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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
主人と執事の大人関係/3
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ロングブーツのカツンカツンという尖った音が不意に止まると、含み笑いの優雅な声が問いかけてきた。
「どうしたのですか?」
何ひとつ無駄な会話をしない崇剛の前で、涼介は自由を奪われた両手を強く揺すぶった。
「これを解け! 椅子と一緒に両腕を縛るな!」
主人は執事が返答に困るように、話の内容を吟味できないようにする。崇剛は涼介へ顔をグッと近づけて、キスができそうな位置まで迫り、今にも性的絶頂を迎えそうな表情で濃艶に微笑んだ。
「それでは、どのようにしたらそちらができますか?」
巧妙にすり替えられた質問――。BLが体中にまとわりつくような罠を同時に仕掛けられ、絶対服従へと連れていかれてしまった涼介。
執事の視線は男ふたりきりの薄暗い部屋で、マスタベ的な無我の境地を彷徨うようだった。
「ど、どうって……!?」
このまま唇に触れられてはという戸惑いと、触れてもいい――いや考えたくもない。冷や汗が涼介のこめかみを伝ってゆく。
相手が言いよどんでいる隙に、椅子にくくりつけられている涼介から、崇剛の細い体は一旦離れた。全てのことを計算し尽くして。
「どうされたいですか?」
さらにすり替えられた質問――。主人の神経質な指先は、執事の髪に絡まりなぶりものにする――激しく愛撫する。
自由を奪われた涼介は鳥肌を立たせながら、それでも必死に言葉を言おうとしたが、
「さ、されたい……? 敬語か? 受け身か?」
判断が難しい言葉を、主人にわざと言われたとも知らず、心臓は爆発寸前なまでにバクバクと激しく鳴っていた。
答えられないうちに、崇剛の指先は涼介の頬に白く熱い刻印を残すよう、あごへとゾクゾクさせながら落ちてゆく。
「何をされたいですか?」
主人は執事を罠という階段の最上階へと、他のことに気をそらさせたまま連れていこうとする。
神経質な指先は首を通り過ぎ、涼介の男らしい胸板で、執事の体の奥深くまで突き味わうようにしなわされ、崇剛の袖口についているロイヤルブルーサファイのカフスボタンがまるで舐めるように動いた。
あらぬ妄想が執事の脳裏を駆けめぐり、驚愕に染まった。
「な、何ってっっ!?!?」
どこを触っているのかと文句を言いたかったが、口がパクパクと空振りするだけで、声は出てこなかった。
主人の思うままに動いてくる執事――性奴隷を前にして、主人は至福の時というように優雅に微笑んだ。
こうして、執事に主人から罠の最後から二番目の言葉が言い渡される。
「それでは、私が決めてしまいますよ――」
「ん?」
違う話をさっきまでしていた気がすると、涼介は思った。しかしそんなことは、主人には当然、小数点以下二桁のパーセンテージで計算されていたのだった。
執事が反論しようとした刹那、瞬発力を発して、言葉を自由自在に操れる主人が先手を打った。
椅子に拘束された涼介の耳元へ、崇剛の中性的な唇は吸い付くように近づいてゆく、酔わせるような優雅な声で、話す暇を与えないように男を惑わせる。
「こちらのようにしましょうか」
言葉をすり替えて、最後にトドメを刺す主人の罠と、今現在に問題となっている言葉の意味を足し算してしまった涼介の、妄想はここに到着地点を迎えた。サディスティックな主人の声が告げる。
「私があなたを弄ぶ――」
神父でもある主人の性格を歪めた上に、執事の中ではこう略されていた。
私を禁欲という牢獄から解放していただけませんか?
あなたの肉体という現実味を帯びたものを通して――。
同性の崇剛にささやかれた、涼介はまた驚愕に染まり、
「なっ! 弄ぶって、お前っっ!?!?」
主人は自身の髪を縛っていたリボンを、慣れた感じでほどいた。急に女性的になってしまった崇剛は、執事の口元をそれでふさぐように手早く縛る。
「んん! んんん! んん!」
(神父が人を拘束するって、どうなんだ!)
話すことまで禁じられた涼介の顔をのぞき込もうと、崇剛は前へかがむ。長い髪が肩からサラッと落ちた。
「っ!」
綺麗な女性に襲われているようになってしまった、執事のあごを神経質な指先が艶かしく持ち上げ、見た目と反して声は優雅な男性のものだった。
「それでは、こちらで男色という快楽へ落ちていただきましょうか?」
いつも通り逆手持ちされたダガーは、下から上へ斜めの一直線を鋭く描き、涼介の白いジーパンを衣一枚の絶妙な間合いで引き裂いた――
「どうしたのですか?」
何ひとつ無駄な会話をしない崇剛の前で、涼介は自由を奪われた両手を強く揺すぶった。
「これを解け! 椅子と一緒に両腕を縛るな!」
主人は執事が返答に困るように、話の内容を吟味できないようにする。崇剛は涼介へ顔をグッと近づけて、キスができそうな位置まで迫り、今にも性的絶頂を迎えそうな表情で濃艶に微笑んだ。
「それでは、どのようにしたらそちらができますか?」
巧妙にすり替えられた質問――。BLが体中にまとわりつくような罠を同時に仕掛けられ、絶対服従へと連れていかれてしまった涼介。
執事の視線は男ふたりきりの薄暗い部屋で、マスタベ的な無我の境地を彷徨うようだった。
「ど、どうって……!?」
このまま唇に触れられてはという戸惑いと、触れてもいい――いや考えたくもない。冷や汗が涼介のこめかみを伝ってゆく。
相手が言いよどんでいる隙に、椅子にくくりつけられている涼介から、崇剛の細い体は一旦離れた。全てのことを計算し尽くして。
「どうされたいですか?」
さらにすり替えられた質問――。主人の神経質な指先は、執事の髪に絡まりなぶりものにする――激しく愛撫する。
自由を奪われた涼介は鳥肌を立たせながら、それでも必死に言葉を言おうとしたが、
「さ、されたい……? 敬語か? 受け身か?」
判断が難しい言葉を、主人にわざと言われたとも知らず、心臓は爆発寸前なまでにバクバクと激しく鳴っていた。
答えられないうちに、崇剛の指先は涼介の頬に白く熱い刻印を残すよう、あごへとゾクゾクさせながら落ちてゆく。
「何をされたいですか?」
主人は執事を罠という階段の最上階へと、他のことに気をそらさせたまま連れていこうとする。
神経質な指先は首を通り過ぎ、涼介の男らしい胸板で、執事の体の奥深くまで突き味わうようにしなわされ、崇剛の袖口についているロイヤルブルーサファイのカフスボタンがまるで舐めるように動いた。
あらぬ妄想が執事の脳裏を駆けめぐり、驚愕に染まった。
「な、何ってっっ!?!?」
どこを触っているのかと文句を言いたかったが、口がパクパクと空振りするだけで、声は出てこなかった。
主人の思うままに動いてくる執事――性奴隷を前にして、主人は至福の時というように優雅に微笑んだ。
こうして、執事に主人から罠の最後から二番目の言葉が言い渡される。
「それでは、私が決めてしまいますよ――」
「ん?」
違う話をさっきまでしていた気がすると、涼介は思った。しかしそんなことは、主人には当然、小数点以下二桁のパーセンテージで計算されていたのだった。
執事が反論しようとした刹那、瞬発力を発して、言葉を自由自在に操れる主人が先手を打った。
椅子に拘束された涼介の耳元へ、崇剛の中性的な唇は吸い付くように近づいてゆく、酔わせるような優雅な声で、話す暇を与えないように男を惑わせる。
「こちらのようにしましょうか」
言葉をすり替えて、最後にトドメを刺す主人の罠と、今現在に問題となっている言葉の意味を足し算してしまった涼介の、妄想はここに到着地点を迎えた。サディスティックな主人の声が告げる。
「私があなたを弄ぶ――」
神父でもある主人の性格を歪めた上に、執事の中ではこう略されていた。
私を禁欲という牢獄から解放していただけませんか?
あなたの肉体という現実味を帯びたものを通して――。
同性の崇剛にささやかれた、涼介はまた驚愕に染まり、
「なっ! 弄ぶって、お前っっ!?!?」
主人は自身の髪を縛っていたリボンを、慣れた感じでほどいた。急に女性的になってしまった崇剛は、執事の口元をそれでふさぐように手早く縛る。
「んん! んんん! んん!」
(神父が人を拘束するって、どうなんだ!)
話すことまで禁じられた涼介の顔をのぞき込もうと、崇剛は前へかがむ。長い髪が肩からサラッと落ちた。
「っ!」
綺麗な女性に襲われているようになってしまった、執事のあごを神経質な指先が艶かしく持ち上げ、見た目と反して声は優雅な男性のものだった。
「それでは、こちらで男色という快楽へ落ちていただきましょうか?」
いつも通り逆手持ちされたダガーは、下から上へ斜めの一直線を鋭く描き、涼介の白いジーパンを衣一枚の絶妙な間合いで引き裂いた――
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