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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Time of judgement/26
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この戦いが始まる前から、いつ誰がどんな言葉を言って、何が本当の目的で戦っているのか。そうして今、少し様子のおかしい天使たちの意味は何なのか。
心を聞かれてしまう状況下では質問することも思い浮かべることもできない。それでも、崇剛とダルレシアンはそれぞれ必要な情報を得るのに、素早くまわりを見渡した。
珍しく神妙な顔つきをしているラジュの隣に立っている、カミエは誰とも視線を合わせないように、遠くの空をじっと見つめている。
ナールは相変わらずで、大鎌を手裏剣のように投げては、戻ってこなくなると、色情魔のポケットに入っているアイテムと交換して、武器を取り戻している。
シズキは拳銃を抜く気配もなく、ナルシスト的にポーズを決めて立っていて、アドスは戦場で戦い続けている味方をただただ眺めているだけだった。
そうして、崇剛とダルレシアンの瞳は最後に、クリュダを見たが、彼はパピルスに夢中で論外だった。
(そちらが本当の目的だったみたいです。目標に達したのかもしれません)
(それが本当だったかも? 必要なくなったのかも?)
何重にも張られた神の戦略を、人間ふたりの策士は読み切った。
「そういうことみたいです」
「そういうことかも?」
崇剛とダルレシアンは同時に口にした。
策略家神父と教祖の注目すべき点は、メインのメンバーで唯一女性――瑠璃のことだった。
心は相手に筒抜け――。正直で素直な人には嘘がつけない。つまり、ラジュが最初に説明していた話は何かが嘘なのだ。
冷静な水色の瞳と聡明な瑠璃紺色の瞳が出会うと、お互い微笑み合った。そんなことをしていると、噂の瑠璃が崇剛たちの元へ走り込んできた。
「すまぬ! 札が失くなっての」
「瑠璃さん、構いませんよ」
崇剛は茶色いロングブーツを細身をさらに強調させるように左右へクロスする寸前のポーズを取ったまま、聖女を背中でかばった。
「瑠璃姫を守るナイトだね、俺たちは」
魔除のローズマリーの香りに乗せられた、ダルレシアンの柔らかな声に、瑠璃はびっくりして、素っ頓狂な声を上げた。
「ひ、姫!? な、何じゃ!?」
ベルダージュ荘で暮らしてきた百年近くの歳月で、そんな呼び方をする人物は誰もいなかった。瑠璃は変な汗をじわりと手のひらにかく。
白いローブの背中を見せたまま、ダルレシアンは首だけで振り返り、小さな聖女の若草色の瞳があるだろうところをじっと見つめた。
「だって、そうでしょ? 瑠璃姫は女の子なんだから」
聖女の扇子のような袖をともなった小さな指は、魔導師へ突きつけられ、
「は、恥ずかしいからやめぬか! その呼び方は。戦っておる最中であろう!」
ダルレシアンは直接見ることは叶わないが、憤慨している少女が容易に想像できて、少しだけ笑う。
「ふふっ。ボクもかっこいいって言われたら、とっても恥ずかしいかも?」
「ならば何故、我に申すのじゃ?」
「悪戯かも?」
味方は劣勢だと言って戻ってきているのに、遊んでいる魔導師に、ラジュから注意が入ったが、
「かもではありません~。確信犯です~」
ツッコミポイントがズレていた。恋のライバルという炎がバックにメラメラと燃え盛っているような、戯言天使だった。
「ラジュは瑠璃姫に気があるのかな?」
「おや~? そのように聞くとは、あなたこそ好意を持っているんではないんですか?」
ちょっかいを出して――。片目だけ開かれたヴァイオレットの瞳は、世界を恐怖で震え上がらせるような凄みを持っていた。
見えていないダルレシアンは怯えることなく、困った顔をして小首を可愛くかしげた。
「あれ~? そうだったかな?」
そうして、ラジュとダルレシアンで一悶着始まる。
「とぼけるつもりですか~?」
「あれ? そうだったかな?」
「とぼけるつもりですか~?」
「あれ? そうだったかな?」
「とぼけるつもりですか~?」
壊れたおもちゃみたいに、さっきから同じ繰り返しで、痺れを切らしたシズキは形のいい眉をピクつかせながら、火山が噴火した如く叫んだ。
「貴様らは、リピートするやまびこか!」
まわりで聞いていた味方全員が驚きの声を上げた。
「どれだけ繰り返す気だ!」
「お前たち、遊ばないよ? 真面目にやって」
そう言うナールの攻撃の手も止まっていた。
心を聞かれてしまう状況下では質問することも思い浮かべることもできない。それでも、崇剛とダルレシアンはそれぞれ必要な情報を得るのに、素早くまわりを見渡した。
珍しく神妙な顔つきをしているラジュの隣に立っている、カミエは誰とも視線を合わせないように、遠くの空をじっと見つめている。
ナールは相変わらずで、大鎌を手裏剣のように投げては、戻ってこなくなると、色情魔のポケットに入っているアイテムと交換して、武器を取り戻している。
シズキは拳銃を抜く気配もなく、ナルシスト的にポーズを決めて立っていて、アドスは戦場で戦い続けている味方をただただ眺めているだけだった。
そうして、崇剛とダルレシアンの瞳は最後に、クリュダを見たが、彼はパピルスに夢中で論外だった。
(そちらが本当の目的だったみたいです。目標に達したのかもしれません)
(それが本当だったかも? 必要なくなったのかも?)
何重にも張られた神の戦略を、人間ふたりの策士は読み切った。
「そういうことみたいです」
「そういうことかも?」
崇剛とダルレシアンは同時に口にした。
策略家神父と教祖の注目すべき点は、メインのメンバーで唯一女性――瑠璃のことだった。
心は相手に筒抜け――。正直で素直な人には嘘がつけない。つまり、ラジュが最初に説明していた話は何かが嘘なのだ。
冷静な水色の瞳と聡明な瑠璃紺色の瞳が出会うと、お互い微笑み合った。そんなことをしていると、噂の瑠璃が崇剛たちの元へ走り込んできた。
「すまぬ! 札が失くなっての」
「瑠璃さん、構いませんよ」
崇剛は茶色いロングブーツを細身をさらに強調させるように左右へクロスする寸前のポーズを取ったまま、聖女を背中でかばった。
「瑠璃姫を守るナイトだね、俺たちは」
魔除のローズマリーの香りに乗せられた、ダルレシアンの柔らかな声に、瑠璃はびっくりして、素っ頓狂な声を上げた。
「ひ、姫!? な、何じゃ!?」
ベルダージュ荘で暮らしてきた百年近くの歳月で、そんな呼び方をする人物は誰もいなかった。瑠璃は変な汗をじわりと手のひらにかく。
白いローブの背中を見せたまま、ダルレシアンは首だけで振り返り、小さな聖女の若草色の瞳があるだろうところをじっと見つめた。
「だって、そうでしょ? 瑠璃姫は女の子なんだから」
聖女の扇子のような袖をともなった小さな指は、魔導師へ突きつけられ、
「は、恥ずかしいからやめぬか! その呼び方は。戦っておる最中であろう!」
ダルレシアンは直接見ることは叶わないが、憤慨している少女が容易に想像できて、少しだけ笑う。
「ふふっ。ボクもかっこいいって言われたら、とっても恥ずかしいかも?」
「ならば何故、我に申すのじゃ?」
「悪戯かも?」
味方は劣勢だと言って戻ってきているのに、遊んでいる魔導師に、ラジュから注意が入ったが、
「かもではありません~。確信犯です~」
ツッコミポイントがズレていた。恋のライバルという炎がバックにメラメラと燃え盛っているような、戯言天使だった。
「ラジュは瑠璃姫に気があるのかな?」
「おや~? そのように聞くとは、あなたこそ好意を持っているんではないんですか?」
ちょっかいを出して――。片目だけ開かれたヴァイオレットの瞳は、世界を恐怖で震え上がらせるような凄みを持っていた。
見えていないダルレシアンは怯えることなく、困った顔をして小首を可愛くかしげた。
「あれ~? そうだったかな?」
そうして、ラジュとダルレシアンで一悶着始まる。
「とぼけるつもりですか~?」
「あれ? そうだったかな?」
「とぼけるつもりですか~?」
「あれ? そうだったかな?」
「とぼけるつもりですか~?」
壊れたおもちゃみたいに、さっきから同じ繰り返しで、痺れを切らしたシズキは形のいい眉をピクつかせながら、火山が噴火した如く叫んだ。
「貴様らは、リピートするやまびこか!」
まわりで聞いていた味方全員が驚きの声を上げた。
「どれだけ繰り返す気だ!」
「お前たち、遊ばないよ? 真面目にやって」
そう言うナールの攻撃の手も止まっていた。
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