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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Karma-因果応報-/15
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ラジュが教えてこない限り、いつ崩壊するのかは崇剛にはわからないが、保険金が入ってこないのは事実となるは、もう明らかだった。
自分がどんな罪を起こして、何が原因で今の状態を引き起こしているのか知ろうともせず、逃げることばかり考えている犯人は、媚を売るように聞き返した。
「じゃあ、魂を浄化すればいいんですよね?」
「そちらも今はできません――」
楽をしていい想いをできる、魔法があると信じているような元だった。国立が聖霊寮で親切にも伝えた話を、まったく理解していなかった。
「ど、どうしてですか? 聖霊師って浄化するんじゃないのか? そうしたら、邪神界じゃなくなるんだろう?」
今の元では、聖霊寮も聖霊師もお手上げなのだ。逃げ道ばかり探そうとする犯人へ、神父は長々とまた説教した。
「邪神界の証である邪気を払っても、あなたは邪神界へまたすぐに戻ってしまいます。今のあなたでは地獄の辛さに耐えられず、弱い心に忍び込むようにやってきた邪神界の者の手助けで悪へ簡単に下り直してしまいます。正神界のままでいても邪神界から狙われることには変わりません。あなたが心の底から償おうとしない限り、私も聖霊寮も神でさえも、あなたに救いの手を伸ばすことは出来ないのです。ですが、こちらだけは伝えます。神はたとえあなたが悪に下ったという過去を持っていても、正神界へ戻った時には何も言わず、喜んで両手を広げ暖かく迎えてくださるでしょう」
「は、はぁ……。神様なんかいないだろう」
元は奇異な目で崇剛を見て、誰にも聞こえないようにボソボソと、人の思想を踏みにじった。
崇剛の中にある、元が改心するという数値はさっきから、まったく上がらなかった。
この男が改心しなければ、人はまた死ぬのだ――。
デジタルで冷静な頭脳を駆使して、崇剛は別の方向からアプローチしようとした、メシア保有者という選ばれし者の責任をまっとうしようとして。
「論語の『君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず』という言葉は知っていますか?」
元は不思議そうに目をパチパチさせただけだった。
「いえ……」
「君子――優れた人物は協調性を持つが、嘘をつくなどをして同調はしない。対して、小人は嘘などをついて同調するが協調性がないという意味です。こちらを基にして考えを広げると、以下のようになります。小人――邪神界の者は損だと思えば、平気で去ってゆくのです。ですから、あなたに利用価値がないと判断した途端、お金などは入ってこなくなりますよ」
「か、金がなくなったら大変だ!」
高級品を買って、優越感に浸りたがっている元にとっては大問題。彼は頭を抱えて椅子の上でうずくまった。
「お金を手にすることが、あなたの幸せになるのでしたら、あなたを苦しめようとしている人たちは、次はそちらを阻止してくるかもしれませんよ」
「じゃ、じゃあ、どうしたら、金がなくならないようになりますか?」
レベルの違う話が、神父から殺人犯へ言い渡された。
「お金では買えない命をあなたは百五十六人分奪ったのです。彼らの家族も悲しんだでしょう。そちらの人たちの心を傷つけたことも償わなくてはいけません。膨大な数の人たちへの償いです。己の身を削ってでも、相手を想いやる気持ちを持つことが大切です。他人に無償で自身の大切なもの――そうですね……? あなたに関してはお金を相手に何の見返りも求めずに渡すことが出来ますか?」
「そ、そんな……」
元にとっては、めちゃくちゃな話だった。しかし、神父にとっては当たり前のものだった。神からの後光を受けたように、崇剛は優雅に微笑んで、
「そちらが出来れば罪を償う一歩となるでしょう」
「どこかに逃げ道が……」
往生際の悪い元を、崇剛はチェスのコマでキングのまわりを、四方八方塞ぐように、コマを一気に動かしてチェックメイトするように、非常に冷たい声で神の元へ導き始めた。
「逃げ道はどちらにもありませんよ。長い輪廻転生の中で死んでも生まれ変わっても、何千年、何万年、何億年と償わない限り、あなたへ対する憎しみや怨みは続いていきます。神――主はとても厳しく優しい方です。罪を償えるように、人の一生をかけても同じやり直しを何度もしてくださいますよ」
自分がどんな罪を起こして、何が原因で今の状態を引き起こしているのか知ろうともせず、逃げることばかり考えている犯人は、媚を売るように聞き返した。
「じゃあ、魂を浄化すればいいんですよね?」
「そちらも今はできません――」
楽をしていい想いをできる、魔法があると信じているような元だった。国立が聖霊寮で親切にも伝えた話を、まったく理解していなかった。
「ど、どうしてですか? 聖霊師って浄化するんじゃないのか? そうしたら、邪神界じゃなくなるんだろう?」
今の元では、聖霊寮も聖霊師もお手上げなのだ。逃げ道ばかり探そうとする犯人へ、神父は長々とまた説教した。
「邪神界の証である邪気を払っても、あなたは邪神界へまたすぐに戻ってしまいます。今のあなたでは地獄の辛さに耐えられず、弱い心に忍び込むようにやってきた邪神界の者の手助けで悪へ簡単に下り直してしまいます。正神界のままでいても邪神界から狙われることには変わりません。あなたが心の底から償おうとしない限り、私も聖霊寮も神でさえも、あなたに救いの手を伸ばすことは出来ないのです。ですが、こちらだけは伝えます。神はたとえあなたが悪に下ったという過去を持っていても、正神界へ戻った時には何も言わず、喜んで両手を広げ暖かく迎えてくださるでしょう」
「は、はぁ……。神様なんかいないだろう」
元は奇異な目で崇剛を見て、誰にも聞こえないようにボソボソと、人の思想を踏みにじった。
崇剛の中にある、元が改心するという数値はさっきから、まったく上がらなかった。
この男が改心しなければ、人はまた死ぬのだ――。
デジタルで冷静な頭脳を駆使して、崇剛は別の方向からアプローチしようとした、メシア保有者という選ばれし者の責任をまっとうしようとして。
「論語の『君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず』という言葉は知っていますか?」
元は不思議そうに目をパチパチさせただけだった。
「いえ……」
「君子――優れた人物は協調性を持つが、嘘をつくなどをして同調はしない。対して、小人は嘘などをついて同調するが協調性がないという意味です。こちらを基にして考えを広げると、以下のようになります。小人――邪神界の者は損だと思えば、平気で去ってゆくのです。ですから、あなたに利用価値がないと判断した途端、お金などは入ってこなくなりますよ」
「か、金がなくなったら大変だ!」
高級品を買って、優越感に浸りたがっている元にとっては大問題。彼は頭を抱えて椅子の上でうずくまった。
「お金を手にすることが、あなたの幸せになるのでしたら、あなたを苦しめようとしている人たちは、次はそちらを阻止してくるかもしれませんよ」
「じゃ、じゃあ、どうしたら、金がなくならないようになりますか?」
レベルの違う話が、神父から殺人犯へ言い渡された。
「お金では買えない命をあなたは百五十六人分奪ったのです。彼らの家族も悲しんだでしょう。そちらの人たちの心を傷つけたことも償わなくてはいけません。膨大な数の人たちへの償いです。己の身を削ってでも、相手を想いやる気持ちを持つことが大切です。他人に無償で自身の大切なもの――そうですね……? あなたに関してはお金を相手に何の見返りも求めずに渡すことが出来ますか?」
「そ、そんな……」
元にとっては、めちゃくちゃな話だった。しかし、神父にとっては当たり前のものだった。神からの後光を受けたように、崇剛は優雅に微笑んで、
「そちらが出来れば罪を償う一歩となるでしょう」
「どこかに逃げ道が……」
往生際の悪い元を、崇剛はチェスのコマでキングのまわりを、四方八方塞ぐように、コマを一気に動かしてチェックメイトするように、非常に冷たい声で神の元へ導き始めた。
「逃げ道はどちらにもありませんよ。長い輪廻転生の中で死んでも生まれ変わっても、何千年、何万年、何億年と償わない限り、あなたへ対する憎しみや怨みは続いていきます。神――主はとても厳しく優しい方です。罪を償えるように、人の一生をかけても同じやり直しを何度もしてくださいますよ」
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