泡沫

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気持ち

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コンビニから帰るとまた携帯が鳴った。

「もしもーし」

「あっ、愛結?今から焼肉いかない?」

電話口で玲奈が楽しそうにはしゃいでいる。

「いや、コンビニいって今から食べようかと…。」

「え?まだ食べてないでしょ?じゃあそれは冷蔵庫へ入れて、はい、支度しましょ!」


あたしの言葉を聞き入れず

はなしをどんどん進めていく。


「1時間後にあそこの焼き肉屋でね!」

そう言われて電話が切れた。


いつも玲奈は急だ。

だけど、そんな玲奈だからこそ
あたしは助けられてて…


あの時も…玲奈がいなかったら

立ち直れていなかった。

いつもあたしを救ってくれる友人。


買ってきたコンビニの物を冷蔵庫へと
押し込み、支度をはじめた。


いつもより薄く化粧をし

だて眼鏡をかける。

髪の毛はアイロンで伸ばして

服装は敢えて着替えやすい格好。

おしゃれとまではいかないが

一応身なりは整えたつもりだ。

クーラーを消し

家を出る。


少し早めだったため歩いて指定された
焼き肉やさんまでいくことにした。


ムシムシと夜なのに暑い。


夏の夜の匂いが鼻に入り込む。


やっぱりこの時期は嫌いだ。

そう思いながら歩いていると

「あーゆー!」

手を振って待ってる玲奈の姿がみえた。


少し歩くのを早くする。

玲奈の隣には亜季ちゃんがいて、

あれ?その隣にも…。


昨日会った潤くんがいた。


やっぱり、彼はとても綺麗で

無駄がなく、かっこよく見える。


「こんばんは。」

そう言って彼は笑った。

「こ…こんばんは。」

彼の笑顔に心臓がうるさくなる。

落ち着かせなきゃとおもい、深呼吸をする。

「じゃ、はいろー」

亜季ちゃんがそう言って

4人で店へと入った。

「ねぇ、なんで三人じゃなかったの?」

小声で玲奈に聞くと


「え?いやいや、亜季が誘ったんだよ笑。」

そう言って笑った。


亜季ちゃんが何かを企んでいる。


あたしはすぐに何かを悟った。

お店の中に入り席に通される。


何故かあたしと潤くんは隣どおしにされ

玲奈と亜季ちゃんは人目を気にせず

イチャイチャしている。

なにこの景色…。

「なに飲む?」

隣にいる潤くんに聞かれ


「あー…ウーロン茶」

あたしがそう答えると

「ふっ笑。今日はテキーラじゃないのね笑。」

と言って笑った。

「潤くんはなに飲むの?」

あたしがそう言うと少し驚いた顔をして

「…俺ビール一杯だけ飲む笑。」

そう言った。

なんで驚いた顔をしたのだろう。

そんなの考えていると

亜季ちゃんがオーダーして

あたし以外皆お酒を飲んでいた。

「休みの日は飲まないの?」

潤くんがあたしをみて聞いてくる。

「うん。休みは基本飲まないの」

「俺もだいたい飲まないようにしてる」

「そうなんだ。」

あれ?なんかおかしいな。

まともに顔が見れない。近すぎて。

綺麗な顔だからかな?

「そーいえば二人ともなんか似てるよね」

玲奈がお肉を頬張りそう言う。

「?」

「だってさーなんか外でないし、人と関わらないしさ。」

「玲奈ちゃん俺のことなんだと思ってんの?」

潤くんが笑いながらそう言った。

「えぇ?笑。妖精笑。」

そう言って玲奈が笑う。

「妖精?笑。」

ハハって綺麗な笑顔を見せる。

彼を見てると

なぜだかあの人を思い出す。

愛結…ごめん。

最後にあたしにそう言って

あたしの前から姿を消した。

似てるのかもしれない。

あの人と彼は違うのに…

重ねてしまう自分に嫌気がさす。

「なに考えてる?」

あたしの顔を覗き込む。

「え?いや…なにも。」

「なんか考えてた顔してたよ?」

「ちょっと昔のこと思い出して。」

「昔のこと?」

「うん…。」

あたしはうつむく。

「全然食ってないじゃん!」

そう言って彼はニコッと笑い
あたしにお肉を渡した。

「こんな、食べれない…」

そう言うと

「愛結ちゃんはもっと食わないと!」

そう言ってお肉をじゃんじゃか焼きだした。

なにも聞いてこない彼の隣は

何故だか心地がよかった。
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