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#1 レツオウガ起動
Chapter03 魔狼 06-05
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『どんな連中が後ろについてるかは分からない。けど、ソイツはかなりの切れ者のようだね。辰巳との戦闘記録から、それが分かるよ』
「ファントム4、と呼んでやらんと怒るぞ?」
にやりと笑う冥に、巌もつられて口元を緩める。
『あー。まぁ良いじゃないか、本人いないし』
言いつつ、巌はファントム4こと辰巳とギノアが交戦したデータを改めて検分する。
『しかしまぁ、人造のRフィールドか。どこの誰かは知らないけど、とんでもない物を造ってくれたもんだね』
「だな。しかしそうなると、その人造Rフィールドを壊しちまうかもしれんフェンリルは、連中からすりゃかえって危険要素なワケだ!」
脅威を目の前に、しかし利英は歯を剥き出しにして笑う。
『ああ。だから敵はフェンリルを、僕達凪守に排除させようとしたんだ。霧宮くんの友人を人質にとって、あたかもそれが重要であるかのように見せかけてね。更に、別の策も平行していた』
巌がマウスをクリックすると、立体映像モニタの一つに新たな画像が表示された。
同日にオウガと戦った一つ目の巨人、キクロプスである。
『それが、このキクロプスだ。これで莫大な霊力を持ち去る――ようなフリをして、ギノアはある仕掛けを日乃栄霊地の近くに施した』
キクロプスの写真がやや縮小され、隣に霊地の霊力量を示すグラフが表示される。
パラメータは、ゼロ。現在、まったくのカラになっている日乃栄霊地の現状データだ。
『恐らくその仕掛けによって、日乃栄霊地はたった数分で素寒貧になってしまった。多分オウガとの戦闘中、キクロプスがばらまいた牙バルカンに、何か仕掛けてあったんだろうな』
「……あ!」
と、そこで呆気に取られたのは風葉だ。
「どうしたんだい?」
「あ、はい、あのその。……ロボットに乗ってた時、何か、変な音を聞いたんですよ。こっちの耳で」
言いつつ、風葉は未だカムフラージュ中である頭上の犬耳を指差す。
憑依レベルが低いとはいえ、風葉の犬耳は飾りではない。危険な術式の気配を本能レベルで察知し、駆動音を聴覚で捉えていたのである。
――後の調査で判明する事だが、キクロプスはオウガとの戦闘中、ばら撒いた牙の中に解析術式を刻んだ物を混ぜていたのだ。風葉がオウガに乗っていた時、気を取られた斜め下の一軒家に着弾したのが、その一つである。
総数は四。オウガへの掃射に紛れて発射されたそれは、幻燈結界の効力を用いて民家の内部へ透過。ターゲットとなる家は事前に調査されていたようで、近隣住民まで含めて霊的感覚は皆無。故に幻燈結界が途切れた後も、誰にも見えはしなかった。
かくて近隣住人の霊力を吸収しながら、霊脈の動きを密かに記録しつつ、四つの不発弾は待っていたのだ。
つい今しがた、×印となって伸長した蜘蛛の巣の先端を。
術者による、回収を。
「ファントム4、と呼んでやらんと怒るぞ?」
にやりと笑う冥に、巌もつられて口元を緩める。
『あー。まぁ良いじゃないか、本人いないし』
言いつつ、巌はファントム4こと辰巳とギノアが交戦したデータを改めて検分する。
『しかしまぁ、人造のRフィールドか。どこの誰かは知らないけど、とんでもない物を造ってくれたもんだね』
「だな。しかしそうなると、その人造Rフィールドを壊しちまうかもしれんフェンリルは、連中からすりゃかえって危険要素なワケだ!」
脅威を目の前に、しかし利英は歯を剥き出しにして笑う。
『ああ。だから敵はフェンリルを、僕達凪守に排除させようとしたんだ。霧宮くんの友人を人質にとって、あたかもそれが重要であるかのように見せかけてね。更に、別の策も平行していた』
巌がマウスをクリックすると、立体映像モニタの一つに新たな画像が表示された。
同日にオウガと戦った一つ目の巨人、キクロプスである。
『それが、このキクロプスだ。これで莫大な霊力を持ち去る――ようなフリをして、ギノアはある仕掛けを日乃栄霊地の近くに施した』
キクロプスの写真がやや縮小され、隣に霊地の霊力量を示すグラフが表示される。
パラメータは、ゼロ。現在、まったくのカラになっている日乃栄霊地の現状データだ。
『恐らくその仕掛けによって、日乃栄霊地はたった数分で素寒貧になってしまった。多分オウガとの戦闘中、キクロプスがばらまいた牙バルカンに、何か仕掛けてあったんだろうな』
「……あ!」
と、そこで呆気に取られたのは風葉だ。
「どうしたんだい?」
「あ、はい、あのその。……ロボットに乗ってた時、何か、変な音を聞いたんですよ。こっちの耳で」
言いつつ、風葉は未だカムフラージュ中である頭上の犬耳を指差す。
憑依レベルが低いとはいえ、風葉の犬耳は飾りではない。危険な術式の気配を本能レベルで察知し、駆動音を聴覚で捉えていたのである。
――後の調査で判明する事だが、キクロプスはオウガとの戦闘中、ばら撒いた牙の中に解析術式を刻んだ物を混ぜていたのだ。風葉がオウガに乗っていた時、気を取られた斜め下の一軒家に着弾したのが、その一つである。
総数は四。オウガへの掃射に紛れて発射されたそれは、幻燈結界の効力を用いて民家の内部へ透過。ターゲットとなる家は事前に調査されていたようで、近隣住民まで含めて霊的感覚は皆無。故に幻燈結界が途切れた後も、誰にも見えはしなかった。
かくて近隣住人の霊力を吸収しながら、霊脈の動きを密かに記録しつつ、四つの不発弾は待っていたのだ。
つい今しがた、×印となって伸長した蜘蛛の巣の先端を。
術者による、回収を。
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