154 / 162
#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 13-06
しおりを挟む
「五辻くん? どしたの?」
「――ん、ああ。ちょいと探偵ごっこをな」
思考を中断し、辰巳は改めて前を、オーディンを見る。
ギノアの怒りが、まっすぐにこちらを見ていた。
純粋にこちらを憎んでいるのか、それすら制御装置のもたらした感情なのか。
どうあれ、辰巳は瞑目する。
「……なんて、カラッポなんだ」
気付いてしまったのだ。
用途を強制された、敷かれたレールの上を歩く生き方。
自分の知らない何者か達に、ひたすら利用されるだけの生き方。
――それは五辻辰巳の在り方と、何が違うのか。
風葉が嫌いだと言った在り方と、一体何が違うというのか。
「同じ、だよな」
「何が?」
「ん、ああ、いやさ」
茶を濁しつつ、辰巳はもう一度バックミラーを表示。
霧宮風葉。数奇な紆余曲折を経て、同じ場所へ立つことになってしまった一般人。
彼女が居なければ、彼女の言葉が無ければ、辰巳はこの事実に気付けなかっただろう。
「……あんがとよ」
「えっ」
「や、何でもない」
ごまかしがてら、バックミラーを消去する辰巳。
しかし悲しいかな。風葉の耳は現在四つあり、うち二つは狼のそれだったりするため、しっかり聞こえていたりするのだ。
さりとて、それを追求している状況ではなくなった。
「おおおお――!」
溢れるギノアの激昂。それを余すこと無く体現し、いよいよ突貫を敢行するオーディン。
爆発的な量の霊力をたなびかせるその姿は、もはや一個の爆発だ。
「ち、ぃっ!」
すぐさまサイドステップで回避する辰巳。だがオーディンは電柱を足場として跳ね返り、返す刀でレツオウガを強襲。
「は、あ、あァッ!」
僅かに反応が遅れ、肩部霊力装甲が削られる。たったそれだけで、凄まじい衝撃がレツオウガのコクピットを揺らした。
「きゃああ!?」
「くっ!? 威力が上がってるのか!?」
うろたえるパイロット達。その合間にも、オーディンは建物を、電線を、街路樹を。ありとあらゆる物体を足場として、縦横無尽に跳ね続ける。
その軌道上へ、常にレツオウガを照準しながら。
「――ん、ああ。ちょいと探偵ごっこをな」
思考を中断し、辰巳は改めて前を、オーディンを見る。
ギノアの怒りが、まっすぐにこちらを見ていた。
純粋にこちらを憎んでいるのか、それすら制御装置のもたらした感情なのか。
どうあれ、辰巳は瞑目する。
「……なんて、カラッポなんだ」
気付いてしまったのだ。
用途を強制された、敷かれたレールの上を歩く生き方。
自分の知らない何者か達に、ひたすら利用されるだけの生き方。
――それは五辻辰巳の在り方と、何が違うのか。
風葉が嫌いだと言った在り方と、一体何が違うというのか。
「同じ、だよな」
「何が?」
「ん、ああ、いやさ」
茶を濁しつつ、辰巳はもう一度バックミラーを表示。
霧宮風葉。数奇な紆余曲折を経て、同じ場所へ立つことになってしまった一般人。
彼女が居なければ、彼女の言葉が無ければ、辰巳はこの事実に気付けなかっただろう。
「……あんがとよ」
「えっ」
「や、何でもない」
ごまかしがてら、バックミラーを消去する辰巳。
しかし悲しいかな。風葉の耳は現在四つあり、うち二つは狼のそれだったりするため、しっかり聞こえていたりするのだ。
さりとて、それを追求している状況ではなくなった。
「おおおお――!」
溢れるギノアの激昂。それを余すこと無く体現し、いよいよ突貫を敢行するオーディン。
爆発的な量の霊力をたなびかせるその姿は、もはや一個の爆発だ。
「ち、ぃっ!」
すぐさまサイドステップで回避する辰巳。だがオーディンは電柱を足場として跳ね返り、返す刀でレツオウガを強襲。
「は、あ、あァッ!」
僅かに反応が遅れ、肩部霊力装甲が削られる。たったそれだけで、凄まじい衝撃がレツオウガのコクピットを揺らした。
「きゃああ!?」
「くっ!? 威力が上がってるのか!?」
うろたえるパイロット達。その合間にも、オーディンは建物を、電線を、街路樹を。ありとあらゆる物体を足場として、縦横無尽に跳ね続ける。
その軌道上へ、常にレツオウガを照準しながら。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
人事部キャリアデザイン課 係長補佐EMA
ブックリーマン
SF
労働力不足解消に向けてヒューマノイド実用化に向けた実証実験が行われる。ネクスト社新入社員育成係に試験的投入された。しかし、その実験は前途多難。ヒューマノイドと新入社員、それを取り巻く人達が繰り広げる物語。

俺の娘、チョロインじゃん!
ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ?
乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……?
男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?
アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね?
ざまぁされること必至じゃね?
でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん!
「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」
余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた!
え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ!
【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?

公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。
なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。
普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。
それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。
そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
機械仕掛けの執事と異形の都市
夜薙 実寿
SF
これは、心を持ったアンドロイドの執事と、半異形の少女が織り成す、少し切ない近未来のお話。
五年前、突如として世界に、感染者を自我の無い異形の怪物へと造り替えてしまう脅威のウイルスが発生した。
効果的なワクチンも無く、感染を防ぐ手立てすら無い……。
絶望の淵に立たされた人類は、地上を捨て、地下のシェルター街へと移住した。
舞台は、見捨てられた地上。
異形が徘徊する都市(まち)の外れに、ぽつりと一軒、大きな洋館が建っていた。
今や人気も無く寂れたその屋敷に、ひっそりと、置き去りにされたアンドロイドが一体。
――人知れず、動き続けていた。
------
表紙は自作。
他サイトでも掲載しています。
初めて完結させた思い入れの深い作品なので、沢山の方に読んで頂けたら嬉しいです。
銀河戦国記ノヴァルナ 第1章:天駆ける風雲児
潮崎 晶
SF
数多の星大名が覇権を目指し、群雄割拠する混迷のシグシーマ銀河系。
その中で、宙域国家オ・ワーリに生まれたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、何を思い、何を掴み取る事が出来るのか。
日本の戦国時代をベースにした、架空の銀河が舞台の、宇宙艦隊やら、人型機動兵器やらの宇宙戦記SF、いわゆるスペースオペラです。
主人公は織田信長をモデルにし、その生涯を独自設定でアレンジして、オリジナルストーリーを加えてみました。
史実では男性だったキャラが女性になってたり、世代も改変してたり、そのうえ理系知識が苦手な筆者の書いた適当な作品ですので、歴史的・科学的に真面目なご指摘は勘弁いただいて(笑)、軽い気持ちで読んでやって下さい。
大事なのは勢いとノリ!あと読者さんの脳内補完!(笑)
※本作品は他サイト様にても公開させて頂いております。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【本格ハードSF】人類は孤独ではなかった――タイタン探査が明らかにした新たな知性との邂逅
シャーロット
SF
土星の謎めいた衛星タイタン。その氷と液体メタンに覆われた湖の底で、独自の知性体「エリディアン」が進化を遂げていた。透き通った体を持つ彼らは、精緻な振動を通じてコミュニケーションを取り、環境を形作ることで「共鳴」という文化を育んできた。しかし、その平穏な世界に、人類の探査機が到着したことで大きな転機が訪れる。
探査機が発するリズミカルな振動はエリディアンたちの関心を引き、慎重なやり取りが始まる。これが、異なる文明同士の架け橋となる最初の一歩だった。「エンデュランスII号」の探査チームはエリディアンの振動信号を解読し、応答を送り返すことで対話を試みる。エリディアンたちは興味を抱きつつも警戒を続けながら、人類との画期的な知識交換を進める。
その後、人類は振動を光のパターンに変換できる「光の道具」をエリディアンに提供する。この装置は、彼らのコミュニケーション方法を再定義し、文化の可能性を飛躍的に拡大させるものだった。エリディアンたちはこの道具を受け入れ、新たな形でネットワークを調和させながら、光と振動の新しい次元を発見していく。
エリディアンがこうした革新を適応し、統合していく中で、人類はその変化を見守り、知識の共有がもたらす可能性の大きさに驚嘆する。同時に、彼らが自然現象を調和させる能力、たとえばタイタン地震を振動によって抑える力は、人類の理解を超えた生物学的・文化的な深みを示している。
この「ファーストコンタクト」の物語は、共存や進化、そして異なる知性体がもたらす無限の可能性を探るものだ。光と振動の共鳴が、2つの文明が未知へ挑む新たな時代の幕開けを象徴し、互いの好奇心と尊敬、希望に満ちた未来を切り開いていく。
--
プロモーション用の動画を作成しました。
オリジナルの画像をオリジナルの音楽で紹介しています。
https://www.youtube.com/watch?v=G_FW_nUXZiQ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる