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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Time of judgement/19
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「そうなんです! 信じることが大切なんですよ。実は、先日もピラミッドの中を探していたんですが、左か右かで迷ったんです。結局、右から探したんですが――」
まだ長々と続きそうだった話の途中で、ラジュの女性的で柔らかい声が割って入った。
「カミエ~、出番がきましたよ~」
「しかと受け取った!」
指名された修業バカは、わかるように四字熟語をひとつひとつ離して、合気の技をかけるように艶やかに言った。
「研・究・者・魂、だ。クリュダに遺跡の話は厳禁だ」
収集がつかないほど、天使たちの個性が発揮された話が次々に流れてゆく。シズキは鋭利なスミレ色の瞳で、ことの発端が誰にあるのかしっかりと突きつけてやった。
「アドス、貴様! 火をつけたことに責任を取れ! クリュダが機関銃のように話し出すのが目に見えているだろう」
どこ吹く風で、アドスは目を丸くする。
「何、怒ってるっすか?」
この男はいつだって、真に受けないで、シズキの勘に触るのだった。
「いつか決着をつけてやろうと思っていたが、今にしてやる! ありがたく、消滅へと落ちるがいい! 貴様、フロンティア でぶち抜いてやる!」
武術と聞いて、アドスは俄然乗り気になった。得意げな顔で身を乗り出す。
「やるっすか? いいっすよ。いつでも受けて立つっす。俺っち、こう見えても強いっすからね」
俺様天使を逆なでする――。
「二度とその口利けないようにしてやる!」
シズキの俺様ボイスが戦場に響き渡ると、間合いを取るために、お互い五メートルほど離れたところに瞬間移動した。
鋭利なスミレ色の瞳と人懐っこそうな天色の瞳はにらみ合う。
張り詰めている空気。不意に吹いてきた強風に、ゴスパンクの白いロングコートがはためくと、シズキはいつも通り横向きで銃を構え、機関銃のように銃弾を、修験者へお見舞いしてやった。
ズバババババッ!
スピン、スピン、スピン!
なぜか全て、金の錫杖に弾き返されてしまって、かすりもしなかった。シズキは一度銃弾を装填する霊力を止めて、アドスと自身の手の中にある拳銃――フロンティアを見比べる。
「くそっ! なぜ、当たらない?」
「それでは無理だ」
カミエは興味深いものに出会えたように、目を細めて彼なりの笑みを浮かべていた。シズキは男らしいシャープな横顔を凝視する。
「なぜだ?」
「あいつは見た目はああでも、伝説の武術家と言われている。お前の球には当たらない」
素晴らしい技を前にして、カミエは珍しく感嘆していた。シズキは何を寝ぼけたことをと思う。
「こっちは飛び道具だ。当たらないはずがない」
銃と剣――。誰がどう見たって、シズキが勝つはずなのだ。それなのに、合気の達人は違うと言う。なぜ当たらないのか、武道家らしい言葉で、カミエは説明し始めた。
「殺気だ。殺気を読んで、お前の攻撃が次にどこへ向かってくるのかを読んでいる。だから、避けられる」
「殺気を読まれている……?」
「お前が銃の達人なら話は別だ」
さっきから怒り色で全身が染まっているシズキは、武術の達人たちから見れば殺気だらけ。どうしても、能天気天使を倒したいナルシスト天使は、カミエに問うた。
「どうしたら、殺気をなくせる?」
拳銃の攻撃力に頼り気味なシズキからの質問。彼がどう反応するのか簡単にわかって、カミエの瞳はより一層細くなった。
「あいつに感謝をすることだ。相手にありがとうという気持ちを持つと、相手の気の流れを自分へ取り込むことができる。すなわち、相手の動きや意思を自分の思う通りに動かすことができやすくなる。だから、今のお前には無理だ」
誰が、あいつに頭を下げてなるものか――
「くそっ!」
シズキは悔しそうに片足で地面を強く蹴りつけた。フロンティアをレッグホルスターへすっとしまい、咳払いをして、何事もなかったように乱れた銀の髪を綺麗に戻しながら、
「んんっ! きょ、今日のところは許してやる、ありがたく思え」
まだ長々と続きそうだった話の途中で、ラジュの女性的で柔らかい声が割って入った。
「カミエ~、出番がきましたよ~」
「しかと受け取った!」
指名された修業バカは、わかるように四字熟語をひとつひとつ離して、合気の技をかけるように艶やかに言った。
「研・究・者・魂、だ。クリュダに遺跡の話は厳禁だ」
収集がつかないほど、天使たちの個性が発揮された話が次々に流れてゆく。シズキは鋭利なスミレ色の瞳で、ことの発端が誰にあるのかしっかりと突きつけてやった。
「アドス、貴様! 火をつけたことに責任を取れ! クリュダが機関銃のように話し出すのが目に見えているだろう」
どこ吹く風で、アドスは目を丸くする。
「何、怒ってるっすか?」
この男はいつだって、真に受けないで、シズキの勘に触るのだった。
「いつか決着をつけてやろうと思っていたが、今にしてやる! ありがたく、消滅へと落ちるがいい! 貴様、フロンティア でぶち抜いてやる!」
武術と聞いて、アドスは俄然乗り気になった。得意げな顔で身を乗り出す。
「やるっすか? いいっすよ。いつでも受けて立つっす。俺っち、こう見えても強いっすからね」
俺様天使を逆なでする――。
「二度とその口利けないようにしてやる!」
シズキの俺様ボイスが戦場に響き渡ると、間合いを取るために、お互い五メートルほど離れたところに瞬間移動した。
鋭利なスミレ色の瞳と人懐っこそうな天色の瞳はにらみ合う。
張り詰めている空気。不意に吹いてきた強風に、ゴスパンクの白いロングコートがはためくと、シズキはいつも通り横向きで銃を構え、機関銃のように銃弾を、修験者へお見舞いしてやった。
ズバババババッ!
スピン、スピン、スピン!
なぜか全て、金の錫杖に弾き返されてしまって、かすりもしなかった。シズキは一度銃弾を装填する霊力を止めて、アドスと自身の手の中にある拳銃――フロンティアを見比べる。
「くそっ! なぜ、当たらない?」
「それでは無理だ」
カミエは興味深いものに出会えたように、目を細めて彼なりの笑みを浮かべていた。シズキは男らしいシャープな横顔を凝視する。
「なぜだ?」
「あいつは見た目はああでも、伝説の武術家と言われている。お前の球には当たらない」
素晴らしい技を前にして、カミエは珍しく感嘆していた。シズキは何を寝ぼけたことをと思う。
「こっちは飛び道具だ。当たらないはずがない」
銃と剣――。誰がどう見たって、シズキが勝つはずなのだ。それなのに、合気の達人は違うと言う。なぜ当たらないのか、武道家らしい言葉で、カミエは説明し始めた。
「殺気だ。殺気を読んで、お前の攻撃が次にどこへ向かってくるのかを読んでいる。だから、避けられる」
「殺気を読まれている……?」
「お前が銃の達人なら話は別だ」
さっきから怒り色で全身が染まっているシズキは、武術の達人たちから見れば殺気だらけ。どうしても、能天気天使を倒したいナルシスト天使は、カミエに問うた。
「どうしたら、殺気をなくせる?」
拳銃の攻撃力に頼り気味なシズキからの質問。彼がどう反応するのか簡単にわかって、カミエの瞳はより一層細くなった。
「あいつに感謝をすることだ。相手にありがとうという気持ちを持つと、相手の気の流れを自分へ取り込むことができる。すなわち、相手の動きや意思を自分の思う通りに動かすことができやすくなる。だから、今のお前には無理だ」
誰が、あいつに頭を下げてなるものか――
「くそっ!」
シズキは悔しそうに片足で地面を強く蹴りつけた。フロンティアをレッグホルスターへすっとしまい、咳払いをして、何事もなかったように乱れた銀の髪を綺麗に戻しながら、
「んんっ! きょ、今日のところは許してやる、ありがたく思え」
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