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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
Escape from evil/4
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止まっていた歩みが動き出すと同時に、冷静な頭脳もリフレッシュされて稼働再開だった。
ラジュ天使は、恩田 元と話している途中で席をはずして以来、戻ってきていません。
瑠璃は昼間は眠っています。
ですから、私一人で三沢岳へ行き、千里眼を使って状況を見極め、屋敷へ戻ってきてから、瑠璃に審神者をお願いしようと思っていたのですが……。
自ら行きたいと言っています。
昼間に瑠璃が起きていたことは今まで一度もありません。
おかしいです。
ですから、私は情報を得たいのです。
従って、涼介と瞬も同行させたのです。
聖女がもたらした執事と子供を巻き込んだピクニックは違和感の嵐という名だった。奇妙な一行は三沢岳の山頂を目指して、登ってゆく。
ロングブーツの足が乾き切った土を踏み損ね、ずずっと滑り落ちた。思わず膝をつき、崇剛の体はバランスを崩して、転落防止用の柵を反射的に手でつかみ、
「っ!」
聖なるダガーの柄が、いつもより近くにいる太陽の光を浴びて、鋭いシルバー色を瞬かせた。
しかし、優雅な策略家の受難はこれだけでは終わらなかった。
――出発の準備を終え、ピクニック気分の三人と、情報を収集したい策略家を乗せ、リムジンは順調に走り出した。
中心街を抜け、三沢岳の山道を登り始めた。座り心地のよいシートへ身を預けながら、千里眼の持ち主――聖霊師は神経質な手をあごに当てていた。
転落現場は、国立氏の言葉から、
『三沢岳のハイキングコース。山頂近くの東側だ』
従って、そちらまで自動車を使って、登ればいいという――
いかに合理的に仕事をするかを考えている崇剛。隣に座っていた聖女が顔を向けて、思考中に話しかけたが、ずいぶん落ち着きがなかった。
「崇剛、今いつ時かの?」
「そうですね……?」
崇剛は考えているふりをしながら、冷静な水色の瞳をついっと細めた。聖女は霊界の人間で、永遠の世界で生きていて、時刻を気にしたことなど今まで一度もなかった。
当然、崇剛に時刻を確認することなど、生まれてこの方一度もなかった。
いつもと違うことが起きている――。それは何か対策を練らないと、危険になる可能性を含んでいるということだ。
非常に大きな何かが動いているという可能性が38.98%から上がり、54.78%――
血のにじむ包帯をした右手で、久しく顔を合わせていない、ポケットの中の懐中時計に触れた。
「十時三十八分十七秒です」
「そうかの……」
瑠璃は余韻を残すように言って、ひどく難しそうな顔をした。明らかに様子のおかしい守護霊はリムジンのルーフを凝視する。
「そうじゃの? あと、それを聞かぬとの」
何かを画策している聖女。どうもやり慣れないことを、誰かに無理やりやらされているような雰囲気だった。
「ここから、どれくらいで一番上には着くのじゃ?」
時間をやたらと気にしている聖女の横顔を、崇剛は優雅に微笑みながら、隙なくうかがい、
(瑠璃は時間を気にしているように見える)
運転手へ向かって、的確な質問を投げかけた。
「山頂までは、あとどれくらいかかりますか?」
「約四十分でございます」
崇剛は語尾だけつけ、
「だそうです」
ある意味辛い立場に立たされているだろう、愛しの聖女に心の中で問いかける。
(瑠璃さんは、何時になるのかわかりますか?)
小さな指は右から順番に折りたたまれ、瑠璃は足し算を始めたが、六十進法の前にあえなく玉砕した。
「我は数字に弱くての……何時になるのじゃ? 崇剛、計算するがよい」
自分の予想した通りに動いてくる聖女を前にして、神父は心の中で密かにくすくす笑い、愛おしさがにじみ出る。
(やはり、あなたは素敵な人ですね)
ラジュ天使は、恩田 元と話している途中で席をはずして以来、戻ってきていません。
瑠璃は昼間は眠っています。
ですから、私一人で三沢岳へ行き、千里眼を使って状況を見極め、屋敷へ戻ってきてから、瑠璃に審神者をお願いしようと思っていたのですが……。
自ら行きたいと言っています。
昼間に瑠璃が起きていたことは今まで一度もありません。
おかしいです。
ですから、私は情報を得たいのです。
従って、涼介と瞬も同行させたのです。
聖女がもたらした執事と子供を巻き込んだピクニックは違和感の嵐という名だった。奇妙な一行は三沢岳の山頂を目指して、登ってゆく。
ロングブーツの足が乾き切った土を踏み損ね、ずずっと滑り落ちた。思わず膝をつき、崇剛の体はバランスを崩して、転落防止用の柵を反射的に手でつかみ、
「っ!」
聖なるダガーの柄が、いつもより近くにいる太陽の光を浴びて、鋭いシルバー色を瞬かせた。
しかし、優雅な策略家の受難はこれだけでは終わらなかった。
――出発の準備を終え、ピクニック気分の三人と、情報を収集したい策略家を乗せ、リムジンは順調に走り出した。
中心街を抜け、三沢岳の山道を登り始めた。座り心地のよいシートへ身を預けながら、千里眼の持ち主――聖霊師は神経質な手をあごに当てていた。
転落現場は、国立氏の言葉から、
『三沢岳のハイキングコース。山頂近くの東側だ』
従って、そちらまで自動車を使って、登ればいいという――
いかに合理的に仕事をするかを考えている崇剛。隣に座っていた聖女が顔を向けて、思考中に話しかけたが、ずいぶん落ち着きがなかった。
「崇剛、今いつ時かの?」
「そうですね……?」
崇剛は考えているふりをしながら、冷静な水色の瞳をついっと細めた。聖女は霊界の人間で、永遠の世界で生きていて、時刻を気にしたことなど今まで一度もなかった。
当然、崇剛に時刻を確認することなど、生まれてこの方一度もなかった。
いつもと違うことが起きている――。それは何か対策を練らないと、危険になる可能性を含んでいるということだ。
非常に大きな何かが動いているという可能性が38.98%から上がり、54.78%――
血のにじむ包帯をした右手で、久しく顔を合わせていない、ポケットの中の懐中時計に触れた。
「十時三十八分十七秒です」
「そうかの……」
瑠璃は余韻を残すように言って、ひどく難しそうな顔をした。明らかに様子のおかしい守護霊はリムジンのルーフを凝視する。
「そうじゃの? あと、それを聞かぬとの」
何かを画策している聖女。どうもやり慣れないことを、誰かに無理やりやらされているような雰囲気だった。
「ここから、どれくらいで一番上には着くのじゃ?」
時間をやたらと気にしている聖女の横顔を、崇剛は優雅に微笑みながら、隙なくうかがい、
(瑠璃は時間を気にしているように見える)
運転手へ向かって、的確な質問を投げかけた。
「山頂までは、あとどれくらいかかりますか?」
「約四十分でございます」
崇剛は語尾だけつけ、
「だそうです」
ある意味辛い立場に立たされているだろう、愛しの聖女に心の中で問いかける。
(瑠璃さんは、何時になるのかわかりますか?)
小さな指は右から順番に折りたたまれ、瑠璃は足し算を始めたが、六十進法の前にあえなく玉砕した。
「我は数字に弱くての……何時になるのじゃ? 崇剛、計算するがよい」
自分の予想した通りに動いてくる聖女を前にして、神父は心の中で密かにくすくす笑い、愛おしさがにじみ出る。
(やはり、あなたは素敵な人ですね)
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