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最後の恋は神さまとでした
愛する人の前から消えないで
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おまけの倫礼はふとした瞬間に思う。自分は人よりも何倍も幸せだと。たくさんの人の愛を受けている。これ以上幸福なことはない。しかし、いつも影が心の片隅に落ちていて、それが次第に大きくなってきているのだった。
神界の家と、地上にあるおまけの倫礼の部屋はつながっている。子供たちは地球に遊びにくる感覚でやってきては、とびきりの笑顔を振りまいて帰ってゆく。
「ママ、ありがとう!」
「どういたしまして」
子供の笑顔を見るたび、おまけの倫礼は胸が痛んだ。
「私はいつかみんなの前からいなくなる。この肉体が滅んだら、仮の魂は倫礼さんに吸収されて、記憶は彼女の一部となる。いつかみんなの前から消えてなくなる」
今ある幸せが、無になってしまう。死んだ後も残ると思うから、生きる希望が持てるのに、おまけの倫礼にはそれがないのだ。
「普通は死んでも、魂は永遠だからと思って、安心できるけど、消滅してしまうんだから、本当に貴重で、儚い運命だな」
何のために生きているのかと思っても、倫礼という神のために生きている。慎ましやかに感謝をすることで心を鎮める日々だ。
そんなある日、夕霧命がそばへやってきた。
「光が好きなのは、本体ではなく、お前だ」
言い残していった。こんな嬉しい言葉はないが、それも無になるのだ。心の声が聞こえているおまけの倫礼は、また誰にも知られずに一人で悲しみに耐える日が多くなった。
青の王子はあいも変わらず、おまけの倫礼が目を覚ます前に起きていて、彼女が眠った後に眠りにつく生活を送っている。どこへ出掛けるにも、何をするにも一緒で、正しく守護神だった。
寂しさを感じて抱きしめてくれる時にも、倫礼は光命のことを思うと、余計に悲しくなるのだ。この人はどんな想いで、自分と接しているのだろう。いなくなる自分との一日一日を宝物のように大切に、その全てを記憶する脳に焼き付けているのかもしれない。忘れることのできない頭脳に。
ある日、おまけの倫礼はとうとう耐えきれなくなって、光命に噛みつくように言った。
「どうして、光さんは倫礼さんではなく、私を好きになったんですか?」
光命は神の威厳を持って、優雅に微笑んで見せる。
「仕方がないではありませんか。あなたを好きになってしまったのですから」
「私は消えてなくなる身です。そんな私を好きになるなんて……」
一緒にいれなくなったとしても、どうか幸せで生きていてほしい。だから、他の人を好きになってほしいのだ。それでも、光命の愛は決して変わらないのだった。
「彼女の中に吸収されたあなたの部分だけを見て、私は永遠を生きていきます」
「どうして、そんな辛い人の想い方をするんですか!」
悲痛に叫びそうになるのを、おまけの倫礼はなんとか堪えた。
本体を好きになっていたなら、こんな悲しい人の愛し方を、愛しい人がする必要もなかったと、おまけの倫礼は思うと、涙がこぼれそうになったが、何とか必死で止めた。泣いても何も変わらないのだ。
「消えてゆく運命だとしても、私が愛しているのはあなたなのです」
「…………」
運命は残酷だ。おまけの倫礼はもう何も言うことができなかった。自分の意識が全てなくなったあと、光命はこの世に存在しないおまけを想って、永遠の時を生きてゆく。なんて切ない生き方だ。
でも、それならば、せめて生きることが許されている今を、笑顔で生きて、彼の心に残れるようにしよう。おまけの倫礼は肉体が滅ぶその日を、誰よりも静かに受け止めた。
神界の家と、地上にあるおまけの倫礼の部屋はつながっている。子供たちは地球に遊びにくる感覚でやってきては、とびきりの笑顔を振りまいて帰ってゆく。
「ママ、ありがとう!」
「どういたしまして」
子供の笑顔を見るたび、おまけの倫礼は胸が痛んだ。
「私はいつかみんなの前からいなくなる。この肉体が滅んだら、仮の魂は倫礼さんに吸収されて、記憶は彼女の一部となる。いつかみんなの前から消えてなくなる」
今ある幸せが、無になってしまう。死んだ後も残ると思うから、生きる希望が持てるのに、おまけの倫礼にはそれがないのだ。
「普通は死んでも、魂は永遠だからと思って、安心できるけど、消滅してしまうんだから、本当に貴重で、儚い運命だな」
何のために生きているのかと思っても、倫礼という神のために生きている。慎ましやかに感謝をすることで心を鎮める日々だ。
そんなある日、夕霧命がそばへやってきた。
「光が好きなのは、本体ではなく、お前だ」
言い残していった。こんな嬉しい言葉はないが、それも無になるのだ。心の声が聞こえているおまけの倫礼は、また誰にも知られずに一人で悲しみに耐える日が多くなった。
青の王子はあいも変わらず、おまけの倫礼が目を覚ます前に起きていて、彼女が眠った後に眠りにつく生活を送っている。どこへ出掛けるにも、何をするにも一緒で、正しく守護神だった。
寂しさを感じて抱きしめてくれる時にも、倫礼は光命のことを思うと、余計に悲しくなるのだ。この人はどんな想いで、自分と接しているのだろう。いなくなる自分との一日一日を宝物のように大切に、その全てを記憶する脳に焼き付けているのかもしれない。忘れることのできない頭脳に。
ある日、おまけの倫礼はとうとう耐えきれなくなって、光命に噛みつくように言った。
「どうして、光さんは倫礼さんではなく、私を好きになったんですか?」
光命は神の威厳を持って、優雅に微笑んで見せる。
「仕方がないではありませんか。あなたを好きになってしまったのですから」
「私は消えてなくなる身です。そんな私を好きになるなんて……」
一緒にいれなくなったとしても、どうか幸せで生きていてほしい。だから、他の人を好きになってほしいのだ。それでも、光命の愛は決して変わらないのだった。
「彼女の中に吸収されたあなたの部分だけを見て、私は永遠を生きていきます」
「どうして、そんな辛い人の想い方をするんですか!」
悲痛に叫びそうになるのを、おまけの倫礼はなんとか堪えた。
本体を好きになっていたなら、こんな悲しい人の愛し方を、愛しい人がする必要もなかったと、おまけの倫礼は思うと、涙がこぼれそうになったが、何とか必死で止めた。泣いても何も変わらないのだ。
「消えてゆく運命だとしても、私が愛しているのはあなたなのです」
「…………」
運命は残酷だ。おまけの倫礼はもう何も言うことができなかった。自分の意識が全てなくなったあと、光命はこの世に存在しないおまけを想って、永遠の時を生きてゆく。なんて切ない生き方だ。
でも、それならば、せめて生きることが許されている今を、笑顔で生きて、彼の心に残れるようにしよう。おまけの倫礼は肉体が滅ぶその日を、誰よりも静かに受け止めた。
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