夕霧命と月命は被害がまったくなかった。
「あれ、焉貴さんだけ? 汚れたの?」
ここで気づけばよかったのだ。おかしいと。まだ救いようがあった。髪についた生クリームを指先で取って、焉貴は口の中に入れる。その仕草は、灼熱の銃身が花壺に入り込むようだった。
「俺か光って、計算してたんだけど……。セ◯キの開発で、颯が拾わなかったからね。拾ったら、光だったんだけど……」
なんだか策略的な匂いがしていたが、妻にとっては寝耳に水の話で、颯茄は生クリームだらけの高校教師をまじまじ見つめた。
「え……計算?」
そうこうしているうちに、歴史の小学校教諭が残念そうな声を上げた。
「僕がやりたかったんです~」
マゼンダ色の長い髪とニコニコの笑顔。女性的な月命の真正面に座っていた、独健がさわやかに微笑んだ。
「お前、本当に失敗するの好きだな」
すると、その隣にいた漆黒の長い髪を持つ塾講師が、
「ボクもなんだけどなぁ~」
生クリームだらけをご所望の夫たち。焉貴が指先についた白いものを差し出すと、
「お前も?」
孔明が慣れた感じで、パクッと口にくわえた。そしてまた、優雅な王子さま夫が便乗していたことを表明した。
「私もなのですが……」
「光は似合わん」
夕霧命から日本刀で藁人形を切るようにバッサリ切り捨てられた。
紺の肩よりも長い髪で、冷静な水色の瞳。光命が立てば、どんな空間でも、高貴で気品高い城のようになる。
独健は少しだけ笑って、鼻声を響かせた。
「俺もそう思うな。生クリームだらけになるとか……。ファンが泣くだろう」
「意外にいけっかもしれねえぜ」
明引呼はそう言って、カラのショットグラスを、これで終わりというようにテーブルの上にカツンと置いた。
「ちょっとケーキはもったいなかったっすね。でも、しょうがないっす」
張飛は皿の上にスプーンを置いて片付け始めた。無事ケーキから回避できた蓮は、銀の長い前髪の乱れを、神経質に直しながら、
「生クリームだらけでも、光は光だ。俺はいい」
妻は妄想世界へと飛ばされた――
どこかの城の大広間で、俺さま王子と優雅な王子が手を取り、鋭利なスミレ色と冷静な水色の瞳は一直線に絡み合い、光り輝くシャンデリアの下で、宮廷楽団の奏でるワルツに乗りクルクルと華麗に踊る。
その間に、貴増参がこうやってしめくくった。
「おてんば姫を追いかけていて、ケーキをかぶってしまった王子でしょうか。続きはまた来週です」
時限爆弾ケーキはもうない。それなのに予告する。
ボケで現実へ引き戻された颯茄は、夫たちだけで話が成立している理由を知ろうとして、キョロキョロと見渡した。
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