45 / 967
大人の隠れんぼ=妻編=
妻の愛を勝ち取れ/21
しおりを挟む
マゼンダ色の長い髪と白いチャイナドレスのミニスカートを履いた、月命が颯茄と孔明との狭い隙間に、夫を真正面に、妻を背中にして割って入ってきた。
「彼女から手を引いてください~。僕の番です~」
聡明な瑠璃紺色の瞳には、あちこちから飛んでくる飛行機の線が、時計がわりで映り込む。
――十五時五十七分十七秒。あと十分四十三秒。一人、九分ずつ。だから、制限時刻の九十分前に、隠れんぼは始まった。
夫の目の前に無防備に横向きの線を作る、白のチャイナドレス。孔明の手はその裾を素早くつかんで、上に引っ張り上げた。
「えいっ!」
突如広がった衝撃的なシーン。少し遅れて妻の目が思わず見開かれた。
「えぇっ!?」
月命のミニスカートを、孔明がまくり上げたのだった。これぞまさしく、スカートめくり。妻が気になっているのだ。スーパーエロ二号も見たいのだ。
背後にいる妻からはまったく見えない。だが、瑠璃紺色の聡明な瞳には何の障害もなく見えた。それはあちこちに向けられ、陽だまりみたいな穏やかで間延びした感じで、衝撃発言をした。
「月~、パンツ履いてないんだぁ~」
「何っ!?」
見えなかったのではなく。元々そこになかったのか。確かにそうだ。あの腰上のスリットからも、下着の線はどこにもなかった。そうなると、ノーパンでずっと隠れんぼをしていたことになる。この小学校教諭は。妻としては子供の教育上、注意しなければいけない。
いや、ぜひとも見たい――
ここは自宅であって、子供は今はいないのであって、ただの男で夫だ。妻は全然オッケーである。いやむしろ歓迎だ。
妻はめくり上げられているスカートの前へ行こうと、屋根の上に両手をつき、のぞき込もうとした。
「気になる……」
あの女性的でありながら男性であるを持つ夫。それが普通の時はどんな形になっているのかと、単純に興味がそそられるのである。
スリットが開ききっている横を通り過ぎ、あと一歩でというところで、月命が孔明の手からスカートを引き抜いて、元へ戻した。
「うふふふっ。孔明も冗談が過ぎますね~」
「っ!」
颯茄はギクリと動きを止めた。
怒らせてしまった。この邪悪なヴァイオレットの瞳を持つ男を。血祭りに上げられる、帝国一の大先生も。だが、そんなことは計算のうち、孔明は春風みたいに微笑んで、悪戯坊主のように言う。
「ふふっ。なーんちゃって! ちゃんとパンツ履いてる」
スカートはめくられてもいいのだ、月命は。愛する夫なのだから。ドMとしては、ぜひめくられたいのだ。
問題はそこではなく、孔明が事実を歪めていることに、月命は怒っているのだ。
「ん?」
頭の回転が早すぎてついてゆけない颯茄は戸惑い顔をした。その前で、孔明の手が月命の曲線美を描くセクシーな足を伝って、スカートの中に入っていった。
「レースのパンツだぁ~」
「何っ!?」
レースのパンツ。妻もそんなものは履いていない。立っている夫、座っている妻。もう少し近づけば、スカートの中は見えるのである。
チラ見せ効果があるレースのパンツに包まれた、女性的な男性のモノ。両性具有満載だろう。ファンタジーが現実だろう。それはぜひとも、この機会に見せていただきたい、妻である。
夫がまくったのだ。妻だってまくっていいはずである。颯茄はそうっと、手を伸ばす。白いチャイナドレスのミニスカートへと。いざ、官能世界へと。
だが、結婚指輪と女物のブレスレットをした手でギュッとつかまれ、阻止された。
「おや~? おいたはいけませんよ~」
「っ!」
颯茄はこんな煩悩は今日限りで捨てようと、心に決めたのだった。妻の手は、女装夫に強く握られたまま、孔明が話してきた。
「ふふっ。玄関ロビーでいいの~?」
元の場所だから戻るのではなく、そこでないといけないのだ。頭のいい同士で、妻を置き去りにして、話が進んでゆく。
「孔明もさすがですね~」
「焉貴と光も、最初からわかってたんじゃないかなぁ~?」
「僕の想定内ですから、彼らはいいんです~」
月命が答えると、白と黒のモード系ファッションはすうっと屋根の上から消え去った。
策士二人に、わざと抜かされた言葉たち。妻に多大なる被害を生み出していた。
「玄関ロビー? ん? どこかに宿泊ですか?」
それには答えず、月命は疑問形を重ねる。
「それでは、僕と一緒に行きましょうか?」
鬼は隠れなくていいのである。一手間省けているという、月命の策だった。
「彼女から手を引いてください~。僕の番です~」
聡明な瑠璃紺色の瞳には、あちこちから飛んでくる飛行機の線が、時計がわりで映り込む。
――十五時五十七分十七秒。あと十分四十三秒。一人、九分ずつ。だから、制限時刻の九十分前に、隠れんぼは始まった。
夫の目の前に無防備に横向きの線を作る、白のチャイナドレス。孔明の手はその裾を素早くつかんで、上に引っ張り上げた。
「えいっ!」
突如広がった衝撃的なシーン。少し遅れて妻の目が思わず見開かれた。
「えぇっ!?」
月命のミニスカートを、孔明がまくり上げたのだった。これぞまさしく、スカートめくり。妻が気になっているのだ。スーパーエロ二号も見たいのだ。
背後にいる妻からはまったく見えない。だが、瑠璃紺色の聡明な瞳には何の障害もなく見えた。それはあちこちに向けられ、陽だまりみたいな穏やかで間延びした感じで、衝撃発言をした。
「月~、パンツ履いてないんだぁ~」
「何っ!?」
見えなかったのではなく。元々そこになかったのか。確かにそうだ。あの腰上のスリットからも、下着の線はどこにもなかった。そうなると、ノーパンでずっと隠れんぼをしていたことになる。この小学校教諭は。妻としては子供の教育上、注意しなければいけない。
いや、ぜひとも見たい――
ここは自宅であって、子供は今はいないのであって、ただの男で夫だ。妻は全然オッケーである。いやむしろ歓迎だ。
妻はめくり上げられているスカートの前へ行こうと、屋根の上に両手をつき、のぞき込もうとした。
「気になる……」
あの女性的でありながら男性であるを持つ夫。それが普通の時はどんな形になっているのかと、単純に興味がそそられるのである。
スリットが開ききっている横を通り過ぎ、あと一歩でというところで、月命が孔明の手からスカートを引き抜いて、元へ戻した。
「うふふふっ。孔明も冗談が過ぎますね~」
「っ!」
颯茄はギクリと動きを止めた。
怒らせてしまった。この邪悪なヴァイオレットの瞳を持つ男を。血祭りに上げられる、帝国一の大先生も。だが、そんなことは計算のうち、孔明は春風みたいに微笑んで、悪戯坊主のように言う。
「ふふっ。なーんちゃって! ちゃんとパンツ履いてる」
スカートはめくられてもいいのだ、月命は。愛する夫なのだから。ドMとしては、ぜひめくられたいのだ。
問題はそこではなく、孔明が事実を歪めていることに、月命は怒っているのだ。
「ん?」
頭の回転が早すぎてついてゆけない颯茄は戸惑い顔をした。その前で、孔明の手が月命の曲線美を描くセクシーな足を伝って、スカートの中に入っていった。
「レースのパンツだぁ~」
「何っ!?」
レースのパンツ。妻もそんなものは履いていない。立っている夫、座っている妻。もう少し近づけば、スカートの中は見えるのである。
チラ見せ効果があるレースのパンツに包まれた、女性的な男性のモノ。両性具有満載だろう。ファンタジーが現実だろう。それはぜひとも、この機会に見せていただきたい、妻である。
夫がまくったのだ。妻だってまくっていいはずである。颯茄はそうっと、手を伸ばす。白いチャイナドレスのミニスカートへと。いざ、官能世界へと。
だが、結婚指輪と女物のブレスレットをした手でギュッとつかまれ、阻止された。
「おや~? おいたはいけませんよ~」
「っ!」
颯茄はこんな煩悩は今日限りで捨てようと、心に決めたのだった。妻の手は、女装夫に強く握られたまま、孔明が話してきた。
「ふふっ。玄関ロビーでいいの~?」
元の場所だから戻るのではなく、そこでないといけないのだ。頭のいい同士で、妻を置き去りにして、話が進んでゆく。
「孔明もさすがですね~」
「焉貴と光も、最初からわかってたんじゃないかなぁ~?」
「僕の想定内ですから、彼らはいいんです~」
月命が答えると、白と黒のモード系ファッションはすうっと屋根の上から消え去った。
策士二人に、わざと抜かされた言葉たち。妻に多大なる被害を生み出していた。
「玄関ロビー? ん? どこかに宿泊ですか?」
それには答えず、月命は疑問形を重ねる。
「それでは、僕と一緒に行きましょうか?」
鬼は隠れなくていいのである。一手間省けているという、月命の策だった。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R18】鬼上司は今日も私に甘くない
白波瀬 綾音
恋愛
見た目も中身も怖くて、仕事にストイックなハイスペ上司、高濱暁人(35)の右腕として働く私、鈴木梨沙(28)。接待で終電を逃した日から秘密の関係が始まる───。
逆ハーレムのチームで刺激的な日々を過ごすオフィスラブストーリー
法人営業部メンバー
鈴木梨沙:28歳
高濱暁人:35歳、法人営業部部長
相良くん:25歳、唯一の年下くん
久野さん:29歳、一個上の優しい先輩
藍沢さん:31歳、チーフ
武田さん:36歳、課長
加藤さん:30歳、法人営業部事務
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる