神影鎧装レツオウガ【小編リマスター版】 #1

横島孝太郎

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#1 レツオウガ起動

Chapter03 魔狼 13-02

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「な――」
 驚愕しつつも、すぐさま間合いを離そうとするギノア。しかしオーディンのバックステップより、レツオウガの踏み込みがコンマ数秒先んじる。
 そしてレツオウガには、まだ右手の刃がある。
、ッ!」
 閃くは逆袈裟の一撃。
 膂力を余すこと無く乗せた斬撃が、オーディンの正中線上を走った。
 そのまま背を向け、残心するレツオウガ。
 バックステップと同時にマントをはためかせ、大きく飛び退るオーディン。
 翻るレツオウガの刃がきしりと鳴き、霊力光を纏うオーディンが柔らかに着地。
「――」
 沈黙。レツオウガは二刀を提げたまま、オーディンは膝をついたまま、それぞれ動かない。
 息苦しくなる数秒。その沈黙を、ギノアが先に破った。
「――フ、フ」
 ゆらりと、地面を踏み締めて立ち上がるオーディン。
「少々驚かされましたが、大したものではなかったようですねぇ?」
 調子を確かめるようにグングニルを振り回した後、改めて構えを取るオーディン。腰だめに刃を携えるその姿に、風葉かざはは目を丸める。
「よ、避けられたの!?」
「まさか」
 レツオウガを振り向かせながら、辰巳はため息のようにつぶやく。
「ちょいと鋭すぎたのさ」
 そう、辰巳が言った直後。斬り裂かれた事をようやく自覚したオーディンの正面装甲が、間欠泉のような霊力を吹き出した。
「あ、?」
 グングニルを構えたまま、オーディンは己の胸を見下ろす。
 酷い傷だ。左足付け根辺りから右肩口へ、一直線に亀裂が走っている。
 そしてその亀裂は、コクピットにも届いている――!
「あ、あ、あ」
 すぐさまオーディンとの同調をカットし、ギノアは椅子から立ち上がる。
 身体、そのものに傷はない。だが足元にある術式陣は、そこから構成されたコクピットは、大きく斬り裂かれていた。大きく割れたクレバスの向こうを見やれば、Rフィールドの赤色と憎きレツオウガの姿が見えた。
 だが、それも大した問題ではない。いくら複雑なものとはいえ、結局は術式なのだ。霊力さえあれば修復のしようはある。
「あ、あ……!」
 だからギノアを嘆かせたのは、ただ一点。
 サトウから預けられ、神影鎧装オーディン・シャドーを構成する事が出来た原動力――霊力増幅器に、亀裂が走っていた事だ。
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