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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
主人は執事をアグレッシブに叱りたい/10
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執事は大きなため息をつき、主人の手強さを痛感した。
「お前また……。部屋に入った時から、懺悔させることを考えてたのか。でも、どうしてこんなことするんだ? 今まで、俺の上に乗ったことなんてなかっただろう」
そうしてようやく、
二.涼介に懺悔させる――
にたどり着いた。崇剛は今までと違って、珍しく真剣な面持ちで、執事の体に自分のそれを重ねたまま問いただし始めた。
「何を、私に言わなかったのですか? 人が死ぬかもしれないのです。そちらを放置することは、到底、赦されることではありません」
祓いの館に住んでいると人々に噂される、聖霊師は強い懸念を抱いていた。涼介は静かに目を閉じて一呼吸を置き、再びまぶたを開けると、窓から入り込む風に揺れるカーテンを見上げた。さっきまでの慌てぶりはどこかへ消え去り、静かに、
「同じ人物から、何度かお前に会いたいって電話があった。ずいぶん、おどおどした感じだった」
床にさっきから立ち膝をしたままの左足で、崇剛は痛みに耐えながら、執事が答えられないと知りつつわざと聞いた。
「最初に連絡があったのは、いつですか?」
「俺は崇剛じゃないからな……。昨日の……瞬と風呂に入ろうとした時だから、夜の八時過ぎ……?」
執事は自分の大雑把さをひどく反省した。今は持っていない、うる覚えのメモを懸命に思い出そうとする。
「分数……まして、秒数まで覚えてない。テーブルの上に置いた、メモを見れば……だけど、俺たちは動けない。どうすれば――」
こうして、遊びが過ぎる主人は長々と数字の羅列を口にし始めた。
「最初の連絡は、昨日の四月二十八日、木曜日、二十時十四分十八秒。二回目は、二十時三十七分二十六秒。三回目は、二十時五十九分三十七秒。四回目は、二十一時七分四十三秒。五回目は、二十一時二十七分五十八秒。六回目は、明けて、四月二十九日、金曜日、七時四十五分二十八秒。今朝です。七回目は、八時三分三十四秒。八回目は、八時四十五分二十四秒……朝食のあとに、二回も連絡があったみたいです。それでも、涼介は私に伝えなかったのですね」
デジタル過ぎる主人とは対照的に、起きている物事を順番に記憶していない執事は、こんな見当違いな質問をした。
「メモはテーブルの上だろう? 俺の横に、お前の顔がある……。だから見えないだろう。今、千里眼を使ったとか?」
「いいえ、ただの勘ですよ」
耳元でくすくす笑われた涼介は、盛大なため息をついた。
「お前また嘘ついて……。お前に勘はないだろう。どうやって知った?」
涼介のひまわり色の短髪の上に、崇剛の紺色の髪が侵食するように次々と落ちてゆく。
「涼介がメモをテーブルへ置いた時に見ましたよ。依頼主のお名前は、恩田 元。ご住所は、庭崎市神座五丁目四十三番地五号――」
崇剛はいつの間にか、ひなびた細い路地を茶色のロングブーツで歩いていた――。
中心街の中央通りから東へ行った、二つ目の大通り。
北から三番目の細い横道です。
不意に吹いてきた強風に目を伏せ、ダンブルウィードが砂埃とともに横へ転がってゆく――。
そちらは行き止まりの道で、修繕されていない古い建物が立ち並ぶ通り。
五号は奥から三番目の建物です。
国立が立った骨董屋の店先で、崇剛は足をふと止め、あごに手をやると、再び涼介を押し倒したままの自室へ意識は戻ってきた――。
そちらから屋敷への所要時間は、約十五分。
ですが、こちらは自動車を使っての話です。
花冠国では富裕層でないと、そちらは所有していません。
従って、恩田 元は、馬車を使ってくるという可能性が92.34%――
そうなると、所要時間は変わり、約三十五分――
「お前また……。部屋に入った時から、懺悔させることを考えてたのか。でも、どうしてこんなことするんだ? 今まで、俺の上に乗ったことなんてなかっただろう」
そうしてようやく、
二.涼介に懺悔させる――
にたどり着いた。崇剛は今までと違って、珍しく真剣な面持ちで、執事の体に自分のそれを重ねたまま問いただし始めた。
「何を、私に言わなかったのですか? 人が死ぬかもしれないのです。そちらを放置することは、到底、赦されることではありません」
祓いの館に住んでいると人々に噂される、聖霊師は強い懸念を抱いていた。涼介は静かに目を閉じて一呼吸を置き、再びまぶたを開けると、窓から入り込む風に揺れるカーテンを見上げた。さっきまでの慌てぶりはどこかへ消え去り、静かに、
「同じ人物から、何度かお前に会いたいって電話があった。ずいぶん、おどおどした感じだった」
床にさっきから立ち膝をしたままの左足で、崇剛は痛みに耐えながら、執事が答えられないと知りつつわざと聞いた。
「最初に連絡があったのは、いつですか?」
「俺は崇剛じゃないからな……。昨日の……瞬と風呂に入ろうとした時だから、夜の八時過ぎ……?」
執事は自分の大雑把さをひどく反省した。今は持っていない、うる覚えのメモを懸命に思い出そうとする。
「分数……まして、秒数まで覚えてない。テーブルの上に置いた、メモを見れば……だけど、俺たちは動けない。どうすれば――」
こうして、遊びが過ぎる主人は長々と数字の羅列を口にし始めた。
「最初の連絡は、昨日の四月二十八日、木曜日、二十時十四分十八秒。二回目は、二十時三十七分二十六秒。三回目は、二十時五十九分三十七秒。四回目は、二十一時七分四十三秒。五回目は、二十一時二十七分五十八秒。六回目は、明けて、四月二十九日、金曜日、七時四十五分二十八秒。今朝です。七回目は、八時三分三十四秒。八回目は、八時四十五分二十四秒……朝食のあとに、二回も連絡があったみたいです。それでも、涼介は私に伝えなかったのですね」
デジタル過ぎる主人とは対照的に、起きている物事を順番に記憶していない執事は、こんな見当違いな質問をした。
「メモはテーブルの上だろう? 俺の横に、お前の顔がある……。だから見えないだろう。今、千里眼を使ったとか?」
「いいえ、ただの勘ですよ」
耳元でくすくす笑われた涼介は、盛大なため息をついた。
「お前また嘘ついて……。お前に勘はないだろう。どうやって知った?」
涼介のひまわり色の短髪の上に、崇剛の紺色の髪が侵食するように次々と落ちてゆく。
「涼介がメモをテーブルへ置いた時に見ましたよ。依頼主のお名前は、恩田 元。ご住所は、庭崎市神座五丁目四十三番地五号――」
崇剛はいつの間にか、ひなびた細い路地を茶色のロングブーツで歩いていた――。
中心街の中央通りから東へ行った、二つ目の大通り。
北から三番目の細い横道です。
不意に吹いてきた強風に目を伏せ、ダンブルウィードが砂埃とともに横へ転がってゆく――。
そちらは行き止まりの道で、修繕されていない古い建物が立ち並ぶ通り。
五号は奥から三番目の建物です。
国立が立った骨董屋の店先で、崇剛は足をふと止め、あごに手をやると、再び涼介を押し倒したままの自室へ意識は戻ってきた――。
そちらから屋敷への所要時間は、約十五分。
ですが、こちらは自動車を使っての話です。
花冠国では富裕層でないと、そちらは所有していません。
従って、恩田 元は、馬車を使ってくるという可能性が92.34%――
そうなると、所要時間は変わり、約三十五分――
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