709 / 967
心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Time of judgement/5
しおりを挟む
「それって、誰かにもらったの?」
「神からいただいたものだと信じています」
「Why do you think so?/どうして、そう思うの?」
「幼い頃、私はこちらの旧聖堂で、今は亡きラハイアット夫妻に拾われました。その時、私の傍に置いてあったものだそうです」
物心がつき、ある日打ち明けられた、実の子供ではないという事実。
初めはショックをずいぶん受けたものだが、自身の起源を知りたくて、ラハイアット夫妻にしつこく聞いたが、身分を証明するものはなく、このダガーだけがやけに神聖なる存在を放っていたようだった。
「そう。じゃあ、ボクのもやっぱりそうなのかな?」
爪を見るのはやめて、ダルレシアンは今度は漆黒の長い髪を指先でつまんで、すくようにつうっと引っ張り出した。
「あなたは何を持っているのですか?」
「ボクのは武器じゃないかも?」
指先から最後の髪がスルッと離れると、ダルレシアンは小首を可愛くかしげた。
質問をしたのに、疑問形が返ってきた。しかも、不確定要素。
策なのか。それとも、何とも表現し難いものなのか。
「ですが、先ほど、ラジュ天使が瑠璃は私たちの後方へ逃げるようにおっしゃっていましたが?」
言い逃れをしようとも、証拠は出ている。崇剛は興味をそそられた。
「Come?」
ダルレシアンはそう言って、手のひらを体の前に差し出した。淡い光を放って、手のひらサイズの長方形のものが現れる。
「きた。こ~れ~!」
それは、シュトライツ王国で拘束される前夜に、天国へと送り飛ばしたものだった。
崇剛は異国の香りがするアイテムを、今までの本の中から該当するものから見つけてきた。
「タロットカード? 占いで使うと本には載っていましたが……」
「そう」と、ダルレシアンはうなずきて、手のひらでカードを切った。
「大アルカナの二十二枚だけね。召喚魔法ってとこかな?」
ひとつにまとめると、魔導師の視線につられるように、カードたちは空中へ持ち上がり、くるくると光の尾を引きながら回り出した。
「小さい時から、ボクのそばにあったらしい。普段は使わないんだけど、試しにこっそり使ったりしてた。魔導師のメシアの力を増幅するものかも?」
メシア保有者のほとんどは、自身の能力について知らない。千里眼を持つ崇剛のように、霊的な存在と話ができれば別だが。
カードが放つ光が、ダルレシアンの凛々しい眉を照らすのが、崇剛の冷静な水色の瞳には映っていた。
「いつも持ち歩いてはいないのですか?」
生命がなくなったように、カードはダルレシアンの手のひらにおとなしく整列して戻った。
「ううん。持ってるけど、なくす心配がある時とか、誰かに使われそうな時は、どこか違う場所に隠しておくの」
「どちらへですか?」
「ん~? 天国かも?」
ダルレシアンは本当に不思議そうに首をかしげた。
「不明瞭なのですね?」
「そう」
確かに、天国へと送っているが、それが本当にその場所なのかは確信がなかった。
教祖という立場で、タロットカードがそばに置いてあっても、誰も疑問に思わない。かと言って、紛失したとしても、他の誰かが探し出すこともなく、気づくと目の前にある。手品みたいな存在のタロットカード。
同じメシア保有者の崇剛なら、何か理論的な答えを持っているかと思って、ダルレシアンは聞いてみた。
「ボクの手元にきたり、急になくなったりするのって、理論的に説明がつかないよね?」
「えぇ、ですが……」
崇剛を返事を濁しながら、赤目の天使をうかがった。ラジュは別として、ナールも武器を所持している感じはしなかった。
同じ原理が働いているのならば、どこかに隠して置ける場所があるのもおかしくはなかった。
見えるものしか信じない教祖は、漆黒の髪を指先でつうっと伸ばしながら、小首をかしげ、聖堂の崩れ落ちそうな天井を見上げた。
「う~ん? でも、神様の持ち物をボクが借りてるって考えるのが、一番しっくりくるかも?」
「神を信じるのですか?」
崇剛はナールから視線をダルレシアンへ戻し、くすりと笑う。信念が修正の必要性があるのなら、デジタルに切り替える。何とも柔軟性のある面白い男だと、崇剛は思った。
ダルレシアンは納得がいかないながらも、
「ん~? 信じるしかないのかも?」
確定はしなかったが、神が存在するという可能性が高いと認めざるを負えなかった。
「神からいただいたものだと信じています」
「Why do you think so?/どうして、そう思うの?」
「幼い頃、私はこちらの旧聖堂で、今は亡きラハイアット夫妻に拾われました。その時、私の傍に置いてあったものだそうです」
物心がつき、ある日打ち明けられた、実の子供ではないという事実。
初めはショックをずいぶん受けたものだが、自身の起源を知りたくて、ラハイアット夫妻にしつこく聞いたが、身分を証明するものはなく、このダガーだけがやけに神聖なる存在を放っていたようだった。
「そう。じゃあ、ボクのもやっぱりそうなのかな?」
爪を見るのはやめて、ダルレシアンは今度は漆黒の長い髪を指先でつまんで、すくようにつうっと引っ張り出した。
「あなたは何を持っているのですか?」
「ボクのは武器じゃないかも?」
指先から最後の髪がスルッと離れると、ダルレシアンは小首を可愛くかしげた。
質問をしたのに、疑問形が返ってきた。しかも、不確定要素。
策なのか。それとも、何とも表現し難いものなのか。
「ですが、先ほど、ラジュ天使が瑠璃は私たちの後方へ逃げるようにおっしゃっていましたが?」
言い逃れをしようとも、証拠は出ている。崇剛は興味をそそられた。
「Come?」
ダルレシアンはそう言って、手のひらを体の前に差し出した。淡い光を放って、手のひらサイズの長方形のものが現れる。
「きた。こ~れ~!」
それは、シュトライツ王国で拘束される前夜に、天国へと送り飛ばしたものだった。
崇剛は異国の香りがするアイテムを、今までの本の中から該当するものから見つけてきた。
「タロットカード? 占いで使うと本には載っていましたが……」
「そう」と、ダルレシアンはうなずきて、手のひらでカードを切った。
「大アルカナの二十二枚だけね。召喚魔法ってとこかな?」
ひとつにまとめると、魔導師の視線につられるように、カードたちは空中へ持ち上がり、くるくると光の尾を引きながら回り出した。
「小さい時から、ボクのそばにあったらしい。普段は使わないんだけど、試しにこっそり使ったりしてた。魔導師のメシアの力を増幅するものかも?」
メシア保有者のほとんどは、自身の能力について知らない。千里眼を持つ崇剛のように、霊的な存在と話ができれば別だが。
カードが放つ光が、ダルレシアンの凛々しい眉を照らすのが、崇剛の冷静な水色の瞳には映っていた。
「いつも持ち歩いてはいないのですか?」
生命がなくなったように、カードはダルレシアンの手のひらにおとなしく整列して戻った。
「ううん。持ってるけど、なくす心配がある時とか、誰かに使われそうな時は、どこか違う場所に隠しておくの」
「どちらへですか?」
「ん~? 天国かも?」
ダルレシアンは本当に不思議そうに首をかしげた。
「不明瞭なのですね?」
「そう」
確かに、天国へと送っているが、それが本当にその場所なのかは確信がなかった。
教祖という立場で、タロットカードがそばに置いてあっても、誰も疑問に思わない。かと言って、紛失したとしても、他の誰かが探し出すこともなく、気づくと目の前にある。手品みたいな存在のタロットカード。
同じメシア保有者の崇剛なら、何か理論的な答えを持っているかと思って、ダルレシアンは聞いてみた。
「ボクの手元にきたり、急になくなったりするのって、理論的に説明がつかないよね?」
「えぇ、ですが……」
崇剛を返事を濁しながら、赤目の天使をうかがった。ラジュは別として、ナールも武器を所持している感じはしなかった。
同じ原理が働いているのならば、どこかに隠して置ける場所があるのもおかしくはなかった。
見えるものしか信じない教祖は、漆黒の髪を指先でつうっと伸ばしながら、小首をかしげ、聖堂の崩れ落ちそうな天井を見上げた。
「う~ん? でも、神様の持ち物をボクが借りてるって考えるのが、一番しっくりくるかも?」
「神を信じるのですか?」
崇剛はナールから視線をダルレシアンへ戻し、くすりと笑う。信念が修正の必要性があるのなら、デジタルに切り替える。何とも柔軟性のある面白い男だと、崇剛は思った。
ダルレシアンは納得がいかないながらも、
「ん~? 信じるしかないのかも?」
確定はしなかったが、神が存在するという可能性が高いと認めざるを負えなかった。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R18】鬼上司は今日も私に甘くない
白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。
逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー
法人営業部メンバー
鈴木梨沙:28歳
高濱暁人:35歳、法人営業部部長
相良くん:25歳、唯一の年下くん
久野さん:29歳、一個上の優しい先輩
藍沢さん:31歳、チーフ
武田さん:36歳、課長
加藤さん:30歳、法人営業部事務
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる