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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
心霊探偵と心霊刑事/6
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横顔を見せたまま、ミニシガリロの煙を唇から吐き出し、崇剛の口元が密かに動いた。
「そのような人生を送る方がいるみたいですね。どのような意味があるのでしょう?」
崇剛の問いかけはいつまでも宙に浮いたままだった。
正神界と邪神界。立場も考え方も真逆。それでも、立ち向かうためには相手の考え方――価値観を知らなくはいけない。
しかし、転生に対する尺度があまりにもかけ離れていて、それはとても許されるものではなく。探偵と刑事はしばらく黙ったまま、ミニシガリロの青白い煙だけが、応接セットからふたつ立ち上っているだけだった。
激情の獣を抑え切った崇剛の、遊線が螺旋を描く声が青白い煙とともに宙に舞った。
「千恵さんだけが転落死亡していません。ですから、他の方とは違うのかもしれませんね」
「いいやつが先に死ぬって、案外邪さんが関係してんのかもな」
「…………」
崇剛は答えなかった。それが千里眼の持ち主が、人の死に違った面から立ち会ってきた証言だった。
「入院されたのは、四月二十一日、木曜日以降ですか?」
「その日の夕方だ」
崇剛はあごに手を当てて、冷静な思考回路を展開させる。亡くなってしまった死装束の女の身に何が起きたのかを考える。
千恵さんの生霊が屋敷に現れたのは……。
一回目は、四月十八日、月曜日、十七時十六分三十五秒過ぎ。
『助けて……』
と言っていた。
転落した翌日です。
二回目は、四月二十一日、木曜日、二時十三分五十四秒。
悪霊に襲われた日。
『早く助けて……』
に変わっていた。
状況が変わった可能性が78.45%――
急いでいるように見えた。
ですから、入院された可能性が63.78%でしたが、今確定――100%です。
細い足を組み替えた崇剛には違和感が強く残っていた。聖なるダガーの柄がソファーにすれて、グルッと寝言のような濁った音を出す。
ですが、おかしいみたいです。
亡くなったのは、昨日四月二十八日、木曜日、十八時二十七分三十八秒。
入院されてから、亡くなるまで約一週間です。
不自然です。
そうなると、心霊的理由で亡くなったという可能性が99.99%――
関係者は一人を残して、全員死亡。現実的ではなく、ますますスピリチュアルよりに事件は展開していた。
「逮捕された時、恩田 元と彼女は一緒にいらっしゃいましたか?」
国立は骨董屋で、火花を散らすような勢いで対峙した女の綺麗な顔をはっきりと思い出していた。
「ずいぶんと勇ましい女だったぜ」
「そうですか」
間を置くための言葉を言って、次の話が始まる前に、
そうですね……?
先ほどのおかしい点の情報も得ましょうか。
ですから、こちらの言葉にしましょう。
作戦をあっという間に立てながら、葉巻のお陰で香りの引き立った紅茶を飲む。崇剛は優雅に微笑んで、何気なくわざと聞いた。
「そちらの時の様子を、国立氏を通して千里眼を使い、見せていただけませんか?」
数少ない事件関係者――国立のブルーグレーの鋭い眼光は、ほんの一瞬だけ崇剛の冷静な水色の瞳からずれた。
策略家のそれはついっと細められる。
おかしい――。
「あぁ? お前さん、今までそんなこと言いやがらなかっただろうがよ。何やってんだ?」
国立は気だるく聞き返して、短くなってしまったミニシガリロを灰皿ですり消した。もっともらしい理由づけなど、崇剛にとっては容易いことだった。
「生前の病気の影響で、昼夜逆転している瑠璃はいません。ラジュ天使も席をはずしています」
屋敷の二階でぐっすり眠っている瑠璃と、元の診断が終わる間際に、どこかへ行くと言って出かけてしまったラジュ。
「そのような人生を送る方がいるみたいですね。どのような意味があるのでしょう?」
崇剛の問いかけはいつまでも宙に浮いたままだった。
正神界と邪神界。立場も考え方も真逆。それでも、立ち向かうためには相手の考え方――価値観を知らなくはいけない。
しかし、転生に対する尺度があまりにもかけ離れていて、それはとても許されるものではなく。探偵と刑事はしばらく黙ったまま、ミニシガリロの青白い煙だけが、応接セットからふたつ立ち上っているだけだった。
激情の獣を抑え切った崇剛の、遊線が螺旋を描く声が青白い煙とともに宙に舞った。
「千恵さんだけが転落死亡していません。ですから、他の方とは違うのかもしれませんね」
「いいやつが先に死ぬって、案外邪さんが関係してんのかもな」
「…………」
崇剛は答えなかった。それが千里眼の持ち主が、人の死に違った面から立ち会ってきた証言だった。
「入院されたのは、四月二十一日、木曜日以降ですか?」
「その日の夕方だ」
崇剛はあごに手を当てて、冷静な思考回路を展開させる。亡くなってしまった死装束の女の身に何が起きたのかを考える。
千恵さんの生霊が屋敷に現れたのは……。
一回目は、四月十八日、月曜日、十七時十六分三十五秒過ぎ。
『助けて……』
と言っていた。
転落した翌日です。
二回目は、四月二十一日、木曜日、二時十三分五十四秒。
悪霊に襲われた日。
『早く助けて……』
に変わっていた。
状況が変わった可能性が78.45%――
急いでいるように見えた。
ですから、入院された可能性が63.78%でしたが、今確定――100%です。
細い足を組み替えた崇剛には違和感が強く残っていた。聖なるダガーの柄がソファーにすれて、グルッと寝言のような濁った音を出す。
ですが、おかしいみたいです。
亡くなったのは、昨日四月二十八日、木曜日、十八時二十七分三十八秒。
入院されてから、亡くなるまで約一週間です。
不自然です。
そうなると、心霊的理由で亡くなったという可能性が99.99%――
関係者は一人を残して、全員死亡。現実的ではなく、ますますスピリチュアルよりに事件は展開していた。
「逮捕された時、恩田 元と彼女は一緒にいらっしゃいましたか?」
国立は骨董屋で、火花を散らすような勢いで対峙した女の綺麗な顔をはっきりと思い出していた。
「ずいぶんと勇ましい女だったぜ」
「そうですか」
間を置くための言葉を言って、次の話が始まる前に、
そうですね……?
先ほどのおかしい点の情報も得ましょうか。
ですから、こちらの言葉にしましょう。
作戦をあっという間に立てながら、葉巻のお陰で香りの引き立った紅茶を飲む。崇剛は優雅に微笑んで、何気なくわざと聞いた。
「そちらの時の様子を、国立氏を通して千里眼を使い、見せていただけませんか?」
数少ない事件関係者――国立のブルーグレーの鋭い眼光は、ほんの一瞬だけ崇剛の冷静な水色の瞳からずれた。
策略家のそれはついっと細められる。
おかしい――。
「あぁ? お前さん、今までそんなこと言いやがらなかっただろうがよ。何やってんだ?」
国立は気だるく聞き返して、短くなってしまったミニシガリロを灰皿ですり消した。もっともらしい理由づけなど、崇剛にとっては容易いことだった。
「生前の病気の影響で、昼夜逆転している瑠璃はいません。ラジュ天使も席をはずしています」
屋敷の二階でぐっすり眠っている瑠璃と、元の診断が終わる間際に、どこかへ行くと言って出かけてしまったラジュ。
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