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最後の恋は神さまとでした
真面目にやりやがれ/2
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その頃。
ノリノリで小説を書いていた倫礼は、ピタリと手を止めて頭を抱えていた。
「いや~、また思い出しちゃった」
未だに本棚の隅っこに入っている神様の名簿に気づくこともなく、霊感と記憶力を頼りに天啓を受けて続けていた。
「白くんと甲くんといえば、他にも、葛くん禄くんっていたよね?」
子供たちに昔描いてあげた絵のスケッチブックは背表紙を向けたまま、本棚の肥やしになっている。
「それって、火炎不動明王さんの護法童子で、子供に後でなった子たち」
本棚に視線をやるが、部屋の構造上、奥まったところとなり、スケッチブックを倫礼は見つけることはできなかった。
「いや~、誰が好きになったっているか、わかってしまった~~!」
パソコンに向き直って、パチパチと文字を打ち込もうとするが、それどころではなくなってしまった。
「蓮は別として、最後に結婚した人が誰か別の人を好きって言い出すから、明引呼さんになる」
倫礼の空想世界でパイプが出てきて、ぷかぷかと煙をのぼらせながら、推理を始めようとしたが、すぐに答えが出て大声で叫んだ。
「え~! 兄貴と火炎不動明王さんが恋愛関係。あぁ、事実は小説より奇なりって言うけど、本当にそうだ。全然、恋愛しているようなイメージがなかったけど、言われてみればそうだと思えてくるから怖い」
おまけにとっては意外な人間関係だった。二人とも、早々と奥さんと結婚して、子供も生まれて順風万歩で生きているのだと思ったが、そんな悩みを抱えていたのだ。
「おう!」
しゃがれた声が背後からかけられた。霊視すると、明引呼が瞬間移動で部屋にやってきたところだった。
「あ、明引呼さん」
「ちょうど今思い出してたってか?」
守護神には何でもお見通しだった。
「そうです」
「他のやつらには話して、光秀さんにも了承得たからよ。プロポーズに行ってくるぜ」
「いってらっしゃい」
おまけは一言だけ告げた。明引呼は口の端を歪める。
「ずいぶん大人しいじゃねえか」
「私の意見はないに等しいですからね」
みんなに言ったということは、倫礼の本体は了承しているのだ。そこに、仮の魂のおまけがどうこう言えるはずもなかった。
それでも、この家の人たちは一人前として、おまけの倫礼を扱う。彼女の顔を明引呼はのぞき込んで、
「結婚生活うまくやれそうか」
「はぁ~」
正直なところ、盛大ないため息が出てしまうのだ。嘘をつくのは相手に失礼だと思うのだ。永遠に一緒にいることになるのだから、いつかはバレるだろう。
「どうも違えようだな」
「個性的なボケをかます人だな、ぐらいしか思ってないですからね」
おまけの倫礼の乏しい記憶の中で、テレビゲームでプレイした火炎不動明王をモデルとしたキャラクターの印象はそんなところだった。
「まあ、魂交換しちまえば、とんとん拍子に子供が生まれんだろ」
倫礼は今度、額に手を当てて深くため息をついた。
「そこもまた怖い。結婚して一ヶ月もたたないうちにそういうことになってしまうんだから、結婚の儀式って強力だなって思う」
心が結びつく。それはどんな絆よりも強固なものだった。心が大切だとよく言うが、正しくそれが結ばれてしまっているのだから、どうにも抗えなかった。
「じゃあ、今度こそマジで行ってくるぜ」
「はい、いってらっしゃい」
倫礼がうなずくと、明引呼はドアから出ずに、そのまま瞬間移動をした。残されたおまけは、パソコンでゲームのキャラクターを探して、どんな人だったかをもう一度よく思い返してみようとした。
ノリノリで小説を書いていた倫礼は、ピタリと手を止めて頭を抱えていた。
「いや~、また思い出しちゃった」
未だに本棚の隅っこに入っている神様の名簿に気づくこともなく、霊感と記憶力を頼りに天啓を受けて続けていた。
「白くんと甲くんといえば、他にも、葛くん禄くんっていたよね?」
子供たちに昔描いてあげた絵のスケッチブックは背表紙を向けたまま、本棚の肥やしになっている。
「それって、火炎不動明王さんの護法童子で、子供に後でなった子たち」
本棚に視線をやるが、部屋の構造上、奥まったところとなり、スケッチブックを倫礼は見つけることはできなかった。
「いや~、誰が好きになったっているか、わかってしまった~~!」
パソコンに向き直って、パチパチと文字を打ち込もうとするが、それどころではなくなってしまった。
「蓮は別として、最後に結婚した人が誰か別の人を好きって言い出すから、明引呼さんになる」
倫礼の空想世界でパイプが出てきて、ぷかぷかと煙をのぼらせながら、推理を始めようとしたが、すぐに答えが出て大声で叫んだ。
「え~! 兄貴と火炎不動明王さんが恋愛関係。あぁ、事実は小説より奇なりって言うけど、本当にそうだ。全然、恋愛しているようなイメージがなかったけど、言われてみればそうだと思えてくるから怖い」
おまけにとっては意外な人間関係だった。二人とも、早々と奥さんと結婚して、子供も生まれて順風万歩で生きているのだと思ったが、そんな悩みを抱えていたのだ。
「おう!」
しゃがれた声が背後からかけられた。霊視すると、明引呼が瞬間移動で部屋にやってきたところだった。
「あ、明引呼さん」
「ちょうど今思い出してたってか?」
守護神には何でもお見通しだった。
「そうです」
「他のやつらには話して、光秀さんにも了承得たからよ。プロポーズに行ってくるぜ」
「いってらっしゃい」
おまけは一言だけ告げた。明引呼は口の端を歪める。
「ずいぶん大人しいじゃねえか」
「私の意見はないに等しいですからね」
みんなに言ったということは、倫礼の本体は了承しているのだ。そこに、仮の魂のおまけがどうこう言えるはずもなかった。
それでも、この家の人たちは一人前として、おまけの倫礼を扱う。彼女の顔を明引呼はのぞき込んで、
「結婚生活うまくやれそうか」
「はぁ~」
正直なところ、盛大ないため息が出てしまうのだ。嘘をつくのは相手に失礼だと思うのだ。永遠に一緒にいることになるのだから、いつかはバレるだろう。
「どうも違えようだな」
「個性的なボケをかます人だな、ぐらいしか思ってないですからね」
おまけの倫礼の乏しい記憶の中で、テレビゲームでプレイした火炎不動明王をモデルとしたキャラクターの印象はそんなところだった。
「まあ、魂交換しちまえば、とんとん拍子に子供が生まれんだろ」
倫礼は今度、額に手を当てて深くため息をついた。
「そこもまた怖い。結婚して一ヶ月もたたないうちにそういうことになってしまうんだから、結婚の儀式って強力だなって思う」
心が結びつく。それはどんな絆よりも強固なものだった。心が大切だとよく言うが、正しくそれが結ばれてしまっているのだから、どうにも抗えなかった。
「じゃあ、今度こそマジで行ってくるぜ」
「はい、いってらっしゃい」
倫礼がうなずくと、明引呼はドアから出ずに、そのまま瞬間移動をした。残されたおまけは、パソコンでゲームのキャラクターを探して、どんな人だったかをもう一度よく思い返してみようとした。
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