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【R18】遺伝子レベルで愛してる

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仕事が珍しく定時で終わり浮き立って帰宅してみれば、幼馴染が我が物顔でベッドを占領していた。

「なんでいるの」
「いちゃ悪いのかよ」

家主が帰ってきたというのに起き上がりもせず、ヒトの枕に片肘ついて憎たらしい笑みを浮かべている。

「悪いに決まってるでしょ? いくら私の親が何かあった時用に合鍵を渡してるっていっても、一人暮らしの女性の家に勝手に上がるっていうのはどうなの?」
「いやいや、一応連絡はいれたぞ」
「は? 嘘…」

慌てて肩にかけていたバッグを漁る。中からスマホを取り出してチェックした。

「着信無いけど? 誰かに間違って連絡したんじゃない?」
「いやー? ちゃんと連絡して、許可ももらったから」
「は? まさか…」
「そ、おまえの母さんに」

呆れてガックリと肩を落とした。何故、私じゃなく母に許可を取るのか。母も母だ。いくら幼い頃から家族ぐるみで仲が良いとはいえ、そう簡単に許可しないでほしい。

「そんだけ心配されてるってことだよ」 

起き上がってベッドに座り直したようは枕を抱えて苦笑している。あー……コレは多分私の母電話をかけたんだな、と直感した。

「聞いたんだ」
「んー?」
「聞いたんでしょ。彼氏と別れたこと」

女子高育ちで社会人になってようやく出来た彼氏。付き合いたての頃、初めて出来た彼氏に浮かれて母にちょくちょく電話をかけては自慢していた。まさかそんなに早く別れることになるとは思ってなかったし。詳細が言いづらくてメールで一言『別れた』とだけ告げた。

「あー……せめて、私からフッたっていうのは言っとくべきだったか」
「え? おまえがフッたの? フラれたんじゃなくって?」

陽が目をパチパチさせて首を傾げている。
こういうあざとい仕草が様になるところが……憎たらしい。
カバンをラックに仕舞うと、冷蔵庫に行き緑茶を取り出した。
ワンルームだから動線が短くて良い。

「そう、なんだよね」

クピッと軽く一口飲む。できれば避けたい話題なのだが……ソレに気づいてくれるような男ではない。案の定、陽が聞いてきた。

「確か相手は三つ上で、仕事出来るイケメンだったよな? ……もしかして、浮気でもされた?」

陽の声のトーンが下がり、険しい顔になっている。慌てて首を横に振った。

「違う違う! むしろ、すごく優しくていい人だったよ」
「じゃあ……なんで?」
「……」
「言いづらい?」

急に優しい声色で聞いてくる。迷ったものの、話すことにした。
ベッド下にクッションを持っていき、ベッドを背もたれにして座る。陽には背中を向けている形だ。何となく体育座りになった。
距離が近いから聞こえるだろうと、小さな声で話し始める。

「キスがね……ダメだった」
「……キス? ……最初からディープだったとか?」
「ううん。ディープが原因ではあるんだけど……順番?は守ってくれてたよ。…なんていうか、その…匂い? 味? がダメだったんだよね」
「ん?」
「なんかね……何回してもその……ディープしてる時の香り?がダメで、息しなかったら平気だったんだけど……正直、それで気持ちも萎えちゃって……。すごくいい人で、私にはもったいないくらいの人なんだけど……それから体臭とかも何か嫌になって。結局、別れちゃった」

一気に喋って、恐る恐る斜め上を見る。陽は笑うでも呆れるでもなく、真剣な表情で考え込んでいた。思っていたのと違う反応に驚いていると、陽がこちらを見た。何を言われるのか……と緊張する。
自分が失礼なことをした自覚はある。怒られても呆れられても仕方がない。たが、陽は予想だにしない言葉を言った。

「別れて正解だったんじゃね?」
「へ?」
「匂いが無理ってことは遺伝子レベルで相性が合わないってことなんだろ。無理して付き合いを続けたところで続くとは思えない」
「相性……」
「何かのテレビで前やってたのを見たことある。いい匂いだと感じる相手は遺伝子レベルで相性がいいって。ソレがあるなら、逆もあるんじゃね? ……知らんけど」
「ふっ、何それ」

知ったかぶって話す陽が面白くて思わず笑った。陽もホッとしたような表情を一瞬浮かべ、笑った。
ひとしきり笑い終わると陽が何かを閃いた表情で距離を縮めてきた。

「なぁ、俺のも嗅いでみてくんない?」
「はぁ?」
「いや……気になるじゃん!もしかしたら、花菜かなの鼻がよすぎるだけなのかもだし」

ほれ!と首元を近づけてくる陽に顔を顰めながらも、渋々鼻を寄せた。くんっと軽く鼻で吸い込む。若干の汗が混じった男の人の匂い。でも、不快ではない。むしろ……

「わりと好きな匂いかも」

無意識に発した言葉に、息を呑む音が耳に入った。顔を上げる。
陽と視線が合い、何故か逸らせなくなった。

陽の顔が近づいてきて、自然と目を閉じた。
唇が重なる。最初は軽く触れるだけ。何度も触れ合い、一度離れた。
ゆっくりと目を開くと至近距離で陽と目が合った。初めて見る男の顔にキュンと子宮が疼いた。
もう一度顔が近づいてきて、また目を閉じた。

下唇を吸いつかれ、ペロリと舐められる。自然とその先を求めるように口を開けていた。
最初は軽く、段々濃厚に、飲み込みきれなかった唾液が溢れ垂れていく。どれくらいそうしていたのだろう。ようやく唇が離れた時にはもうまともに思考回路は働いていなかった。

「ん……はぁ……」
「エッロ」
「なっ……誰のせいだと思って!」
「俺のせい?」

不本意ながらもそうだと頷き返す。陽は複雑そうに笑った。

「陽?」
「ん?」
「えっ……と」

名前を呼んだものの何を話していいかもわからない。これから自分達はどうなるのか。ただ、陽とは気まずい関係にはなりたくないのは確かだった。話す言葉が見つからず悩んでいると陽が言った。

「花菜……俺達付き合おっか」
「へ?」
「俺じゃ……ダメ?」

懇願するように上目遣いをする陽。またコイツはあざといことを……と思ったら不意に震えている拳が目に入った。
緊張してるんだ……私相手に……そう思ったら、目の前の陽がすごく愛しく思えた。

「いいよ。……そのかわり、絶対他の女にそういうのしないでよ!」
「え?! マジで! ヨッシャァ! てか、そういうのってどれ?」

首を傾げる陽に「だからそういうのだって!」と返した。

まさか、幼馴染とこういうことになるとは思っていなかったけれど……不思議とすごくしっくりくる。




「あの……それで、この続きはしても良いのでしょうか?」

陽がベッドの上で正座をして緊張した面持ちで花菜に尋ねた。

「つづき?」

なんの?と口に出す前に気づいて顔に一気に熱が集まった。
ベッドでいちゃつく年頃の男女カップル。二人ともいい歳だし、付き合ったばかりとはいえ、知り合ってもう二十年以上経っている。
それに、自惚れでなければ陽はだいぶ前から私のことを好きだったのではないだろうか。
今になって気づくあれやこれや。経験も知識も全く無かったとはいえ随分酷いことをしてきた気がする。
そろそろ、彼の気持ちが報われてもよいのではないだろうか。うん。
なんて、色々言い訳をつけたが結局のところ私も陽とのだ。
その証拠にもう身体は熱くなっている。

覚悟を決めると花菜はベッドの上、陽に向き合うように座った。

「返品不可ですが、それでもよければ、もらってください」

冗談めかして頭を下げるとガバッと勢いよく抱きしめられた。

「めっっっちゃうれしいぃ。好き……愛してる花菜」

耳元で感極まって今にも泣きそうな声で囁かれる。花菜はその背中をポンポンと叩いて「私も……好き、みたい」と返した。

「みたいはいらねぇし」
「ふっ、泣きながら言われても」
「泣いてねぇし」
「ごめんね……気づくの遅くなって」
「……ほんとおせぇ。待たせすぎだし」
「ごめんて」
「……これからずっと俺のものになる?」
「なるなる」
「なら……許す」

陽が可愛すぎて思わず吹き出した。腕を放して離れると陽のムッとした顔が見えてさらに笑えた。

「うるさい」

照れ隠しなのか、強引に唇を奪われた。陽の首に手を回して、応える。

口付けを交わしながらゆっくりと押し倒された。
微かに震えている手がそっと胸の上に置かれた。
たどたどしく胸を揉まれる。心臓が破裂しそうに鳴っている。
固くなった先を指先が掠め、身体がビクリと反応した。
陽も気づいたのか、ソコをわざと何度も掠めていく。
服の裾から直接手が入ってきて思わず声が漏れそうになる。

素肌が空気に晒されたが身体は熱くて寒さも気にならない。
それよりも、陽の目にどう映っているのかが気になって仕方がない。

「隠すなって」
「やっ……ちょ、恥ずかし……、陽も脱いでよ」

腕を掴んでいた陽が「ああ」と言い抵抗なくポイポイと服を脱いでしまった。こちらが直視出来なくなって顔を両手で覆う。

「花菜が見たいって言ったくせに」
「見たいとは言ってないぃ~」
「ふ、じゃあ触って」
「え? ちょ」
「俺も触るから」

陽が花菜の手を自分の肌に触れさせると、自分も遠慮なく触り始めた。
手で、舌で花菜を翻弄する。至る所に赤い痕を残していく。花菜はそのことを気にする余裕もない。
とうとう花菜のまだ誰も触れたことの無い場所へ陽が触れた。

「濡れてる」
「ばっ、そういう事、一々言わないでっ」
「わりぃ。でも、嬉しくてつい……もっと気持ちよくしてやるから」
「え? あ!」

陽が花菜の足を開かせるとそこに顔を埋めた。大きく広げられた舌が秘部全体を刺激する。花菜は耐えれず喘ぎ続けている。
その声を聞きながら陽はそろそろか、と指を中にゆっくりと沈めていった。

「っ! そこダメッえぇ」

陽の丁寧な愛撫を受けて達した花菜はぐったりして荒い息を繰り返していた。花菜が休憩している間に、陽がズボンの財布からコンドームを取り出す。
なんとかつけ終わると再び花菜の足を開き、己のモノを入口にあてがった。

「いい?」

花菜はうん、と頷きながら両手を伸ばした。その手に引き寄せられ陽が顔を寄せると、花菜から口付けされた。口付けを交わしながらもゆっくりと花菜の中に挿れていく。途中引っかかったところもあったが何とか奥まで辿り着いた。
陽はそのまま身体を密着させ、己を落ち着かせるよう息を吐いた。気を抜いたらもう出てしまいそうだ。

「陽? 動かないの?」
「ん……もうちょっとこのままでいたい」

陽の言葉を聞いた花菜はそっか……と陽の背中に手を回した。首元に擦りつかれ、柔らかい髪の毛があたる。ふわりと陽の香りがした。

「この匂いやっぱ好き……落ち着く」

ほぼ独り言のつもりで言った言葉はばっちり陽の耳にも入っていて、グンッと陽のモノが大きくなった。驚いて陽を見ると、恥ずかしそうに笑って言った。

「動くよ」
「うん」

陽は花菜に一度口付けを落とすと、動き始めた。最初は優しくゆるゆるとした動きだったが、途中から理性が消えたのか激しくなっていた。それでも、花菜は必死に陽にしがみついていた。
痛みと快感でごちゃ混ぜになりながら。

「うっ!」
「ぁっ!」

二人がほぼ同時に達し、ある程度落ち着いた頃、陽は己を抜いた。
初めての経験にぐったりしている花菜をよそに陽は手際良く後処理をしていく。その様子を横になったまま見ていた花菜は……少し、いや、かなり、ムッとした。
何故か機嫌が悪くなっていることに気づいた陽が首を傾げている。
花菜が手招きをする。
とことこ、とやってきた陽。花菜は上半身だけ何とか起こすと、陽の首元に噛み付いた。

「?!?!?!な、なんで?!」
「マーキング」

花菜がふんっと鼻で笑うと、陽は仕方がねぇなって言いながら嬉しそうに笑った。

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