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心霊探偵はエレガントに〜karma〜

Time of judgement/5

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「それって、誰かにもらったの?」
「神からいただいたものだと信じています」
「Why do you think so?/どうして、そう思うの?」
「幼い頃、私はこちらの旧聖堂で、今は亡きラハイアット夫妻に拾われました。その時、私の傍に置いてあったものだそうです」

 物心がつき、ある日打ち明けられた、実の子供ではないという事実。

 初めはショックをずいぶん受けたものだが、自身の起源を知りたくて、ラハイアット夫妻にしつこく聞いたが、身分を証明するものはなく、このダガーだけがやけに神聖なる存在を放っていたようだった。

「そう。じゃあ、ボクのもやっぱりそうなのかな?」

 爪を見るのはやめて、ダルレシアンは今度は漆黒の長い髪を指先でつまんで、すくようにつうっと引っ張り出した。

「あなたは何を持っているのですか?」
「ボクのは武器じゃないかも?」

 指先から最後の髪がスルッと離れると、ダルレシアンは小首を可愛くかしげた。

 質問をしたのに、疑問形が返ってきた。しかも、不確定要素。

 策なのか。それとも、何とも表現しがたいものなのか。

「ですが、先ほど、ラジュ天使が瑠璃は私たちの後方へ逃げるようにおっしゃっていましたが?」

 言い逃れをしようとも、証拠は出ている。崇剛は興味をそそられた。

「Come?」

 ダルレシアンはそう言って、手のひらを体の前に差し出した。淡い光を放って、手のひらサイズの長方形のものが現れる。

「きた。こ~れ~!」

 それは、シュトライツ王国で拘束される前夜に、天国へと送り飛ばしたものだった。

 崇剛は異国の香りがするアイテムを、今までの本の中から該当するものから見つけてきた。

「タロットカード? 占いで使うと本には載っていましたが……」

「そう」と、ダルレシアンはうなずきて、手のひらでカードを切った。
「大アルカナの二十二枚だけね。召喚魔法ってとこかな?」

 ひとつにまとめると、魔導師の視線につられるように、カードたちは空中へ持ち上がり、くるくると光の尾を引きながら回り出した。

「小さい時から、ボクのそばにあったらしい。普段は使わないんだけど、試しにこっそり使ったりしてた。魔導師のメシアの力を増幅するものかも?」

 メシア保有者のほとんどは、自身の能力について知らない。千里眼を持つ崇剛のように、霊的な存在と話ができれば別だが。

 カードが放つ光が、ダルレシアンの凛々しい眉を照らすのが、崇剛の冷静な水色の瞳には映っていた。

「いつも持ち歩いてはいないのですか?」

 生命がなくなったように、カードはダルレシアンの手のひらにおとなしく整列して戻った。

「ううん。持ってるけど、なくす心配がある時とか、誰かに使われそうな時は、どこか違う場所に隠しておくの」
「どちらへですか?」
「ん~? 天国かも?」

 ダルレシアンは本当に不思議そうに首をかしげた。

「不明瞭なのですね?」
「そう」

 確かに、天国へと送っているが、それが本当にその場所なのかは確信がなかった。

 教祖という立場で、タロットカードがそばに置いてあっても、誰も疑問に思わない。かと言って、紛失したとしても、他の誰かが探し出すこともなく、気づくと目の前にある。手品みたいな存在のタロットカード。

 同じメシア保有者の崇剛なら、何か理論的な答えを持っているかと思って、ダルレシアンは聞いてみた。

「ボクの手元にきたり、急になくなったりするのって、理論的に説明がつかないよね?」
「えぇ、ですが……」

 崇剛を返事を濁しながら、赤目の天使をうかがった。ラジュは別として、ナールも武器を所持している感じはしなかった。

 同じ原理が働いているのならば、どこかに隠して置ける場所があるのもおかしくはなかった。

 見えるものしか信じない教祖は、漆黒の髪を指先でつうっと伸ばしながら、小首をかしげ、聖堂の崩れ落ちそうな天井を見上げた。

「う~ん? でも、神様の持ち物をボクが借りてるって考えるのが、一番しっくりくるかも?」
「神を信じるのですか?」

 崇剛はナールから視線をダルレシアンへ戻し、くすりと笑う。信念が修正の必要性があるのなら、デジタルに切り替える。何とも柔軟性のある面白い男だと、崇剛は思った。

 ダルレシアンは納得がいかないながらも、

「ん~? 信じるしかないのかも?」

 確定はしなかったが、神が存在するという可能性が高いと認めざるを負えなかった。
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