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リレーするキスのパズルピース

パズルピースの帰宅/5

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 明引呼の口の端はニヤリとして、こんなこと言った。

「割り込めんなら、俺も混ぜろや」

 兄貴も何気に上乗り。お茶から取り出した桜の花びらに、フーッと息をかけて飛ばすと、子供たちがぴょんぴょん跳ねてそれを取ろうとする。そして、その前にいた焉貴が砕けた感じで参戦した。

「じゃあ、俺も入れて~?」
(昼休みの約束どおり便乗しちゃいました!)

 残り三人。湯飲み茶碗が一番似合っている服を着ている夕霧命は、袴の袖を艶やかに脇へ落とした。

「俺もする」
(修業には笑いが必要だ)

 子供たちを眺めている冷静な水色の瞳とその神経質な頬は、まるで映画のワンシーンのように綺麗な横顔を見せていた。

「夕霧がセック○するのでしたら、私も加えてください」
(いつもの罠みたいです)

 はつらつとした若草色の瞳に、夫が映り変わってゆくたび、数が増えてゆくという。どうやっても罠であろう、玄関ホールの夫夫の会話。何度夜を迎えても、独健は慣れないものだった。

 月命と共謀している孔明。彼の銀のチェーンブレスレットは、獲物であるひまわり色の髪を妖艶になめるように触った。

「ふふっ。モテモテだね、独健は今日も。ボクは髪をなでてあげるよ」

 全てを記憶する頭脳。それは、こんなこともわかってしまうのだ。白い薄衣の下にある胸の内はこうなっていた。

(この順番で、話してくるからね、みんな。だけど、彼だけは話さないから、ボクから最後の確認で、月の罠は終了)

 そして、光命がわざと家に呼び戻していた人に、孔明が話しかけることで、四人の策士の罠が集大成を迎える。

「蓮、キミはどするの?」

 光命が戻ってこいと言った理由がわかった蓮は即答だった。だが、態度はデカデカ。

「いい、してやる」

 こうして、たまに策略家の貴増参の、羽布団みたいな柔らかさで低めの声が、こんなことを言って締めくくった。

「素敵です。みんなでニャンニャンする。明るい家族計画です」

 独健は座っていた椅子から、バッと思わず立ち上がった。彼の少し鼻にかかる声が玄関ホールにこだまする。

「だ~か~ら~っ! 夫九人の複数婚、初めてなんだから、もう少し優しくしてくれ! っていうか、何で、次々に俺に押し寄せて、毎日毎日、夫全員ってか、毎晩、BL9P! になるんだっっ!!!!」

 大人の話は全然聞こえていないまわりにいた子供たちは、不思議そうに独健パパの様子を眺めていた。めでたく、夜に独健を囲む会が出来上がったのを見計らって、子供たちと話していた颯茄が割って入った。

「はい、お弁当箱を回収します」

 それぞれの手に、瞬間移動ですっと現れた。好物以外は全て同じメニューだったはずのお弁当箱。

「今日は全部で何個だ?」

 ママは子供たちを見渡した。

「いくつ?」

 子供たちは並べられたからのお弁当箱を見ながら、不思議そうに首を傾げた。

「数学の先生、計算お願いします!」

 颯茄に話を振られた数学教諭が、パンパンと手を頭の上で鳴らした。

「はい! じゃあ、焉貴パパに、チビたち注目~!」

 さすが先生。遊んでいた子供たち全員が一斉によってきた。

「うん、何?」
「何するの?」

 今は数学、昔は算数の先生だった焉貴は、子供たちに出題。

「九引く二は、いくつ?」

 即行手が上がった。ぴょんぴょん飛び跳ねたり、袖口を引っ張ったり、それぞれの方法で、自分をアピールしてきた。

「はいはい!」
「わかる~!」

 まだら模様の声が指揮を取るように合図をかけた。

「じゃあ、みんなで、せいの~っ!」
「七っっ!」

 蓮パパができなかった、簡単な引き算は、きちんと我が子には解けていた。マゼンダ色の長い髪がリボンに結わかれたまま、子供たちのすぐそばにすっと腰を下ろす。

「よくできました。こちらを差し上げますよ、ご褒美として」

 抱えるほどの大きな袋で、そのリボンが解かれると、甘い香りがしてきた。子供たちは目をキラキラ輝かせる。

「うわー! キャンディーだ」
「月パパ、ありがとう」

 さっそくアメを口に入れた子供のほっぺたはぷくっと膨れ上がり、そのまま、またそれぞれ好きなように走ったり、椅子の上に寝そべったりを始めた。

 申し合わせたように出てきたキャンディー。当然、出どころが気になる。月命は学校の先生であり、少し仕事が残っていたが、家に真っ直ぐ帰るようなことを昼休みに、焉貴に話していた。買い物など行っていないはずだ。

「これ、どうしたの?」

 焉貴が自分もひとつ手に持ちながら、まるでお菓子の国の王女さまみたいな、女装夫に問いかけた。だがしかし、月命はニコニコしているだけだった。

「うふふふっ」

 それが、何を意味しているのかは、明智家に婿養子にきて、この男と少し過ごしてみればわかるのだ。この男がどんな特異体質なのかは。夕霧命があきれた顔をした。

「またお前……」
「ほとんど毎日ですよね。どうなってるんですか? 月さんは」

 颯茄もひとつキャンディーを取って、歯に挟んでクルクルっと袋を取った。
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