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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Time of judgement/7
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もっともな心配事だったが、ナールは気にした様子もなく、
「そう?」
今度は左手を高々とかかげた。
「こうすると……」
手のひらで何かを引くような仕草をすると、敵を切り裂きながら大鎌に帰巣本能があるように、ナールに向かって猛スピードで近寄ってきた。
鉄同士がすれ合う音が響くと、ナールの手のひらに無事に戻ってきていた。
「ほら、ね?」
これみよがしに、大鎌を見せつけられたシズキは不思議そうな顔をする。
「貴様の武器はどうなっている?」
ナールは武器を持ち上げたり下ろしたりする。
「大鎌って重たいし大きから、持ちっぱなしじゃ疲れちゃうじゃん? だから、いっつも神界に隠してあんの。で、手上げて引き寄せると、こうやって、持ち主の俺んとこに飛んでくんの」
究極の合理主義だった。
シズキは初めて聞く話だと思った。カミエの腰元に挿してある日本刀。アドスが手に持つ錫杖。あれが武器と言えるかどうかは、また別の問題だが。さらには、未だシャベルで敵陣を突っ切っているクリュダが持つ、本来の武器はやはり腰元に挿してある。
そうして、隣でニコニコとしている女性的な男にだって、武器はあるので――
「ナールならできるかもしれませんね~?」
凛とした澄んだ声が響いて、シズキは我に返らずを得なかった。なぜなら、その声色はいつもと違って、地をはうほど低いものだったからだ。
誘迷で邪悪なヴァイオレットの瞳は珍しくまぶたから解放され、ナールをどんな隙も見逃さないと言ったように見つめていた。
シズキはあきれたため息をつく。
「策士どもは、罠を張らないと会話ができないとは、何とも滑稽だな」
霊的に盲目なダルレシアンは、遠くで巻き起こる戦いの音を聞きながら、そばで話されていた内容が気になった。
「神界って、神様のいる場所のこと?」
「えぇ」優雅にうなずいた崇剛の中で、可能性の針が大きく触れる。
滝のように流れている今までのデータと照らし合わせると、やはりナールは敵ではないという可能性が非常に高くなる。
立派な両翼を広げ、頭に光る輪っかを載せている男が、大鎌を手裏剣のように投げている姿を目で追う。
同じ天使をうかがっていたダルレシアンは、手に持っているカードの山と交互に見つめた。
「ボクのもナールと同じってことかな?」
独り言をぶつぶつと言っているダルレシアン。彼よりも何よりも、崇剛は気になった。ナール自身が言った言葉が。
「武器を神界に……」
正直な存在だと、ラジュにも言ったが、戯言天使は否定はしなかった。そうなると、ナールが言ったことは本当のことになる。
だからこそ、崇剛の中でこの可能性が浮かび上がったのだ。
ナールは天使でもない――
立派な両翼と光る輪っかが頭に載っているが、今までのデータからすると、あれは仮の姿ということになってしまうのだった。
だがしかし、それを確定させるのは難しいだろう。それならば、崇剛はどうしても手に入れたい他の情報を優先させる。それは、
味方の武器は味方に効果があるのだろうか――だ。
ラジュは武器の使用をさけているようで、他の天使から情報を得るのが賢明。今この戦いで手に入れるのが、もっとも合理的で迅速だ。
だが、命がけの戦場。そうそう機会がめぐってくるはずもなかったが、崇剛はひとまず待つことにした。
邪神界の軍勢は我先に、メシア保有者へどっと押し寄せ、相手の顔が微かに見える位置まで進軍してきていた。
「そう?」
今度は左手を高々とかかげた。
「こうすると……」
手のひらで何かを引くような仕草をすると、敵を切り裂きながら大鎌に帰巣本能があるように、ナールに向かって猛スピードで近寄ってきた。
鉄同士がすれ合う音が響くと、ナールの手のひらに無事に戻ってきていた。
「ほら、ね?」
これみよがしに、大鎌を見せつけられたシズキは不思議そうな顔をする。
「貴様の武器はどうなっている?」
ナールは武器を持ち上げたり下ろしたりする。
「大鎌って重たいし大きから、持ちっぱなしじゃ疲れちゃうじゃん? だから、いっつも神界に隠してあんの。で、手上げて引き寄せると、こうやって、持ち主の俺んとこに飛んでくんの」
究極の合理主義だった。
シズキは初めて聞く話だと思った。カミエの腰元に挿してある日本刀。アドスが手に持つ錫杖。あれが武器と言えるかどうかは、また別の問題だが。さらには、未だシャベルで敵陣を突っ切っているクリュダが持つ、本来の武器はやはり腰元に挿してある。
そうして、隣でニコニコとしている女性的な男にだって、武器はあるので――
「ナールならできるかもしれませんね~?」
凛とした澄んだ声が響いて、シズキは我に返らずを得なかった。なぜなら、その声色はいつもと違って、地をはうほど低いものだったからだ。
誘迷で邪悪なヴァイオレットの瞳は珍しくまぶたから解放され、ナールをどんな隙も見逃さないと言ったように見つめていた。
シズキはあきれたため息をつく。
「策士どもは、罠を張らないと会話ができないとは、何とも滑稽だな」
霊的に盲目なダルレシアンは、遠くで巻き起こる戦いの音を聞きながら、そばで話されていた内容が気になった。
「神界って、神様のいる場所のこと?」
「えぇ」優雅にうなずいた崇剛の中で、可能性の針が大きく触れる。
滝のように流れている今までのデータと照らし合わせると、やはりナールは敵ではないという可能性が非常に高くなる。
立派な両翼を広げ、頭に光る輪っかを載せている男が、大鎌を手裏剣のように投げている姿を目で追う。
同じ天使をうかがっていたダルレシアンは、手に持っているカードの山と交互に見つめた。
「ボクのもナールと同じってことかな?」
独り言をぶつぶつと言っているダルレシアン。彼よりも何よりも、崇剛は気になった。ナール自身が言った言葉が。
「武器を神界に……」
正直な存在だと、ラジュにも言ったが、戯言天使は否定はしなかった。そうなると、ナールが言ったことは本当のことになる。
だからこそ、崇剛の中でこの可能性が浮かび上がったのだ。
ナールは天使でもない――
立派な両翼と光る輪っかが頭に載っているが、今までのデータからすると、あれは仮の姿ということになってしまうのだった。
だがしかし、それを確定させるのは難しいだろう。それならば、崇剛はどうしても手に入れたい他の情報を優先させる。それは、
味方の武器は味方に効果があるのだろうか――だ。
ラジュは武器の使用をさけているようで、他の天使から情報を得るのが賢明。今この戦いで手に入れるのが、もっとも合理的で迅速だ。
だが、命がけの戦場。そうそう機会がめぐってくるはずもなかったが、崇剛はひとまず待つことにした。
邪神界の軍勢は我先に、メシア保有者へどっと押し寄せ、相手の顔が微かに見える位置まで進軍してきていた。
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