神影鎧装レツオウガ【小編リマスター版】 #1

横島孝太郎

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#1 レツオウガ起動

Chapter03 魔狼 13-08

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 マントから、あるいは背部霊力装甲から。霊力光を爆発させ、レツオウガとオーディンが真っ向から激突する。
ィ――ッ!」
「はああァ――!」
 重なる咆哮。交錯する刃と刃。
 閃。
 互いに必殺を期した剣戟が、視界の全てを真っ白に染める。決意と殺意に彩られた、あまりに鮮烈な刹那の閃光。
 呼吸すら忘れさせるその純白は、しかしすぐさま消え去る。
 後に残るは神影鎧装のみであり、二機とも得物を振り抜いた体勢で、背中合わせに飛び退る。
 レツオウガは腹部、オーディンは肩部。損傷こそしたが、どちらも致命傷には程遠いかすり傷だ。
「こォ、の……?」
 すぐさま電柱を蹴って反転し、再度の強襲をしかけようとしたギノアは、そこで奇妙な光景を見た。
 レツオウガが離れていくのだ。こちらに背を向けたまま、一直線に。
 今まで以上に霊力を噴射して、向かっているのは上空。先程レックウが開けた、あの大穴の辺りだ。
 応援要請でもするのか、それともパイロットだけで逃げるのか。
「やァらせるかァァ!」
 どうあれ、見逃す理由などありはしない。煮えたぎるマグマのごとき怒りを原動力に、オーディンがレツオウガを追う。
 だが、レツオウガとて逃げていたわけではない。今しがた、風葉に指示された場所を目指していただけだ。
「着いたぞ。霧宮さん、頼む」
「オッケー!」
 レックウのハンドルを握り締め、風葉は意識を集中。瞬く間に術式が組み上がり、術式を投射。心の中に住む魔狼が、一際高く吠えた。
「……悪いな、急がせちまってよ。切り札を使うにも一手間あってな」
 ここでようやく、レツオウガはオーディンへ向き直った。
「っ!?」
 十メートル。ものの数秒で詰められる間合いで、オーディンの吶喊は止まった。
 怒りが削がれた訳では無い。今も変わらぬ激昂が、髑髏を内側から蝕んでいる。
 動きを止めたのは、ギノアと同調している神影鎧装オーディン、そのものである。
 断片的にとはいえ、神話の知識を有する分霊が、危険を感じ取ったのだ。
 だが、それは何だ。
 思考と同時にレーダーを走らせたギノアは、すぐさま下方に異様な霊力の昂ぶりを見つける。
「な」
 そして、凍りついた。
 眼下に映る、街全体。堂々とそこに落ちているレツオウガの巨大な影が、フェンリルの術式を満遍なく走らせていたのだ。
 天蓋の亀裂を即席の光源とし、レツオウガの影を拡大投射したのである。
 そしてフェンリルの術式は、影を基点として形成される。
「お願い! フェンリル――ファングッ!」
 イロハを知らぬため、術式とはどうにも言い難い風葉の叫び。
 それでも主の命に、魔狼は応えた。
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