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気づいた時にはそばにいた/5
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コウの話はさらに、物質界から神世へと引き上げられる。
「五歳になったその日から、小学校に入学だ。年度なんてものは存在しない」
「じゃあ、毎日が入学式で、新しいお友達が入ってくるってことだね?」
五歳で年が止まるのなら、そこからそれぞれスタートで、神さまの世界は対応できるだけの人材と教師の数が揃っていた。
「そうだ」と、コウはうなずいて、「クラス分けは、その子供が他の生徒の中に入って、全員が成長すると先生が判断したクラスへ入ることになる」
「このクラスが人数が少ないからここに、じゃないんだね?」
「そうだ。だから、兄弟同士や甥と叔父で一緒っていうのもよくある」
親はいつまでも若さいっぱい。とにかく子供が生まれれば、十ヶ月で五歳児になる。血や遺伝子のつながりというものはない。しかし、心のつながりというものが重要視され、それが一番大切なことなのだ。
神さまはさすがによくそこを心得ていた。澄藍は上半身を左右にねじりながら、自然と笑みをこぼす。
「個性がよく考慮された、素晴らしい学校制度だね」
入学が一人一人違うのだから、卒業も一人一人違うということで、澄藍は話を続ける。
「それで、十七歳になったら大人ってこと?」
「そうだ。十七歳でちょうど高校卒業になる」
高校では卒業式が毎日あることになる。しかし、小学生のように人数がいない。邪神界の影響で子供が産まれなかったため、高校生は今のところ数百人しかいないのだった。
「大学とかはないの?」
「あるが、行っても行かなくても関係ない。勉強したいやつが行けばいいし、仕事をしながら学びたいやつは職場で学べばいい。地上みたいに、キャリアなんてものはない。似合った努力したやつが人々に評価されるのが当たり前だろう? 学歴だけでどうこうなるほど、神さまの世界は甘くないぞ」
人間界のように好きな仕事につけないとか、やりたりことが見つからない。なんてことは起きないのだと、澄藍は以前から聞き及んでいた。
「十七歳になったら結婚できる?」
「そうだ」
「十七歳になったらお酒が飲める?」
話の流れで当然のことのように聞いたが、コウは彼女の頭をぽかんと殴った。
「お前バカだな。人間がお酒を飲めない理由は、肉体の成長に影響が出るからだろう? 神さまは肉体を持っていないんだから、お酒に関しては特別に規制がない」
「なるほど……」
こんなに神さまの話を聞いていても、まだまだ違いがあるのだと、澄藍は納得しながら、手のひらをゆらゆらと揺らし出した。
「それでも子供は飲まないけどな。おいしく感じないらしい」
「恋って小さい時からするもの?」
大人の神さまでさえ、すぐに運命の人が見つかるような世界だ。恋に年齢は関係ない。
「そうだ。禄がいただろう? 守護が解散したあと、すぐに運命の出会いをしたぞ」
「そうか。じゃあ、十七歳になったら結婚するってことかな?」
「おそらくそうだ」
「ラブラブだね~」
永遠の別れがこないというのは、子供の頃に出会おうがいつかは、魂を交換して結婚の儀式をする。そして、永遠の時を二人で助け合いながら生きてゆくのだ。
板床で体が痛くならないように敷いていたブランケットを、澄藍は慣れた手つきで畳み、柔軟体操は終了した。
「それからな、以前に生まれた神さまでも子供の頃の体験がなくて、不具合が出ていた神がいたからな、記憶を親が預かって、五歳からやり直すようになったやつもいる」
「その神さまにはそのやり方が一番だったってことだね?」
「そうだ。だから、光命に姉がいただろう?」
「あぁ、いたね」
澄藍はデジタルに切り捨てる、自分の感情を。心の声が聞こえる存在がそばにいるのだから、なおさらだ。
「妹になった」
神さまも神さまでやはり大変なのだと、未来の見えない世界で生きている女は思った。
「……人間だったらついていけないね、ちょっと。でもまあ、みんなが幸せになれると判断して、そういう決まりになったんだから、受け入れるしかないのか。どういう心境になるんだろう? お姉さんが妹になるなんて……。何かの映画みたいだ」
小さくなっただけでなく、記憶をなくしている。そうなると、話す内容にも気をつけないといけないということだ。やはり神さまのレベルでないとできない出来事なのだと、澄藍は思いながら部屋をあとにした。
「五歳になったその日から、小学校に入学だ。年度なんてものは存在しない」
「じゃあ、毎日が入学式で、新しいお友達が入ってくるってことだね?」
五歳で年が止まるのなら、そこからそれぞれスタートで、神さまの世界は対応できるだけの人材と教師の数が揃っていた。
「そうだ」と、コウはうなずいて、「クラス分けは、その子供が他の生徒の中に入って、全員が成長すると先生が判断したクラスへ入ることになる」
「このクラスが人数が少ないからここに、じゃないんだね?」
「そうだ。だから、兄弟同士や甥と叔父で一緒っていうのもよくある」
親はいつまでも若さいっぱい。とにかく子供が生まれれば、十ヶ月で五歳児になる。血や遺伝子のつながりというものはない。しかし、心のつながりというものが重要視され、それが一番大切なことなのだ。
神さまはさすがによくそこを心得ていた。澄藍は上半身を左右にねじりながら、自然と笑みをこぼす。
「個性がよく考慮された、素晴らしい学校制度だね」
入学が一人一人違うのだから、卒業も一人一人違うということで、澄藍は話を続ける。
「それで、十七歳になったら大人ってこと?」
「そうだ。十七歳でちょうど高校卒業になる」
高校では卒業式が毎日あることになる。しかし、小学生のように人数がいない。邪神界の影響で子供が産まれなかったため、高校生は今のところ数百人しかいないのだった。
「大学とかはないの?」
「あるが、行っても行かなくても関係ない。勉強したいやつが行けばいいし、仕事をしながら学びたいやつは職場で学べばいい。地上みたいに、キャリアなんてものはない。似合った努力したやつが人々に評価されるのが当たり前だろう? 学歴だけでどうこうなるほど、神さまの世界は甘くないぞ」
人間界のように好きな仕事につけないとか、やりたりことが見つからない。なんてことは起きないのだと、澄藍は以前から聞き及んでいた。
「十七歳になったら結婚できる?」
「そうだ」
「十七歳になったらお酒が飲める?」
話の流れで当然のことのように聞いたが、コウは彼女の頭をぽかんと殴った。
「お前バカだな。人間がお酒を飲めない理由は、肉体の成長に影響が出るからだろう? 神さまは肉体を持っていないんだから、お酒に関しては特別に規制がない」
「なるほど……」
こんなに神さまの話を聞いていても、まだまだ違いがあるのだと、澄藍は納得しながら、手のひらをゆらゆらと揺らし出した。
「それでも子供は飲まないけどな。おいしく感じないらしい」
「恋って小さい時からするもの?」
大人の神さまでさえ、すぐに運命の人が見つかるような世界だ。恋に年齢は関係ない。
「そうだ。禄がいただろう? 守護が解散したあと、すぐに運命の出会いをしたぞ」
「そうか。じゃあ、十七歳になったら結婚するってことかな?」
「おそらくそうだ」
「ラブラブだね~」
永遠の別れがこないというのは、子供の頃に出会おうがいつかは、魂を交換して結婚の儀式をする。そして、永遠の時を二人で助け合いながら生きてゆくのだ。
板床で体が痛くならないように敷いていたブランケットを、澄藍は慣れた手つきで畳み、柔軟体操は終了した。
「それからな、以前に生まれた神さまでも子供の頃の体験がなくて、不具合が出ていた神がいたからな、記憶を親が預かって、五歳からやり直すようになったやつもいる」
「その神さまにはそのやり方が一番だったってことだね?」
「そうだ。だから、光命に姉がいただろう?」
「あぁ、いたね」
澄藍はデジタルに切り捨てる、自分の感情を。心の声が聞こえる存在がそばにいるのだから、なおさらだ。
「妹になった」
神さまも神さまでやはり大変なのだと、未来の見えない世界で生きている女は思った。
「……人間だったらついていけないね、ちょっと。でもまあ、みんなが幸せになれると判断して、そういう決まりになったんだから、受け入れるしかないのか。どういう心境になるんだろう? お姉さんが妹になるなんて……。何かの映画みたいだ」
小さくなっただけでなく、記憶をなくしている。そうなると、話す内容にも気をつけないといけないということだ。やはり神さまのレベルでないとできない出来事なのだと、澄藍は思いながら部屋をあとにした。
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