2 / 10
第二話
しおりを挟む
PM11:00
叶はすでに寝室のベッドで横になっていた。
今日は飲みの付き合いがあるから遅くなる、と優から数時間前に連絡がきていた。
故に、一切の警戒もしなくていい日だとそう認識していたのだ。
PM11:30
静かにドアが開けられた。
そっと優が叶の枕元に立つ。無防備な寝顔を眺めた。
……ムラムラしてきた。
一瞬どうするか迷ったが、あることを思い出して決断する。
布団をめくり、己の身体を滑り込ませた。
柔らかな胸元に耳を当て心音を楽しむ。ドクンドクンという音さえ叶が奏でていると思うと愛しい。
だいぶ温まってきた手をパジャマの隙間から滑り込ませた。
手のひらにちょうど収まるサイズ。揉むたびにふにゃりふにゃりと形を変える。
「ん、んん」
叶はまだはっきりと目が覚めてはいないようで、唸りながら手で払い除けようとする。優は気にせず服を捲り上げると現れた乳房の先、軽く固くなった場所をパクリと口に含んだ。
舌の中でコロコロと転がし、たまに軽く歯を立て、吸い上げる。その度に、未だ目を閉じたままの叶の身体がビクンビクンと反応する。
寝てても敏感とかエロ可愛い。
我慢できなくなってズボンと下着を一気に脱がせた。
興奮したせいでさっきまでよりお酒が回ってる気がする。理性がいつも以上に働かない。
全然慣らしてないけど、もう挿れたくて堪らない。
起こしてしまうかも……いや、それでいい。
優は叶の腰を持ち少し浮かせると、少しずつ己のモノを挿れていった。
「ん、んん……? ま、さる?」
「ん……ただいま叶」
お帰りのチュウをしようと顔を近づけたが、フイッと横を向かれてしまった。頬の上でリップ音が鳴る。
「酒くさっ……も、抜いて、お願いだから、今日は無理っ」
寝起き早々抵抗し始める叶に、優は少々ムッとして激しく出し入れを始めた。
「決めた。朝まで抱き潰す」
「はっあ? ダメって……午前ちゅ……面接が、あ!」
「だから、だよっ!」
優は叶の両足を肩に担ぐと上から叩きつけるように突いた。快楽に慣らされている身体は素直で、数回抜き刺しするとすぐに大量の愛液を分泌し始める。おかげで痛みを感じることは無いが、正直寝起きには辛い。
有言実行の男、優は宣言通り朝まで叶を抱き潰した。
――――――――――
AM11:00
叶はようやく意識を取り戻した。スマホを手にして愕然とする。
「またヤラレタ……最悪」
一晩中喘がされたおかげで声が掠れている。
何より、午前中なら……とようやく漕ぎ着けた面接の時間をとっくに過ぎてしまっている。
発信履歴を見るとかけた覚えがない通話履歴が残っていた。おそらくヤツが勝手に断ったのだろう。
いつもそうだ。叶としては脱バイトをして正職につきたいのに、ことごとく優に邪魔をされる。
優としては、バイトも本当は許可したくないらしい。
だが、叶ももう二十二だ。いつまでも優の収入に頼ってないでいい加減ちゃんと就職したい。それなのに、させてもらえない。
とりあえず、今日の面接はもう諦めるほかない。
「バイト……行ってみるかな」
人手不足気味な店だ。運が良ければシフト日以外でもいれてもらえるかもしれない。……自分の物くらいは自分で稼いだ金で買いたいし。少しでも稼がないと。
叶は軋む身体をなんとか動かしてシャワーを浴びると、ダボッとしたメンズ服に身を包み外に出た。
太陽の光が眩しい。胸元にかけてあったサングラスをつける。少しはマシになった。
マンションのエントランスを出て数メートル歩いたところで後ろから声をかけられた。
「あの!」
「……」
一瞬足を止めそうになったが、名前を呼ばれたわけでもないしな……とそのまま歩く。すると、グイッと後ろから腕を引かれた。
「なに?」
迷惑そうな声を隠そうともせず、三人組の女の子達に問い掛ける。
真ん中のリーダーぽい女の子が代表で叶に聞いた。
「も、もしかして……優と同居してるっていう幼馴染さんですよね?!」
もしかして、と言いつつ断定した言い方だ。
「……いや、違うけど」
「いやいや……優さんの幼馴染さんのことは、古参ファンの間では有名ですから!」
リーダーぽい女の子が興奮したように言うと、もう一人の女の子も同調するように頷いている。
「実の弟のように可愛がってるって、よくラジオとかテレビ番組でも話してるんですよ!」
確かに優は私を"男"というオブラートに包んで紹介することで堂々と色んなところで私について語っているらしい。
そして、こうやってプライベートまで探りを入れてくる追っかけに叶も目をつけられることはしばしばある。
ただ、"男"なのとそこそこな見た目をしているので嫌がらせを受けたことは無い。たまに、腐女子からは応援される。
とにかく、彼女達のようなのは初めてでもなく特段反応する内容でもなかった。
「そう」
叶の返しが予想とは違ったのだろう。途端に勢いが落ちる女の子達。叶はどうやってこの場を切り抜けようかと考えていた。
すると、一番後ろにいた女の子が二人に話しかけた。
他二人とは毛色が違うように見える。髪も染めていないし、ピアスもしていない、少々野暮ったさはあるが磨けば光るタイプの子だ。
「ねぇ、もう帰ろうよ。ここにいても時間の無駄だって。むしろ、こんなの優に迷惑かけるじゃん」
至極真っ当なことを言う女の子を叶は凝視した。まだ話し足りない様子の女友達を無理矢理押している。
女友達二人はブツブツいいながらもは先に歩き始めた。
「せっかく、ここまできて噂の幼馴染くんに会えたのにさー」
「ねー、もっと聞きたいことあるんだけど……あの噂とかー」
「あーね! 優本人にはさすがに聞けないし。でも、幼馴染くんの顔見れたのはほんと嬉しいー! 創作捗るわー! 優が今日仕事だったのは残念だったけどー」
「あ、やっぱ仕事入ってたの?」
「急に入った仕事っぽい、ほらSNSで……」
いつの間にか互いの会話に集中して、だいぶ離れたところまで行ってしまった。
「離して貰えますか? ……あの二人のことは謝りますから」
叶は無意識に女の子の腕を掴んでいた。言われて気づき、慌てて手を離して謝った。
「悪い……ちょっと聞きたいことがあって」
「なんですか? 答えるかどうかは話の内容にもよりますけど」
多少の警戒を滲ませた返答に叶はかえって好印象を抱いた。
彼女なら、そう思わせてくれた。
「あのさ……君、優が好き?」
「え?」
「憧れとか……そういうんじゃなくて、本気で……付き合いたいとか思うくらい好き?」
「……バカにしてるんですか」
剣呑な視線に叶は慌てて首を横に振る。
「そうじゃなくて、もし、そうなら……アイツに会わせてもいいかなって……。もちろん、今すぐにとかは無理だけど」
「は?」
叶の言っている意味がわからず呆然と見上げる少女。
真面目で、一途そうで、真剣に思ってくれそう。
まさに理想の彼女だと直感した。
胡散臭そうに見てくる彼女をまずはこちら側に引き込まなければと、その流れを脳内で計算しながら、慣れない笑みを浮かべた。
叶はすでに寝室のベッドで横になっていた。
今日は飲みの付き合いがあるから遅くなる、と優から数時間前に連絡がきていた。
故に、一切の警戒もしなくていい日だとそう認識していたのだ。
PM11:30
静かにドアが開けられた。
そっと優が叶の枕元に立つ。無防備な寝顔を眺めた。
……ムラムラしてきた。
一瞬どうするか迷ったが、あることを思い出して決断する。
布団をめくり、己の身体を滑り込ませた。
柔らかな胸元に耳を当て心音を楽しむ。ドクンドクンという音さえ叶が奏でていると思うと愛しい。
だいぶ温まってきた手をパジャマの隙間から滑り込ませた。
手のひらにちょうど収まるサイズ。揉むたびにふにゃりふにゃりと形を変える。
「ん、んん」
叶はまだはっきりと目が覚めてはいないようで、唸りながら手で払い除けようとする。優は気にせず服を捲り上げると現れた乳房の先、軽く固くなった場所をパクリと口に含んだ。
舌の中でコロコロと転がし、たまに軽く歯を立て、吸い上げる。その度に、未だ目を閉じたままの叶の身体がビクンビクンと反応する。
寝てても敏感とかエロ可愛い。
我慢できなくなってズボンと下着を一気に脱がせた。
興奮したせいでさっきまでよりお酒が回ってる気がする。理性がいつも以上に働かない。
全然慣らしてないけど、もう挿れたくて堪らない。
起こしてしまうかも……いや、それでいい。
優は叶の腰を持ち少し浮かせると、少しずつ己のモノを挿れていった。
「ん、んん……? ま、さる?」
「ん……ただいま叶」
お帰りのチュウをしようと顔を近づけたが、フイッと横を向かれてしまった。頬の上でリップ音が鳴る。
「酒くさっ……も、抜いて、お願いだから、今日は無理っ」
寝起き早々抵抗し始める叶に、優は少々ムッとして激しく出し入れを始めた。
「決めた。朝まで抱き潰す」
「はっあ? ダメって……午前ちゅ……面接が、あ!」
「だから、だよっ!」
優は叶の両足を肩に担ぐと上から叩きつけるように突いた。快楽に慣らされている身体は素直で、数回抜き刺しするとすぐに大量の愛液を分泌し始める。おかげで痛みを感じることは無いが、正直寝起きには辛い。
有言実行の男、優は宣言通り朝まで叶を抱き潰した。
――――――――――
AM11:00
叶はようやく意識を取り戻した。スマホを手にして愕然とする。
「またヤラレタ……最悪」
一晩中喘がされたおかげで声が掠れている。
何より、午前中なら……とようやく漕ぎ着けた面接の時間をとっくに過ぎてしまっている。
発信履歴を見るとかけた覚えがない通話履歴が残っていた。おそらくヤツが勝手に断ったのだろう。
いつもそうだ。叶としては脱バイトをして正職につきたいのに、ことごとく優に邪魔をされる。
優としては、バイトも本当は許可したくないらしい。
だが、叶ももう二十二だ。いつまでも優の収入に頼ってないでいい加減ちゃんと就職したい。それなのに、させてもらえない。
とりあえず、今日の面接はもう諦めるほかない。
「バイト……行ってみるかな」
人手不足気味な店だ。運が良ければシフト日以外でもいれてもらえるかもしれない。……自分の物くらいは自分で稼いだ金で買いたいし。少しでも稼がないと。
叶は軋む身体をなんとか動かしてシャワーを浴びると、ダボッとしたメンズ服に身を包み外に出た。
太陽の光が眩しい。胸元にかけてあったサングラスをつける。少しはマシになった。
マンションのエントランスを出て数メートル歩いたところで後ろから声をかけられた。
「あの!」
「……」
一瞬足を止めそうになったが、名前を呼ばれたわけでもないしな……とそのまま歩く。すると、グイッと後ろから腕を引かれた。
「なに?」
迷惑そうな声を隠そうともせず、三人組の女の子達に問い掛ける。
真ん中のリーダーぽい女の子が代表で叶に聞いた。
「も、もしかして……優と同居してるっていう幼馴染さんですよね?!」
もしかして、と言いつつ断定した言い方だ。
「……いや、違うけど」
「いやいや……優さんの幼馴染さんのことは、古参ファンの間では有名ですから!」
リーダーぽい女の子が興奮したように言うと、もう一人の女の子も同調するように頷いている。
「実の弟のように可愛がってるって、よくラジオとかテレビ番組でも話してるんですよ!」
確かに優は私を"男"というオブラートに包んで紹介することで堂々と色んなところで私について語っているらしい。
そして、こうやってプライベートまで探りを入れてくる追っかけに叶も目をつけられることはしばしばある。
ただ、"男"なのとそこそこな見た目をしているので嫌がらせを受けたことは無い。たまに、腐女子からは応援される。
とにかく、彼女達のようなのは初めてでもなく特段反応する内容でもなかった。
「そう」
叶の返しが予想とは違ったのだろう。途端に勢いが落ちる女の子達。叶はどうやってこの場を切り抜けようかと考えていた。
すると、一番後ろにいた女の子が二人に話しかけた。
他二人とは毛色が違うように見える。髪も染めていないし、ピアスもしていない、少々野暮ったさはあるが磨けば光るタイプの子だ。
「ねぇ、もう帰ろうよ。ここにいても時間の無駄だって。むしろ、こんなの優に迷惑かけるじゃん」
至極真っ当なことを言う女の子を叶は凝視した。まだ話し足りない様子の女友達を無理矢理押している。
女友達二人はブツブツいいながらもは先に歩き始めた。
「せっかく、ここまできて噂の幼馴染くんに会えたのにさー」
「ねー、もっと聞きたいことあるんだけど……あの噂とかー」
「あーね! 優本人にはさすがに聞けないし。でも、幼馴染くんの顔見れたのはほんと嬉しいー! 創作捗るわー! 優が今日仕事だったのは残念だったけどー」
「あ、やっぱ仕事入ってたの?」
「急に入った仕事っぽい、ほらSNSで……」
いつの間にか互いの会話に集中して、だいぶ離れたところまで行ってしまった。
「離して貰えますか? ……あの二人のことは謝りますから」
叶は無意識に女の子の腕を掴んでいた。言われて気づき、慌てて手を離して謝った。
「悪い……ちょっと聞きたいことがあって」
「なんですか? 答えるかどうかは話の内容にもよりますけど」
多少の警戒を滲ませた返答に叶はかえって好印象を抱いた。
彼女なら、そう思わせてくれた。
「あのさ……君、優が好き?」
「え?」
「憧れとか……そういうんじゃなくて、本気で……付き合いたいとか思うくらい好き?」
「……バカにしてるんですか」
剣呑な視線に叶は慌てて首を横に振る。
「そうじゃなくて、もし、そうなら……アイツに会わせてもいいかなって……。もちろん、今すぐにとかは無理だけど」
「は?」
叶の言っている意味がわからず呆然と見上げる少女。
真面目で、一途そうで、真剣に思ってくれそう。
まさに理想の彼女だと直感した。
胡散臭そうに見てくる彼女をまずはこちら側に引き込まなければと、その流れを脳内で計算しながら、慣れない笑みを浮かべた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
36
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる