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緑飴
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あー、今日も憂鬱な一日が始まる。
道路工事の黄色いヘルメットを被ると長い息が漏れた。定年を過ぎ七十歳間近にもなると体力が衰える。赤棒を振ってるだけだが、六時間も立ちっぱなしは辛い重労働。
ここは交差点に近い場所の工事で片側通行。わたしは無線で向こう側から指示を受けると渋滞してる車を流した。
二時間もすると、やっと交通量が少なくなり交代の同僚から声がかかる。やっと休憩時間。時刻は13時で少し遅い昼食をとった。コンビニのおにぎりを2個食べ終え、路肩に座りボ~っとしていると、どこからか幼い女の子がわたしに寄ってきた。黒髪を横に縛った可愛い娘だ。
「おじちゃん、なにしてるの?」
「ん?工事だよ」
「おじちゃん、疲れてる?」
「んー、まあ、ハハ」
すると幼女はわたしに飴玉を差し出した。
「飴、あげる」
少女のあどけない笑顔が眩しい。わたしは笑みを返してから下を向いた。
「ごめんね、おじさん、飴嫌いなんだ。だから受け取れない」
瞬間、少女の表情お天気は晴れから曇りになる。背中を向けてトボトボと去っていく少女を眺めながら、わたしは、作業ズボンのポケットから一枚の写真を取り出した。
写真に映っているのは、さっきの少女と同じぐらいの孫。妻を病気で亡くしてからわたしの性格は酷く捻じ曲がったらしい。一緒に暮らしていた一人息子の妻の料理にケチをつけてしまった。
『マズい。母さんの味噌汁の方が何倍も美味かった』
この言葉がキッカケとなり喧嘩が勃発し同居は解消。息子夫婦は孫を連れて出て行った。
次の日、また少女は同じ時間に現れた。
「飴、あげる」
「いらない」
受け取らなかったら明日もくるだろうか?最初のいらないとは違う淡い期待の『いらない』だ。
期待は確信へと変わる。次の日も、また翌日も少女はわたしに飴を差し出す。
「お嬢ちゃん、名前は?」
「アヤ」
アヤ、可愛い名前だ。アヤは工事期間中、毎日のように現れた。今日で工事は終了。わたしは寂しさを胸に秘めアヤがくるのを待った。
今日、アヤは女性の後方を歩いている。きっと母親だ。アヤはわたしを見つけると駆け寄ってきた。
「おじちゃん、飴、あげる」
わたしは交差点の電信柱に花束を添えている女性を見てから手を差し出した。アヤは嬉しそうに飴を手の平に置くが、すり抜けて落下してしまう。緑色の飴は路上に落ちる前に消えた。
「あっ!」
アヤは驚いた顔をしている。そんなアヤにわたしは、なるべく優しく語りかけた。
「アヤちゃん、お空にあがってからママのお腹に戻っおいで」
理解したアヤは、泣きじゃくる母親に顔を向けた後、柔らかい光に包まれ天へと上がってゆく。
その姿を眺めながらわたしは思った。嫁の味噌汁は妻とは違うが美味しかった。
「息子夫婦に謝ろう」
ポケットの写真を触りながら見上げた涙空には一番星が光っていた。
道路工事の黄色いヘルメットを被ると長い息が漏れた。定年を過ぎ七十歳間近にもなると体力が衰える。赤棒を振ってるだけだが、六時間も立ちっぱなしは辛い重労働。
ここは交差点に近い場所の工事で片側通行。わたしは無線で向こう側から指示を受けると渋滞してる車を流した。
二時間もすると、やっと交通量が少なくなり交代の同僚から声がかかる。やっと休憩時間。時刻は13時で少し遅い昼食をとった。コンビニのおにぎりを2個食べ終え、路肩に座りボ~っとしていると、どこからか幼い女の子がわたしに寄ってきた。黒髪を横に縛った可愛い娘だ。
「おじちゃん、なにしてるの?」
「ん?工事だよ」
「おじちゃん、疲れてる?」
「んー、まあ、ハハ」
すると幼女はわたしに飴玉を差し出した。
「飴、あげる」
少女のあどけない笑顔が眩しい。わたしは笑みを返してから下を向いた。
「ごめんね、おじさん、飴嫌いなんだ。だから受け取れない」
瞬間、少女の表情お天気は晴れから曇りになる。背中を向けてトボトボと去っていく少女を眺めながら、わたしは、作業ズボンのポケットから一枚の写真を取り出した。
写真に映っているのは、さっきの少女と同じぐらいの孫。妻を病気で亡くしてからわたしの性格は酷く捻じ曲がったらしい。一緒に暮らしていた一人息子の妻の料理にケチをつけてしまった。
『マズい。母さんの味噌汁の方が何倍も美味かった』
この言葉がキッカケとなり喧嘩が勃発し同居は解消。息子夫婦は孫を連れて出て行った。
次の日、また少女は同じ時間に現れた。
「飴、あげる」
「いらない」
受け取らなかったら明日もくるだろうか?最初のいらないとは違う淡い期待の『いらない』だ。
期待は確信へと変わる。次の日も、また翌日も少女はわたしに飴を差し出す。
「お嬢ちゃん、名前は?」
「アヤ」
アヤ、可愛い名前だ。アヤは工事期間中、毎日のように現れた。今日で工事は終了。わたしは寂しさを胸に秘めアヤがくるのを待った。
今日、アヤは女性の後方を歩いている。きっと母親だ。アヤはわたしを見つけると駆け寄ってきた。
「おじちゃん、飴、あげる」
わたしは交差点の電信柱に花束を添えている女性を見てから手を差し出した。アヤは嬉しそうに飴を手の平に置くが、すり抜けて落下してしまう。緑色の飴は路上に落ちる前に消えた。
「あっ!」
アヤは驚いた顔をしている。そんなアヤにわたしは、なるべく優しく語りかけた。
「アヤちゃん、お空にあがってからママのお腹に戻っおいで」
理解したアヤは、泣きじゃくる母親に顔を向けた後、柔らかい光に包まれ天へと上がってゆく。
その姿を眺めながらわたしは思った。嫁の味噌汁は妻とは違うが美味しかった。
「息子夫婦に謝ろう」
ポケットの写真を触りながら見上げた涙空には一番星が光っていた。
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