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最後の恋は神さまとでした
残ったのは障害者手帳だけ/2
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薬の副作用で眠れない日々が続いたりしていたが、それでも医師に相談したりして、少しずつ回復していった。
そんなある日、おまけの倫礼に衝撃の事実が襲いかかった。
「さっき聞いた話……」
落ち着きなく両手を触り続ける。
「幻聴や幻覚って、自分を脅してきたりして、怖いものだと思ってた。でも、吹き出して笑うほど面白い幻聴もあるらしい。さっきの人が話してた」
コウから神さまたちの聞いた話は面白く、驚くこともあった。今はどうしているかわからないが、蓮の言動や子供たちの話でも笑ってしまうことはあった。
神経を研ぎ澄ましてみるが、霊視する糸口さえ見つからないまま、倫礼は心細そうに表情を歪める。
「もしかして、私が見てたのは霊感じゃなくて、幻聴と幻覚だった? あの綺麗だった神さまの世界はどこにもなかった?」
見えなくても、感じられなくても、聞こえなくても、倫礼の人生を大きく変えた出来事だった。彼女の人格を作っているといっても過言ではない。それがなかったことになれば、生きる道標をなくしてしまうだろう。
違っていてほしいと、倫礼は心の奥底で祈る――。
だがしかし、理論で考えれば、自分の望みは感情と一緒だ。倫礼はしっかりとした瞳で現実を見据えた。
「それは置いておこう。今やることは、放置するのはよくない。病気ならきちんと治療しないと、先生に聞いてみよう」
決心をして、迎えた翌日。病室へやってきた医師に、倫礼は質問を受けていた。
「どのように見えますか?」
「自分を三百六十度囲んでいて、時々そこから一人そばにくる感じです」
「どのように聞こえますか?」
「その人が立っている位置から距離感があって聞こえます」
倫礼は健在意識では忘れてしまっている光命の最大の特徴である、冷静さを持って、どちらに転んでも事実は事実として受け入れようと決めていた。
医師がゆっくりと首を横に振る。
「そちらは違いますよ」
「あぁ、そうですか。ありがとうございました」
倫礼はほっと胸をなで下ろしてお辞儀をすると、医師は部屋から出ていった。いつも同じ風景が見える窓辺に立って、切り取られた青空を見上げる。
「やっぱり霊感だった」
そして、彼女は気づくのだ。病気で自身の調子はやはり狂っているのだと。
「私は何を聞いてるんだろう? 昔いたじゃない? 自分と同じものを見て、同じタイミングで一緒のことを言った人が。だから霊感なんだよ」
あんなに気配がたくさんあったのに、孤独感が足元をすくいそうに渦を巻く。
「でも、もう聞いても意味がなかったね。見えなくなったんだから……」
霊感とはとても不安定なもので、見えなかったり聞こえないことなど、今までもよくあった。
それは数日で回復していたが、占い師をした時からもう半年が過ぎようとしていた。こんなに長いことは今までなかった。
自分に波動を与えてくださっている本体の倫礼。夫の蓮に子供たち。優しく厳しい父に、柔らかな笑みの母。バカな話をしたり、助けあったりした兄弟たち。
今もそばにいるのかもしれない。しかしそれさえも、感じ取れない。彼らが話かけているかもしれないのに、無視をするような形になっているのかと思うと、倫礼は心が痛んだ。
最後に蓮と交わした言葉も覚えていないほど、毎日懸命に生きてきて、彼は今どう思っているのだろうと、倫礼は思う。
だが、あのひねくれ蓮のことだ。メソメソ泣いていれば、火山噴火させて怒るだろう。一生懸命生きている人物に惹かれる夫だ。彼をがっかりさせない生き方をしようと、おまけの倫礼は思った。
そして、神とともに歩んだ日々が彼女に一筋の光を与えた。秋空のさらに向こう――神界を見ようとすると、自然と笑みがこぼれるのだった。
「だけど、あの綺麗な世界は今もどこかにあるんだ。みんなは生きてる。そして、自分のことを見守ってくださってる神さまがいるんだ」
クリスチャンが祈るように胸の前で手を組み、倫礼はそっと目を閉じる。
「ありがとうございます。今日という日を無事に過ごさせていただいて感謝します」
その日から、彼女は入院していることさえも、自分の経験値へと変えるようになっていった。
「そうか。いい話聞かせてもらった。幻覚とか幻聴を自分で克服したって。ということは、自分の病気の症状もある程度は軽減できるかも!」
倫礼は心の中で思い出すのだ。昔教会へ行った時に聞いた、神父の話を。
信じ続けるというのは、疑わないということではない。人間は弱いもので、疑う時があるのだ。それでも最後は信じると決意して、神の元へ戻ればいいのだ。
その時、神さまは何の文句も言わず、あなたを喜んで迎え入れてくれる――と。
自身の手違いで霊感を失い、神の世界から遠ざかったが、守護神の蓮がまだそばにいると、おまけの倫礼でいると、彼女は信じようと何度も何度も挑戦し続けるが、霊感が戻らないまま三ヶ月の月日が流れていった。
そんなある日、おまけの倫礼に衝撃の事実が襲いかかった。
「さっき聞いた話……」
落ち着きなく両手を触り続ける。
「幻聴や幻覚って、自分を脅してきたりして、怖いものだと思ってた。でも、吹き出して笑うほど面白い幻聴もあるらしい。さっきの人が話してた」
コウから神さまたちの聞いた話は面白く、驚くこともあった。今はどうしているかわからないが、蓮の言動や子供たちの話でも笑ってしまうことはあった。
神経を研ぎ澄ましてみるが、霊視する糸口さえ見つからないまま、倫礼は心細そうに表情を歪める。
「もしかして、私が見てたのは霊感じゃなくて、幻聴と幻覚だった? あの綺麗だった神さまの世界はどこにもなかった?」
見えなくても、感じられなくても、聞こえなくても、倫礼の人生を大きく変えた出来事だった。彼女の人格を作っているといっても過言ではない。それがなかったことになれば、生きる道標をなくしてしまうだろう。
違っていてほしいと、倫礼は心の奥底で祈る――。
だがしかし、理論で考えれば、自分の望みは感情と一緒だ。倫礼はしっかりとした瞳で現実を見据えた。
「それは置いておこう。今やることは、放置するのはよくない。病気ならきちんと治療しないと、先生に聞いてみよう」
決心をして、迎えた翌日。病室へやってきた医師に、倫礼は質問を受けていた。
「どのように見えますか?」
「自分を三百六十度囲んでいて、時々そこから一人そばにくる感じです」
「どのように聞こえますか?」
「その人が立っている位置から距離感があって聞こえます」
倫礼は健在意識では忘れてしまっている光命の最大の特徴である、冷静さを持って、どちらに転んでも事実は事実として受け入れようと決めていた。
医師がゆっくりと首を横に振る。
「そちらは違いますよ」
「あぁ、そうですか。ありがとうございました」
倫礼はほっと胸をなで下ろしてお辞儀をすると、医師は部屋から出ていった。いつも同じ風景が見える窓辺に立って、切り取られた青空を見上げる。
「やっぱり霊感だった」
そして、彼女は気づくのだ。病気で自身の調子はやはり狂っているのだと。
「私は何を聞いてるんだろう? 昔いたじゃない? 自分と同じものを見て、同じタイミングで一緒のことを言った人が。だから霊感なんだよ」
あんなに気配がたくさんあったのに、孤独感が足元をすくいそうに渦を巻く。
「でも、もう聞いても意味がなかったね。見えなくなったんだから……」
霊感とはとても不安定なもので、見えなかったり聞こえないことなど、今までもよくあった。
それは数日で回復していたが、占い師をした時からもう半年が過ぎようとしていた。こんなに長いことは今までなかった。
自分に波動を与えてくださっている本体の倫礼。夫の蓮に子供たち。優しく厳しい父に、柔らかな笑みの母。バカな話をしたり、助けあったりした兄弟たち。
今もそばにいるのかもしれない。しかしそれさえも、感じ取れない。彼らが話かけているかもしれないのに、無視をするような形になっているのかと思うと、倫礼は心が痛んだ。
最後に蓮と交わした言葉も覚えていないほど、毎日懸命に生きてきて、彼は今どう思っているのだろうと、倫礼は思う。
だが、あのひねくれ蓮のことだ。メソメソ泣いていれば、火山噴火させて怒るだろう。一生懸命生きている人物に惹かれる夫だ。彼をがっかりさせない生き方をしようと、おまけの倫礼は思った。
そして、神とともに歩んだ日々が彼女に一筋の光を与えた。秋空のさらに向こう――神界を見ようとすると、自然と笑みがこぼれるのだった。
「だけど、あの綺麗な世界は今もどこかにあるんだ。みんなは生きてる。そして、自分のことを見守ってくださってる神さまがいるんだ」
クリスチャンが祈るように胸の前で手を組み、倫礼はそっと目を閉じる。
「ありがとうございます。今日という日を無事に過ごさせていただいて感謝します」
その日から、彼女は入院していることさえも、自分の経験値へと変えるようになっていった。
「そうか。いい話聞かせてもらった。幻覚とか幻聴を自分で克服したって。ということは、自分の病気の症状もある程度は軽減できるかも!」
倫礼は心の中で思い出すのだ。昔教会へ行った時に聞いた、神父の話を。
信じ続けるというのは、疑わないということではない。人間は弱いもので、疑う時があるのだ。それでも最後は信じると決意して、神の元へ戻ればいいのだ。
その時、神さまは何の文句も言わず、あなたを喜んで迎え入れてくれる――と。
自身の手違いで霊感を失い、神の世界から遠ざかったが、守護神の蓮がまだそばにいると、おまけの倫礼でいると、彼女は信じようと何度も何度も挑戦し続けるが、霊感が戻らないまま三ヶ月の月日が流れていった。
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