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リレーするキスのパズルピース
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ある日の夕食後。食べるのが一番遅い颯茄が食べ終わると、
「パンパカパーン!」
薬玉を割ったようなことを言って、月命がみんなを注目させた。
「なんだ?」
カラになった皿からみんなに視線が一斉に上げられた。月命は薄い冊子を持ち出して説明する。
「先日、とある脚本家の方にシナリオを書いていただけるキャンペーンをやっていたのですが、見事当選しました」
「相変わらずくじ運がいい」
この夫は強運の持ち主であって、賭け事は彼の担当である。そんな月命だったが、こめかみに人差し指を突き立て困った表情をした。
「ただ、残念なことがあるんです~」
「何だ?」
「張飛と結婚する前の応募でしたので、今回君は入っていないんです」
「俺っちはいいっすよ」
新参者だ。そんなことは気にしない。それよりも、みんなの仲がいいことが何よりの幸せだ。
「そうですか~?」
月命は語尾をゆるゆると伸ばしながら、テーブルの上に束になった冊子を乗せた。それを見ながら、張飛は興味深げに身を乗り出した。
「ところで、どんな話を書いてもらったすか?」
「僕たち夫チームをモデルとしたキャラクターで、キスのリレーをしていくというものです。結婚していることを秘密にしていたり、悩みを持っているところを描いていただきました」
いつもの話に少し尾ひれがついた物語。側に置いてあった冊子を、月命はテキパキと配り始める。
「台本は人数分コピーしましたので、一部ずつ持っていってください」
パラパラとページをめくっていた焉貴が最後の部分を見て、疑問を口にした。
「何、これ。ロケ地が職場なんだけど」
「日常生活の中で、リレーをしてゆくというテーマで書いていただいたので、そうなっているんです~」
しばらく中身を読んでいた夫たちだったが、キスをする以上二人で組むのであって、その組み合わせに妙に納得した。
「このペアなんだ」
中身をきちんと知ってもらった上で、月命はみんなに同意を求めた。
「いかがですか? 記念に映像作品として残しませんか?」
「賛成」
誰も反対する人はおらず、夫たちで楽しげに進みそうだったが、妻も食卓にはついているわけで、台本が一人渡されないまま訪ねたみた。
「ちなみに私も出ますか?」
出るのならきっちりと演じてみたいのだ。
「それは台本を読んでからのお楽しみです~」
月命からピンクの表紙がついた台本を差し出され、妻は手に取ってページをめくった。
「どんな話……?」
こうして、二週間の予定で台本を読み、撮影へと入ったのである。
「パンパカパーン!」
薬玉を割ったようなことを言って、月命がみんなを注目させた。
「なんだ?」
カラになった皿からみんなに視線が一斉に上げられた。月命は薄い冊子を持ち出して説明する。
「先日、とある脚本家の方にシナリオを書いていただけるキャンペーンをやっていたのですが、見事当選しました」
「相変わらずくじ運がいい」
この夫は強運の持ち主であって、賭け事は彼の担当である。そんな月命だったが、こめかみに人差し指を突き立て困った表情をした。
「ただ、残念なことがあるんです~」
「何だ?」
「張飛と結婚する前の応募でしたので、今回君は入っていないんです」
「俺っちはいいっすよ」
新参者だ。そんなことは気にしない。それよりも、みんなの仲がいいことが何よりの幸せだ。
「そうですか~?」
月命は語尾をゆるゆると伸ばしながら、テーブルの上に束になった冊子を乗せた。それを見ながら、張飛は興味深げに身を乗り出した。
「ところで、どんな話を書いてもらったすか?」
「僕たち夫チームをモデルとしたキャラクターで、キスのリレーをしていくというものです。結婚していることを秘密にしていたり、悩みを持っているところを描いていただきました」
いつもの話に少し尾ひれがついた物語。側に置いてあった冊子を、月命はテキパキと配り始める。
「台本は人数分コピーしましたので、一部ずつ持っていってください」
パラパラとページをめくっていた焉貴が最後の部分を見て、疑問を口にした。
「何、これ。ロケ地が職場なんだけど」
「日常生活の中で、リレーをしてゆくというテーマで書いていただいたので、そうなっているんです~」
しばらく中身を読んでいた夫たちだったが、キスをする以上二人で組むのであって、その組み合わせに妙に納得した。
「このペアなんだ」
中身をきちんと知ってもらった上で、月命はみんなに同意を求めた。
「いかがですか? 記念に映像作品として残しませんか?」
「賛成」
誰も反対する人はおらず、夫たちで楽しげに進みそうだったが、妻も食卓にはついているわけで、台本が一人渡されないまま訪ねたみた。
「ちなみに私も出ますか?」
出るのならきっちりと演じてみたいのだ。
「それは台本を読んでからのお楽しみです~」
月命からピンクの表紙がついた台本を差し出され、妻は手に取ってページをめくった。
「どんな話……?」
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