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最後の恋は神さまとでした

時代の最先端/1

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 蓮たち家族と光命たちは結婚式場に訪れていた。参列者席には親友が友人が顔を連ねている。花嫁二人は白いウェディングドレスに身を包み、花婿二人は、蓮が黒で光命が瑠璃色のタキシードを着こなしていた。

 魂を交換する儀式がこの世界では結婚式。子供たちにもそれぞれの親の魂を入れるため、彼らも小さなタキシードとドレスで参加する。人間であるおまけの倫礼はくることは許されておらず、一人地球でお留守番。

 パイプオルガンが式場を包み込むようにそびえたつ。厳粛なムードで私語が聞こえてくることはなかった。

 司祭が主役たちを見渡し、式の注意事項を言い始めた。

「まず初めに、結婚の儀はご存知の方も多いと思いますが、男女の魂をそれぞれ交換して執り行います。ですが、今回は男女共にふたりずつおります。しかし、基本は変わりありませんので、ご安心ください」

 司祭も初めてのことだったが、陛下のお宅の結婚誌を執り行ったこともあり、その応用で、男性同士の魂の交換が新しく加わっただけだった。

「今現在いらっしゃるお子様四人にも、今回ご結婚されます両親の魂は入りますので、実の子供となります。お子様につきましては、少々お辛いかもしれませんが、儀式の対象者でございますので、一時間ほど退場ができません。お手洗いなどの心配があるようでしたら、先にお済ませください」

 じっとしていることができない五歳の子供には少々辛い式。倫礼は四人の子供の前にしゃがみ込んだ。

「大丈夫?」

 隆醒、百叡、我論、美崎の順で元気に答えてゆく。

「うん、昨日行った」
「僕は朝行った」
「そうね、百叡は言ったわね。我論は?」
「僕も昨日の夜行った」
「そう、美咲は?」
「大丈夫です」

 倫礼が司祭の顔を見ると、パイプオルガンの荘厳な音色が盛大に鳴り出した。

「それでは、儀式を始めます――」

 大人と子供それぞれ四人ずつは横並びとなった、厳正なる式が始まった。

    *

 その頃、某テレビ局では大騒ぎとなっていた。蜂の巣をつついたような大騒ぎとなっていた。

「ディーバとHikariが結婚するって、本当っすか?」
「それなら、特ダネですよ!」
「男同士が結婚するって、前例がないっすからね」
「いやいや、それどころか、ディーバとHikariが結婚するってことが大スクープなんだろう」
「とにかく、他に動かれる前に行かないと、大混乱間違いなしだ」

 慌ただしく、出発の準備をしようとすると、

「どこからその情報手に入れた?」
 
 キャップが噂の真偽にかかった。話を持ってきた鹿が携帯電話の画面を見せる。

「招待状をSNSにアップした人がいたんです」
「ファンの仕業じゃないのか?」

 デマかもしれない。浮き足立っていたスタッフは落ち着きを取り戻しそうだったが、鹿は胸をどんと張った。

「きちんと確認は取って、本人はもう式場にいます!」
「よし、すぐに式場へ迎え!」

 キャップが言うと、スタッフはテレビカメラなどの機材を持って、大慌てで飛び出して行った。どこのテレビ局や雑誌社でも同じようで、我先にと式場へ向かうのだった。

    *

 そして、滞りなく式が終わった一時間後、司祭は主役たちに丁寧に頭を下げ、にこやかな笑みを見せた。

「それでは、式は終了でございます。おめでとうございます」
「ありがとうございました」

 様々なことがあったが、今神の御前で、夫婦四人はひとつとなった。晴れて胸を張って人々の前へ出ることができる。これ以上の幸せはなかった。

 リンゴーンと教会の鐘がなり、パイプオルガンの音色に包まれながら、新しい家族は身廊を歩いていき、ドアの外へと出てゆく。参列席に並んでいる人々がライスシャワーを降らせていた。

「おめでとう!」
「おめでとう!」

 光命側の参列席に、夕霧命と覚師がいた。覚師は夫の脇腹を肘でとんとんと突いた。

「光、結婚しちまったけどいいのかい?」
「光が幸せならいい」

 夕霧命は珍しく目を細めて微笑んだ。光命が自分に惚れていることは知っている。そして、自分が光命を好きなのもわかっているが、これでいいと思った。

 ずっと悩んでいた光命が一歩踏み出せたのだ。こんな素晴らしい門出はない。

 二千年以上も生きている妻は、今頃罠だったとばらした。

「よっぽど嬉しいんだね。自分で認めるなんてさ」

 夕霧命の瞳から光命が一瞬消えて、不思議そうな顔をする。

「いつから知っとった?」
「やり直しから帰ってきてからだよ」
「ずいぶん前だ」

 なんだ、隠せたと思っていたのは自分たちだけだった。この妻に隠し事はできないのだ。夕霧命は改めて思った。 
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