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最後の恋は神さまとでした
父上の優しさと厳しさ/2
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そして、いつの間にか、彼女は神界にある自宅へ魂みたいなものを使って訪れることができるようになっていた。
コの字の縁側が見える座敷にひとりで立って、月明かりが差し込む庭園を眺める。ウキウキ気分で、最初からできていたと思い込んでスルーしてゆく。
分身している父。仲 睦まじく、縁側に肩を並べて座り、母が楽しげに話しているのを、父が時折相づちを打って聞いている。
「いいな。父上と母上みたいに相手を尊重し合って、お互いのことを大切に考えられる。私もそんな結婚をしたい。そういう関係を築いていきたい。父上と母上は私の尊敬できる人たちだ」
今年で三十七歳になる倫礼は自身の結婚についての憧れは十分持っていて、まだまだ夢見る少女のようだった。
仮の魂に落ち着きはなく、ふらふらと肉体に戻ってきたり、神界へ行ってしまったりとしている、娘の後ろ姿を父は真摯な眼差しで見つめていた。
「お前は今、鬱状態で夜の街を歩いていると思っているが、違うと気づくのはやはり、だいぶあとになってからなのかもしれん」
家を出る前は落ち込んでいたはずなのに、玄関の鍵を開ける時は幸せな気持ちでいっぱいだった。気分転換が成功して、病状がよくなったのだと、倫礼は信じて疑わなかった。
父と娘の守護神と人間の関係はいつもこんな感じで、倫礼が同じところをグルグル回り始めると、光秀が諭すが、彼は決してこうしなさいとは言わず、あくまでも可能性で話すだけだった。
倒れるほど理論を学んだつもりだった倫礼は、当然のことながらきちんと使えるはずもなく、ゼロか無限かの両極端で物事を決めつける日々を送っていく。
自分を責める癖のある彼女は、病状をきちんと把握することができず、神界の家族が心配していた通りの未来を歩むこととなってゆくのだった。
*
そんなある日、コンビニ買い込んできたお菓子とジュースを机の下に置いて、倫礼はDVDを見ながら、
「そういえば、小説全然書く時間なくなっちゃったね。計画を立てないと……」
そこまで言って、彼女は今までの半生を反省した。
「三日坊主ところか、一日で計画倒れするんだよね? 昔からそうで……」
ペットボトルのキャップをひねって、ミネラルウォーターをガブガブと飲んで、深くため息をついた。
「仕事も一年以上は絶対に続かない。続け方を教えてくれる人もいたんだけど……」
苦い記憶を思い返して、それがストレスとなり、なぜかイライラしてくるのだった。
「一年ぐらい経つと、仕事が任されるようになるじゃない? 私は下っ端のままでいいんだよね? それなのに、必ず責任が出てくるようになる。すると、ある日怒りが爆発して、怒鳴り散らしたりとか、鬱状態がひどくて起き上がれなくて、無断欠勤して結局クビになる」
カチカチとシャーペンの芯を出して、メモ帳にグルグルと円をいくつも描いてゆく。
「人間ができてないのかな? 両親に暴力を振るっても、結局は話は理解されなかったじゃない? だから、暴力振るっても意味がないって思った。労力の無駄だって。だから、暴力振るわないって決めたのに、怒りでぶちぎれるってやつが起きるんだよね?」
倫礼はバッグからはみ出した、何種類もある薬を見下ろした。
「しかも、こうやって思い返してみても、反省してないんだよね。まるで人ごと」
メモ帳には鉛色のトルネードが立派にでき上がっていた。手を止めて、倫礼は机に頬杖をつく。
「自分ってこんな人間だったかな? って首を傾げる時があるんだよね。もっとこう……ヴァイオレンスなのは極力避けたい人間だったと思うんだよね? 大人向けの物語は見れなくて、子供の物語でも怖がったり驚いたいするタイプだった。それにさ、自分がされて嫌なことは他人にしない。それをモットーとして生きてきた。だから、ヴァイオレンスは相手にもしない。でもしてる……有口無行」
コの字の縁側が見える座敷にひとりで立って、月明かりが差し込む庭園を眺める。ウキウキ気分で、最初からできていたと思い込んでスルーしてゆく。
分身している父。仲 睦まじく、縁側に肩を並べて座り、母が楽しげに話しているのを、父が時折相づちを打って聞いている。
「いいな。父上と母上みたいに相手を尊重し合って、お互いのことを大切に考えられる。私もそんな結婚をしたい。そういう関係を築いていきたい。父上と母上は私の尊敬できる人たちだ」
今年で三十七歳になる倫礼は自身の結婚についての憧れは十分持っていて、まだまだ夢見る少女のようだった。
仮の魂に落ち着きはなく、ふらふらと肉体に戻ってきたり、神界へ行ってしまったりとしている、娘の後ろ姿を父は真摯な眼差しで見つめていた。
「お前は今、鬱状態で夜の街を歩いていると思っているが、違うと気づくのはやはり、だいぶあとになってからなのかもしれん」
家を出る前は落ち込んでいたはずなのに、玄関の鍵を開ける時は幸せな気持ちでいっぱいだった。気分転換が成功して、病状がよくなったのだと、倫礼は信じて疑わなかった。
父と娘の守護神と人間の関係はいつもこんな感じで、倫礼が同じところをグルグル回り始めると、光秀が諭すが、彼は決してこうしなさいとは言わず、あくまでも可能性で話すだけだった。
倒れるほど理論を学んだつもりだった倫礼は、当然のことながらきちんと使えるはずもなく、ゼロか無限かの両極端で物事を決めつける日々を送っていく。
自分を責める癖のある彼女は、病状をきちんと把握することができず、神界の家族が心配していた通りの未来を歩むこととなってゆくのだった。
*
そんなある日、コンビニ買い込んできたお菓子とジュースを机の下に置いて、倫礼はDVDを見ながら、
「そういえば、小説全然書く時間なくなっちゃったね。計画を立てないと……」
そこまで言って、彼女は今までの半生を反省した。
「三日坊主ところか、一日で計画倒れするんだよね? 昔からそうで……」
ペットボトルのキャップをひねって、ミネラルウォーターをガブガブと飲んで、深くため息をついた。
「仕事も一年以上は絶対に続かない。続け方を教えてくれる人もいたんだけど……」
苦い記憶を思い返して、それがストレスとなり、なぜかイライラしてくるのだった。
「一年ぐらい経つと、仕事が任されるようになるじゃない? 私は下っ端のままでいいんだよね? それなのに、必ず責任が出てくるようになる。すると、ある日怒りが爆発して、怒鳴り散らしたりとか、鬱状態がひどくて起き上がれなくて、無断欠勤して結局クビになる」
カチカチとシャーペンの芯を出して、メモ帳にグルグルと円をいくつも描いてゆく。
「人間ができてないのかな? 両親に暴力を振るっても、結局は話は理解されなかったじゃない? だから、暴力振るっても意味がないって思った。労力の無駄だって。だから、暴力振るわないって決めたのに、怒りでぶちぎれるってやつが起きるんだよね?」
倫礼はバッグからはみ出した、何種類もある薬を見下ろした。
「しかも、こうやって思い返してみても、反省してないんだよね。まるで人ごと」
メモ帳には鉛色のトルネードが立派にでき上がっていた。手を止めて、倫礼は机に頬杖をつく。
「自分ってこんな人間だったかな? って首を傾げる時があるんだよね。もっとこう……ヴァイオレンスなのは極力避けたい人間だったと思うんだよね? 大人向けの物語は見れなくて、子供の物語でも怖がったり驚いたいするタイプだった。それにさ、自分がされて嫌なことは他人にしない。それをモットーとして生きてきた。だから、ヴァイオレンスは相手にもしない。でもしてる……有口無行」
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