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最後の恋は神さまとでした
神さまに会いたくて/2
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「よし、じゃあ、もうひとつの訓練のために、そこへ魂を飛ばして、霊視してみろ」
「あの墓地に行く?」
遠くの宇宙の流れに乗っているところで、ここから何百キロしか離れていない、ピンポイントへ肉体を残して飛べと言う。
見えるもの触れるものに縛られている人間の女を、コウは神の御言葉で解放する。
「心の世界は思い浮かべれば、その場所へ簡単に行くことができる。神様が瞬間移動できる原理だ」
「なるほど。よし、やってみよう」
彼女は他の人と価値観が違っていた。神さまとは敬うもので、距離をきちんと取らないといけない、という考えは持っていなかった。
とある本で読んだのだ。神さまとは友達のように仲良くなったほうが、願いを聞く側も聞きやすと。同じ心を持った存在だからこそ、コミニケーションが大切なのだと。
何の疑いも戸惑いもなしに、澄藍は集中するために、またまぶたをそっと閉じた。
「ん~~? あぁ……」
写真のように鮮やかに蘇るが、まわりに生えている草木は、リアルタイムで風に揺れている風景の中に立っていた。
「何か見えたか?」
そこへ、白い着物を着た人たちが今度は映り出す。
「おかしいね。昔は見えなかったのに、今は見えるようになったんだ。周波数を合わせていないだけで、見えてるんだ、本当は」
神さまがそばにいる以上、幽霊は寄ってこれない。霊感が弱かった頃の視線の数と、今見ている人の数と角度が合っている。感覚でそれはわかる。
「何かをしてくる雰囲気じゃないんだけど、それぞれの家のお墓まわりに人が立って、生きている人のことをじっと見てる」
肉体を持って歩いている墓参りをする桶を持った、洋服を着た人たちが景色に入り込んで、図形などを写しとる、トレースシートを二枚重ねたようにピタリと別々の次元が重なり合った。
初めてにしては上出来な人間の女に、コウはお褒めの言葉を遣わす。
「正解だ!」
とても重要な気になることがあって、澄藍は話を続けようとしたが、まさしく神業の如く、素早くさえぎられた。
「あ、でもね――」
「待った! お前が言いたいことはわかってる」
人間の未来を予測できる能力を持っているだけあって、以心伝心で嬉しい限りだ。
「やっぱり神さまだね。私の思ってることがわかるなんて」
「当たり前だ。それは最後にしろ」
「うん」
急いで霊視の場所を元へ引き戻してきて、あまり入力するのは気が引けるキーワドだと澄藍は思いながら、『心霊スポット』とキーボードを打ち込んだ。
「準備は整ったか?」
「できた」
静止画がいくつも縦に並んだ。
「じゃあ、上にスクロールしていけ。こっちで例題を教える」
「うん」
ワイヤレスのマウスに手を乗せ、ゆっくり小さな丸を指先で下へなぞる。いくつもいかないうちに、コウの声が響き渡った。
「ストップ! 上から二番目のだ」
「これね」
「再生してよく見ろ」
フルスクリーンにして、澄藍は椅子の背もたれに寄り掛かった。
*
海外にある一軒家で起き続けるポルターガイスト現象。過去に殺人事件現場となった家を買いつけて、新しい住人がくるが、心霊現象に耐えられず、家を出て行くと家族があとをたたないと言う。
この家に住んだことのある、とある家族からの証言。静かな住宅街の一角で、買い物などにも便利な住みやすい家だった。一家は事故物件だと知らず購入。
しかし、引っ越した日の夜から、風もないのに窓を叩く音が聞こえたり、廊下を歩く足音がするが、姿を見ることはできない――怪奇現象が起きていた。家族が触ったはずのないものが動いていたり、なくなったりと、日に日に状況は悪化して行く一方。
ある日、リビングの壁から緑色の血のような液体が流れ出てきて……。
……この物件は今でも売りに出ていて、過去に殺された人の霊が、住人たちを襲っていると言う――。
「あの墓地に行く?」
遠くの宇宙の流れに乗っているところで、ここから何百キロしか離れていない、ピンポイントへ肉体を残して飛べと言う。
見えるもの触れるものに縛られている人間の女を、コウは神の御言葉で解放する。
「心の世界は思い浮かべれば、その場所へ簡単に行くことができる。神様が瞬間移動できる原理だ」
「なるほど。よし、やってみよう」
彼女は他の人と価値観が違っていた。神さまとは敬うもので、距離をきちんと取らないといけない、という考えは持っていなかった。
とある本で読んだのだ。神さまとは友達のように仲良くなったほうが、願いを聞く側も聞きやすと。同じ心を持った存在だからこそ、コミニケーションが大切なのだと。
何の疑いも戸惑いもなしに、澄藍は集中するために、またまぶたをそっと閉じた。
「ん~~? あぁ……」
写真のように鮮やかに蘇るが、まわりに生えている草木は、リアルタイムで風に揺れている風景の中に立っていた。
「何か見えたか?」
そこへ、白い着物を着た人たちが今度は映り出す。
「おかしいね。昔は見えなかったのに、今は見えるようになったんだ。周波数を合わせていないだけで、見えてるんだ、本当は」
神さまがそばにいる以上、幽霊は寄ってこれない。霊感が弱かった頃の視線の数と、今見ている人の数と角度が合っている。感覚でそれはわかる。
「何かをしてくる雰囲気じゃないんだけど、それぞれの家のお墓まわりに人が立って、生きている人のことをじっと見てる」
肉体を持って歩いている墓参りをする桶を持った、洋服を着た人たちが景色に入り込んで、図形などを写しとる、トレースシートを二枚重ねたようにピタリと別々の次元が重なり合った。
初めてにしては上出来な人間の女に、コウはお褒めの言葉を遣わす。
「正解だ!」
とても重要な気になることがあって、澄藍は話を続けようとしたが、まさしく神業の如く、素早くさえぎられた。
「あ、でもね――」
「待った! お前が言いたいことはわかってる」
人間の未来を予測できる能力を持っているだけあって、以心伝心で嬉しい限りだ。
「やっぱり神さまだね。私の思ってることがわかるなんて」
「当たり前だ。それは最後にしろ」
「うん」
急いで霊視の場所を元へ引き戻してきて、あまり入力するのは気が引けるキーワドだと澄藍は思いながら、『心霊スポット』とキーボードを打ち込んだ。
「準備は整ったか?」
「できた」
静止画がいくつも縦に並んだ。
「じゃあ、上にスクロールしていけ。こっちで例題を教える」
「うん」
ワイヤレスのマウスに手を乗せ、ゆっくり小さな丸を指先で下へなぞる。いくつもいかないうちに、コウの声が響き渡った。
「ストップ! 上から二番目のだ」
「これね」
「再生してよく見ろ」
フルスクリーンにして、澄藍は椅子の背もたれに寄り掛かった。
*
海外にある一軒家で起き続けるポルターガイスト現象。過去に殺人事件現場となった家を買いつけて、新しい住人がくるが、心霊現象に耐えられず、家を出て行くと家族があとをたたないと言う。
この家に住んだことのある、とある家族からの証言。静かな住宅街の一角で、買い物などにも便利な住みやすい家だった。一家は事故物件だと知らず購入。
しかし、引っ越した日の夜から、風もないのに窓を叩く音が聞こえたり、廊下を歩く足音がするが、姿を見ることはできない――怪奇現象が起きていた。家族が触ったはずのないものが動いていたり、なくなったりと、日に日に状況は悪化して行く一方。
ある日、リビングの壁から緑色の血のような液体が流れ出てきて……。
……この物件は今でも売りに出ていて、過去に殺された人の霊が、住人たちを襲っていると言う――。
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