上 下
196 / 967
最後の恋は神さまとでした

神さまの実験終了/1

しおりを挟む
 そして翌日――。

 今まさに世界は、新しい始まりを迎えた。遠くの惑星がひとつ、凄まじい破壊音を立てて、太陽にように真っ赤に染まり宇宙のチリとなってゆく。

 あれほど人々を苦しめた本拠地だった惑星。誰も倒すことが許されなかった――いや倒すことのできなかったしき存在が、たった一人の青年の手によって終焉を告げた。

 消え去ってゆく悲劇の歴史を、アッシュグレーの鋭い眼光は、様々な想いを胸に静かに見守っていたがやがて、しゃがれた声が宇宙に浮かぶ星々ににじんだ。

「これで終わりってか?」
「邪神界――悪は滅びちゃいましたからね」

 甲冑かっちゅう姿という固いイメージなのに、こぼれ落ちた声色は羽のように柔らかく低めの声だった。

 最初に話しかけた男がかぶとを取ると、藤色の剛毛があらわになった。ガシガシと節々がはっきりとした指先でかき上げられる。

「長かったな」
「五千年前から続いていたそうですから、僕たちにしてみればちょっと長かったです」

 神様独特の価値観で話している男の髪はカーキ色のくせ毛。無風、大気なしの惑星の地面の上で、それがなぜか風に舞う。

 今も目の前で消滅してゆく惑星を、いつも鋭くにらんでいたアッシュグレーの瞳はそれまでと違って、まぶたに疲れたように閉じられ、男は地面にヘトヘトと座り込んだ。

「少しは休ませろって……」
「僕は大概のことでは根を上げませんが、これには少々くたびれました」

 甲冑姿だというのに、外国の兵隊のように、腰で両手を組んで右に左に、優男やさおとこはエレガントに歩いた。

 別の銀河で美しい青を見せる、地球でサラリーマンをやっている人間と、神世に住んでいる自分を比べて、ガタイのいい男は皮肉まじりに口の端を歪めた。

「どんだけブラックだよ?」
「真っ黒黒くろくろけです」

 兄貴肌の男と天然ボケが少し入った王子みたいな男の会話はまだまだ続く。

「生まれてから仕事仕事でよ、二千年ちょっと寝たことねえぜ。いくら死なねえからって、腹も減らねぇからって、マジでおかしいだろ。しかもよ、手は出せねえって、見てるだけっつう、蛇の生殺しみてえなことしやがって。統治者ドSだろ?」

 永遠とは、ある意味恐怖でしかなかった。人間世界より、神世のほうがこくであった。しかし、くせ毛の優男はにっこり微笑んで、上品に顔の横で手を振る。

「それでは、僕は実家に帰って、とりあえず家族水入らずです」
「相変わらず、話スルーして笑い取りやがって」

 しゃがれた声がツッコミを入れ、今までの日々のやり取りがより一層濃い色をつけて垣間見えた気がした――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...