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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
刑事は探偵に告げる/2
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「うふふふっ、この戦いが終わる前に、地獄のシステムの入れ替えは終わっています~。敵の軍を動かして、浄化するだけの戦いでした~。ですが、嘘をつけない方のために、偽の情報をわざと伝えましたよ」
トラップ天使なりにきちんと神の意思をまっとうしていた、策という名の罠を用いて。
白い修験者の姿をしている、アドスは数珠をした手で、紫色の短髪をくしゃくしゃにかき上げた。
「敵が弱すぎったっす」
「勝っちゃうと、次出てきちゃうからね。手加減すんの大変」
ナールのマダラ模様の声を聞いて、崇剛はすうっと真顔に戻った。最後に戦況をひっくり返したのは、立派な両翼と光る輪っかを頭に乗せている天使みたいな男だ。
どんなルートで神の戦略を、ナールは聞いていたのだろうか。いや、いつから知っていたのだろうか。
崇剛の中で疑問が渦巻いているのに構わず、天使たちの話は続いてゆく。
白いロングコートを風になびかせながら、シズキの鋭利なスミレ色の瞳は、今は神の結界によって見えなくなってしまった敵陣へ向けられていた。
「あの程度とは邪神界は所詮、脳みそが砂粒大の集まりだな。劣勢に見せかけていたに決まっているだろう。正神界は慌てて準備をしたという想定内で戦っていたんだからな」
慌てて陣を整えたような振りをして、相手に好機だと思わせる――。見事なまでに完璧な神の策だった。
カミエは嬉しそうに目を細め、袴の袖に包まれた両腕を腰のあたりで組み、地鳴りのような低い声で言う。
「いい修業になった」
「いい演技の練習になりました」
クリュダがにっこりと微笑むと、天使と霊の陣営全員が目が点になった。
「違ってない?」
*
――――庭崎市の中心街を抜けて、実りの秋の匂いが広がる田園風景を、一台の自動車が猛スピードで走り抜けていた。
小高い丘の上に見える赤煉瓦の二階建ての洋館。そこへ続く坂道を自動車は登り始める。
胸の前で組まれた両腕には、太いシルバーリング六つがつけられており、人差し指がトントンと落ち着きなく、迷彩柄のシャツを着た腕に打ちつけられていた。
*
――――残り火のような夕日があと一筋で、旧聖堂から消えてしまう時間帯。見えているのはこの世だけで、霊界での出来事は音ばかりが聞こえていたダルレシアン 。
彼は声がしたほうへ、聡明な瑠璃紺色の瞳を向けて、ふんわりと微笑んだ。
「どうやって勝ったの?」
ラジュは人差し指をこめかみに突き立て、今までにないほど困った顔をする。
「それが、神からそちらは教えていただけないんです~」
ニコニコのまぶたは片目だけ開いて、彫りの深い無機質な表情をしているナールをじっと見ていた。
「何、お前?」
赤い目がみんなのほうへ向いた。
崇剛は思う。言い逃れはできない。さっき、指をパチンと鳴らしているのを、この目でしかと見たのだから。
ダルレシアンは漆黒の長い髪を、つうっとすくように斜め上に伸ばし、弄びながら、じっとりとまとわりつくように聞いた。
「ナールが敵とボクたちの場所を入れ替えた……のかな?」
意識が薄れていく間に感じた遠心力のあと、敵陣に火の玉が落ちていったのは、そう考えるのが妥当だろう。どんな原理かは理論的に説明はできないが。
「先ほど、武器と他のものを交換していましたからね。どのような力なのですか?」
あごに指を当てたまま、崇剛はナールを逃さないと言うように凝視したが、当の本人から出てきた言葉は摩訶不思議だった。
「魔法?」
「えぇっ?」
後ろに控えていた全員が驚きの声を上げるが、ナールは真顔で言う。
「いつの間にかそうなってた?」
「はぁ?」
物言いたげな顔をして、全員の視線が集中していたが、ナールはどこ吹く風で、街でナンパでもするように軽薄的に微笑む。
「俺さ、理論派なのよ。直感は使わないことにしてんの。はずれる時あるじゃん? でもさ、気づくと使ってるんだよね。だから、それも神さまのお導きってことで、全然いいじゃん? 結果オーライなんだし」
トラップ天使なりにきちんと神の意思をまっとうしていた、策という名の罠を用いて。
白い修験者の姿をしている、アドスは数珠をした手で、紫色の短髪をくしゃくしゃにかき上げた。
「敵が弱すぎったっす」
「勝っちゃうと、次出てきちゃうからね。手加減すんの大変」
ナールのマダラ模様の声を聞いて、崇剛はすうっと真顔に戻った。最後に戦況をひっくり返したのは、立派な両翼と光る輪っかを頭に乗せている天使みたいな男だ。
どんなルートで神の戦略を、ナールは聞いていたのだろうか。いや、いつから知っていたのだろうか。
崇剛の中で疑問が渦巻いているのに構わず、天使たちの話は続いてゆく。
白いロングコートを風になびかせながら、シズキの鋭利なスミレ色の瞳は、今は神の結界によって見えなくなってしまった敵陣へ向けられていた。
「あの程度とは邪神界は所詮、脳みそが砂粒大の集まりだな。劣勢に見せかけていたに決まっているだろう。正神界は慌てて準備をしたという想定内で戦っていたんだからな」
慌てて陣を整えたような振りをして、相手に好機だと思わせる――。見事なまでに完璧な神の策だった。
カミエは嬉しそうに目を細め、袴の袖に包まれた両腕を腰のあたりで組み、地鳴りのような低い声で言う。
「いい修業になった」
「いい演技の練習になりました」
クリュダがにっこりと微笑むと、天使と霊の陣営全員が目が点になった。
「違ってない?」
*
――――庭崎市の中心街を抜けて、実りの秋の匂いが広がる田園風景を、一台の自動車が猛スピードで走り抜けていた。
小高い丘の上に見える赤煉瓦の二階建ての洋館。そこへ続く坂道を自動車は登り始める。
胸の前で組まれた両腕には、太いシルバーリング六つがつけられており、人差し指がトントンと落ち着きなく、迷彩柄のシャツを着た腕に打ちつけられていた。
*
――――残り火のような夕日があと一筋で、旧聖堂から消えてしまう時間帯。見えているのはこの世だけで、霊界での出来事は音ばかりが聞こえていたダルレシアン 。
彼は声がしたほうへ、聡明な瑠璃紺色の瞳を向けて、ふんわりと微笑んだ。
「どうやって勝ったの?」
ラジュは人差し指をこめかみに突き立て、今までにないほど困った顔をする。
「それが、神からそちらは教えていただけないんです~」
ニコニコのまぶたは片目だけ開いて、彫りの深い無機質な表情をしているナールをじっと見ていた。
「何、お前?」
赤い目がみんなのほうへ向いた。
崇剛は思う。言い逃れはできない。さっき、指をパチンと鳴らしているのを、この目でしかと見たのだから。
ダルレシアンは漆黒の長い髪を、つうっとすくように斜め上に伸ばし、弄びながら、じっとりとまとわりつくように聞いた。
「ナールが敵とボクたちの場所を入れ替えた……のかな?」
意識が薄れていく間に感じた遠心力のあと、敵陣に火の玉が落ちていったのは、そう考えるのが妥当だろう。どんな原理かは理論的に説明はできないが。
「先ほど、武器と他のものを交換していましたからね。どのような力なのですか?」
あごに指を当てたまま、崇剛はナールを逃さないと言うように凝視したが、当の本人から出てきた言葉は摩訶不思議だった。
「魔法?」
「えぇっ?」
後ろに控えていた全員が驚きの声を上げるが、ナールは真顔で言う。
「いつの間にかそうなってた?」
「はぁ?」
物言いたげな顔をして、全員の視線が集中していたが、ナールはどこ吹く風で、街でナンパでもするように軽薄的に微笑む。
「俺さ、理論派なのよ。直感は使わないことにしてんの。はずれる時あるじゃん? でもさ、気づくと使ってるんだよね。だから、それも神さまのお導きってことで、全然いいじゃん? 結果オーライなんだし」
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