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最後の恋は神さまとでした
男と男が出会う時/4
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蓮は決め手にかけて、鋭利なスミレ色の瞳でただ見ていることしかできなかった。その言動は、相手の光命からすればこう映っていた。
(なぜ、あの方は私を見ていらっしゃるのでしょう? おかしいみたいです)
冷静な水色の瞳はガラス窓を一枚通して、斜め後ろに立っている銀髪の男を鏡のようにしてうかがっていた。
この世界に決してくることができない、おまけの倫礼を間に挟んで、男ふたりはお互いを意識するようになるが、それさえも神々の領域へと上がっている陛下が予測した未来の通り進んでいた。
*
家に帰ってきてからも、蓮は光命のことを考えていた。本体の倫礼には夕食の時に、仕事のことは聞かれたが、関係のない男のことは何も言わなかった。
分身をして、子供たちが寝静まった夜に地球へとやってきて、狭いアパートにあるソファーに蓮はいつも通り足を華麗に組んで座っていた。
おまけの倫礼はパソコンのキーボードをパチパチと打ち込んで、満足げな顔を見せる。
「ん~? この主役は光命さんをモデルにして、双子の兄は月主命さんにしよう。そのほうが面白いかもしれない。このふたりの考え方は似てるから――っていうか、思考回路が好きだから採用しよう」
今日もR&Bを一曲だけリピートしたまま、作業を進めてゆく倫礼は、絶好調だった。
「ふふ~ん♪」
ひとつ悩み事が持ち上がって、倫礼はふと手を止めた。
「でも、本文を書く時間がないというか、気力がない。毎日疲れちゃって、アイディアだけは思い浮かぶのになぁ~」
全ての家事が自分一人。何かトラブルがあっても、相談できる人はいない。自分で解決してゆく。
失踪しての一人暮らしはとても身にしみた。帰るつもりもない、終わりのこない孤独な日々。今思いついた物語は双子の話。
「家族か……。自分は一人。でも、仕方ないよね。この世界はすれ違うようにできてるんだよね」
映画みたいにうまくいかないからこそ、夢として話が書かれているのだ。現実はひとつやふたつ衝突したって、うまくいくどころか、悪化するなんてこともあり得る。
倫礼は電気スタンドの明かりを消して、眠る準備を始めた。蓮は腕組みしながら、彼女の姿を目で追う。
「見た目や地位で好きになる人間はたくさんいる。そんな程度の低い偽物の愛なら、あきらめさせてやるほうが、おまけのためだと思っていたが……」
守護神としてというよりは、夫として妻を救ってやりたかった。誰かを好きならば、それを叶えてやってもいいと思った。
男の自分が見惚れるほど、綺麗な男だった。見た目と中身は比例するのが神世だ。妻があの男に引かれて当然だと思った。今だって、小説のモデルにすると、嬉しそうに言っていた。
「中身を好きになったのか……。倒れるほど夢中になって、光命を理解したかったのか」
あっという間にお風呂の湯は張られ、ベルガモットの香りが漂ってきた。チャプンチャプンと水を救い上げる音がする。
「俺やまわりの人間を想って、心の奥底にしまって、想っていることも忘れたのか。自分のことはいつも後回しで、神の気持ちを優先する……」
地底深くで密かに活動していた火山が噴火する寸前の、怒りで蓮の可愛らしい顔は引きつっていた。
「お前は何様もつもりだ! 人間が神さまを守れるはずがないだろう!」
お風呂場に瞬間移動をして、触れられないながらも、倫礼の頭をパシンと力一杯引っ叩いてやった。この立場をわきまえない傲慢な人間の女の頭を。
おまけの倫礼は、光命と月主命のふたりをモデルにした小説を書ける日を夢見て、何事もなくバスタイムを楽しんでいた。
(なぜ、あの方は私を見ていらっしゃるのでしょう? おかしいみたいです)
冷静な水色の瞳はガラス窓を一枚通して、斜め後ろに立っている銀髪の男を鏡のようにしてうかがっていた。
この世界に決してくることができない、おまけの倫礼を間に挟んで、男ふたりはお互いを意識するようになるが、それさえも神々の領域へと上がっている陛下が予測した未来の通り進んでいた。
*
家に帰ってきてからも、蓮は光命のことを考えていた。本体の倫礼には夕食の時に、仕事のことは聞かれたが、関係のない男のことは何も言わなかった。
分身をして、子供たちが寝静まった夜に地球へとやってきて、狭いアパートにあるソファーに蓮はいつも通り足を華麗に組んで座っていた。
おまけの倫礼はパソコンのキーボードをパチパチと打ち込んで、満足げな顔を見せる。
「ん~? この主役は光命さんをモデルにして、双子の兄は月主命さんにしよう。そのほうが面白いかもしれない。このふたりの考え方は似てるから――っていうか、思考回路が好きだから採用しよう」
今日もR&Bを一曲だけリピートしたまま、作業を進めてゆく倫礼は、絶好調だった。
「ふふ~ん♪」
ひとつ悩み事が持ち上がって、倫礼はふと手を止めた。
「でも、本文を書く時間がないというか、気力がない。毎日疲れちゃって、アイディアだけは思い浮かぶのになぁ~」
全ての家事が自分一人。何かトラブルがあっても、相談できる人はいない。自分で解決してゆく。
失踪しての一人暮らしはとても身にしみた。帰るつもりもない、終わりのこない孤独な日々。今思いついた物語は双子の話。
「家族か……。自分は一人。でも、仕方ないよね。この世界はすれ違うようにできてるんだよね」
映画みたいにうまくいかないからこそ、夢として話が書かれているのだ。現実はひとつやふたつ衝突したって、うまくいくどころか、悪化するなんてこともあり得る。
倫礼は電気スタンドの明かりを消して、眠る準備を始めた。蓮は腕組みしながら、彼女の姿を目で追う。
「見た目や地位で好きになる人間はたくさんいる。そんな程度の低い偽物の愛なら、あきらめさせてやるほうが、おまけのためだと思っていたが……」
守護神としてというよりは、夫として妻を救ってやりたかった。誰かを好きならば、それを叶えてやってもいいと思った。
男の自分が見惚れるほど、綺麗な男だった。見た目と中身は比例するのが神世だ。妻があの男に引かれて当然だと思った。今だって、小説のモデルにすると、嬉しそうに言っていた。
「中身を好きになったのか……。倒れるほど夢中になって、光命を理解したかったのか」
あっという間にお風呂の湯は張られ、ベルガモットの香りが漂ってきた。チャプンチャプンと水を救い上げる音がする。
「俺やまわりの人間を想って、心の奥底にしまって、想っていることも忘れたのか。自分のことはいつも後回しで、神の気持ちを優先する……」
地底深くで密かに活動していた火山が噴火する寸前の、怒りで蓮の可愛らしい顔は引きつっていた。
「お前は何様もつもりだ! 人間が神さまを守れるはずがないだろう!」
お風呂場に瞬間移動をして、触れられないながらも、倫礼の頭をパシンと力一杯引っ叩いてやった。この立場をわきまえない傲慢な人間の女の頭を。
おまけの倫礼は、光命と月主命のふたりをモデルにした小説を書ける日を夢見て、何事もなくバスタイムを楽しんでいた。
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