706 / 967
心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Time of judgement/2
しおりを挟む
ダルレシアンの脳裏に浮かぶ。真っ白な雲が広がる天国。そこで、バタバタと倒れる女たち。当然ながら、
「それって、仕事が滞るってことだよね?」
話がひと段落した天使たちから、ナールの無機質なうなずきが聞こえ、
「そう。だから、神さまも困っちゃってんの」
彼はけだるそうに、山吹色のボブ髪をかき上げた。
さっきから言われっぱなしのラジュは、こめかみに人差し指を突き立て、珍しく苦渋の表情を見せる。
「私も少々困っているんです~」
ダルレシアンは声がしたほうへ顔を向け、春風が吹いたように柔らかに微笑んだ。
「ラジュはモテモテだね」
「私を褒めても何も出ませんよ~?」
ニコニコしながら言うものだから、やけに凄みを増していた。
しかし、今話題の天使のまわりで起きている摩訶不思議現象はこれだけには収まらず、遊線が螺旋を描く優雅な声で、崇剛がつけ足した。
「それから、知らない女性が勝手についてくるそうですよ」
ダルレシアンは今度、人間である崇剛に視線を向ける。
「それで、邪神界にいた女の子をこっちに連れてきたってこと?」
「えぇ、なぜか、彼女たちが改心したいとおっしゃるので、連れてきてしまいました~。うふふふっ」
風で乱れた金の髪を耳にかけながら、ラジュは不気味な含み笑いをした。
瑠璃はあきれた顔で、金髪天使をチラッと見やった。
「それが千人とはの。お主が邪神界にいたほうがよいのではあるまいか? 次々にこっちへ戻ってくるであろう」
ラジュは手のひらに拳をとんとぶつけておどけた。
「おや~? その手がありましたか。今から私は堕天使になりましょうか~?」
ああ言えばこう言うで、堪えもしない。本気で悪になりそうな、負けること大好き天使。彼に返す言葉が誰にも見つからなかった。
「…………」
敵陣に到着した味方の兵たちが、各々の武器を振り、戦場は静かでありながら着実にせり合いが起きていた。
メインの彼らもそろそろ出陣かというところで、ラジュが今頃思いついたように声を上げた。
「そうでした。失念していました~」
シズキは鋭利なスミレ色の瞳で、戯言天使を射しながら、
「貴様また策を張る気だな? そう言う時は絶対にそうだ」
「違いますよ~?」
語尾がゆるゆると伸び、おどけた感がより一層強く出ていた。
ラジュの女性らしい綺麗な唇から、次に何が出てくるのかと、みんな黙って待っていた。すると、にっこりと柔らかな笑みで戦場を見つめている天使へ伝令された。
「クリュダ、邪神界でとある方から教えていただいたんですが、あなたにとっておきの情報があるんです~」
優しさに満ちあふれた蒼色の瞳は、戦場からラジュへ向けられ、
「どのようなものですか?」
こんな話が、トラップ天使からもたらされたのだった。
「敵の後方に、ナスカの地上絵があるそうです~」
「本当ですかっ!?」
さっきまでの穏やかさはどこかへ吹き飛び、戦場中に響くような驚き声を上げた。カミエは腰のあたりで組んでいた両腕はそのままで、目をつむり、首を横に振る。
「お前また、その手を使って……」
しっかり聞こえているはずなのに、ラジュは素知らぬ振りで、話をゆるゆるとしながら強引に進める。
「えぇ、嘘はついていませんよ~?」
そんなトラップ天使の心のうちは、かなりひどいものだった。
(奇跡は起きるかもしれませんよ~?)
腹黒天使の策に気づかず、クリュダは「ふむ」とうなずいて、
「それは、すぐに行かなくはいけません!」
力強く決心すると、クリュダの手の中に大きなシャベルが現れた。発掘アイテムである。
それを手に、彼は、
「ナスカ~~~~!!!!」
と叫びながら、猪突猛進。戦場にひとり突っ込んでいった。
両翼があることも忘れ、無謀に――いや何かに取り憑かれたように走ってゆく仲間の背中を見ながら、シズキの可愛らしい顔は怒りで歪んでいた。
「貴様、仲間を捨て駒にするとはどういうつもりだ! クリュダにそんなことを言ったら、ひとりで飛び出して行くのは目に見えているだろう」
「していませんよ~? 消滅した時はした時です~」
しれっと答えたラジュの策はあまりにもひどかった。
それに輪をかけて、ナールは無機質な表情で、土煙を上げて去ってゆくクリュダに、冷静にツッコミを入れた。
「ナスカの地上絵って、地上にあるから地上絵なんじゃないの?」
「霊界にはないっすね! 研究バカってやつっすか」
宗教バカのアドスが綺麗にまとめ上げた。
「それって、仕事が滞るってことだよね?」
話がひと段落した天使たちから、ナールの無機質なうなずきが聞こえ、
「そう。だから、神さまも困っちゃってんの」
彼はけだるそうに、山吹色のボブ髪をかき上げた。
さっきから言われっぱなしのラジュは、こめかみに人差し指を突き立て、珍しく苦渋の表情を見せる。
「私も少々困っているんです~」
ダルレシアンは声がしたほうへ顔を向け、春風が吹いたように柔らかに微笑んだ。
「ラジュはモテモテだね」
「私を褒めても何も出ませんよ~?」
ニコニコしながら言うものだから、やけに凄みを増していた。
しかし、今話題の天使のまわりで起きている摩訶不思議現象はこれだけには収まらず、遊線が螺旋を描く優雅な声で、崇剛がつけ足した。
「それから、知らない女性が勝手についてくるそうですよ」
ダルレシアンは今度、人間である崇剛に視線を向ける。
「それで、邪神界にいた女の子をこっちに連れてきたってこと?」
「えぇ、なぜか、彼女たちが改心したいとおっしゃるので、連れてきてしまいました~。うふふふっ」
風で乱れた金の髪を耳にかけながら、ラジュは不気味な含み笑いをした。
瑠璃はあきれた顔で、金髪天使をチラッと見やった。
「それが千人とはの。お主が邪神界にいたほうがよいのではあるまいか? 次々にこっちへ戻ってくるであろう」
ラジュは手のひらに拳をとんとぶつけておどけた。
「おや~? その手がありましたか。今から私は堕天使になりましょうか~?」
ああ言えばこう言うで、堪えもしない。本気で悪になりそうな、負けること大好き天使。彼に返す言葉が誰にも見つからなかった。
「…………」
敵陣に到着した味方の兵たちが、各々の武器を振り、戦場は静かでありながら着実にせり合いが起きていた。
メインの彼らもそろそろ出陣かというところで、ラジュが今頃思いついたように声を上げた。
「そうでした。失念していました~」
シズキは鋭利なスミレ色の瞳で、戯言天使を射しながら、
「貴様また策を張る気だな? そう言う時は絶対にそうだ」
「違いますよ~?」
語尾がゆるゆると伸び、おどけた感がより一層強く出ていた。
ラジュの女性らしい綺麗な唇から、次に何が出てくるのかと、みんな黙って待っていた。すると、にっこりと柔らかな笑みで戦場を見つめている天使へ伝令された。
「クリュダ、邪神界でとある方から教えていただいたんですが、あなたにとっておきの情報があるんです~」
優しさに満ちあふれた蒼色の瞳は、戦場からラジュへ向けられ、
「どのようなものですか?」
こんな話が、トラップ天使からもたらされたのだった。
「敵の後方に、ナスカの地上絵があるそうです~」
「本当ですかっ!?」
さっきまでの穏やかさはどこかへ吹き飛び、戦場中に響くような驚き声を上げた。カミエは腰のあたりで組んでいた両腕はそのままで、目をつむり、首を横に振る。
「お前また、その手を使って……」
しっかり聞こえているはずなのに、ラジュは素知らぬ振りで、話をゆるゆるとしながら強引に進める。
「えぇ、嘘はついていませんよ~?」
そんなトラップ天使の心のうちは、かなりひどいものだった。
(奇跡は起きるかもしれませんよ~?)
腹黒天使の策に気づかず、クリュダは「ふむ」とうなずいて、
「それは、すぐに行かなくはいけません!」
力強く決心すると、クリュダの手の中に大きなシャベルが現れた。発掘アイテムである。
それを手に、彼は、
「ナスカ~~~~!!!!」
と叫びながら、猪突猛進。戦場にひとり突っ込んでいった。
両翼があることも忘れ、無謀に――いや何かに取り憑かれたように走ってゆく仲間の背中を見ながら、シズキの可愛らしい顔は怒りで歪んでいた。
「貴様、仲間を捨て駒にするとはどういうつもりだ! クリュダにそんなことを言ったら、ひとりで飛び出して行くのは目に見えているだろう」
「していませんよ~? 消滅した時はした時です~」
しれっと答えたラジュの策はあまりにもひどかった。
それに輪をかけて、ナールは無機質な表情で、土煙を上げて去ってゆくクリュダに、冷静にツッコミを入れた。
「ナスカの地上絵って、地上にあるから地上絵なんじゃないの?」
「霊界にはないっすね! 研究バカってやつっすか」
宗教バカのアドスが綺麗にまとめ上げた。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
4人の王子に囲まれて
*YUA*
恋愛
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生の結衣は、母の再婚がきっかけとなり4人の義兄ができる。
4人の兄たちは結衣が気に食わず意地悪ばかりし、追い出そうとするが、段々と結衣の魅力に惹かれていって……
4人のイケメン義兄と1人の妹の共同生活を描いたストーリー!
鈴木結衣(Yui Suzuki)
高1 156cm 39kg
シングルマザーで育った貧乏で平凡な女子高生。
母の再婚によって4人の義兄ができる。
矢神 琉生(Ryusei yagami)
26歳 178cm
結衣の義兄の長男。
面倒見がよく優しい。
近くのクリニックの先生をしている。
矢神 秀(Shu yagami)
24歳 172cm
結衣の義兄の次男。
優しくて結衣の1番の頼れるお義兄さん。
結衣と大雅が通うS高の数学教師。
矢神 瑛斗(Eito yagami)
22歳 177cm
結衣の義兄の三男。
優しいけどちょっぴりSな一面も!?
今大人気若手俳優のエイトの顔を持つ。
矢神 大雅(Taiga yagami)
高3 182cm
結衣の義兄の四男。
学校からも目をつけられているヤンキー。
結衣と同じ高校に通うモテモテの先輩でもある。
*注 医療の知識等はございません。
ご了承くださいませ。
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
義母ですが、若返って15歳から人生やり直したらなぜか溺愛されてます
富士とまと
恋愛
25歳で行き遅れとして実家の伯爵家を追い出されるように、父親より3つ年上の辺境伯に後妻として嫁がされました。
5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、亡き夫の形見として「若返りの薬」を渡されました。
15歳からの人生やり直し?義娘と同級生として王立学園へ通うことに。
初めての学校、はじめての社交界、はじめての……。
よし、学園で義娘と義息子のよきパートナー探しのお手伝いをしますよ!お義母様に任せてください!
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる